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一週遅れの映画評:『ツーアウトフルベース』知ってるもんは、いらんのよ。

 なるべく毎週火曜日に映画を観て、一週間寝かしてツイキャスで喋る。
 その内容をテキスト化する再利用式note、「一週遅れの映画評」。

 今回は『ツーアウトフルベース』です。

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 なんて言ったらいいのかな~~……アレだ、よくTwitterとかで流れてくるじゃん、1ページだけの二次創作漫画が。ウマ娘でもFGOでも、プリキュアとかあとゴールデンカムイとか、まぁそれなりに人気のある原作に対して1ページ数コマか多くて4ページくらいの「なんかそういう場面、見たくない?私は見たい!」みたいなヤツが。
 それ自体はそれなりに好きなんですよ、そういう”外側”に伸びる想像力だったり、あとはあらゆる創作は基本的に素晴らしいのでそうやって作品を作ることはとても良いことだし。
 
 でね、そういったやつってめちゃくちゃ短いじゃない。さっき言ったように数ページだけしかない、なんでそんなものが「読める」のか、一読して意味をとれるのか?それってこれが「二次創作」だからなんですよ。つまりそうやって提示された作品の背景には元となるものがある。例えばウマ娘だとまず現実の競馬におけるハルウララって馬とキングヘイローって馬がいてそこにまず物語があり、そこから『ウマ娘』というゲームで与えられたハルウララとキングヘイローというキャクター像があり、その中で「ハルウララとキングヘイローは寮で同室」という設定がされている。そういった前提条件を把握していることで、描いているものが十全に理解できるようになるわけですよね。
 そこから逆転現象みたいなのもあって、共通するフォーマット……そうねぇあのあれ、めちゃくちゃ流行った「セックスしないと出れない部屋」。ああいうのにブチ込まれる二人の関係ってある程度決まってるわけじゃない、そうなると今度は全然知らない作品の二次創作でも「あぁ、このシチュエーションに投げ込まれる関係性で、このセリフを言うってことはそういう性格なのね」みたいのが類型的に把握できる。そこで全然知らない作品の二次創作でも楽しめたりできるようになる。だからああいうシチュエーション定型が流行ったりするわけですよ。元ネタ全然知らんけどおおよそこういう感じだろう、だったら自分の好きなキャラならこう当てはまるな。といった感じでコピーされていく
 
 なんでこんな話をしてるかって言うと、そういう映画なんか最近多くない?ということで。実はMARVELの映画なんかもそうなんですよ、これがヒーローものだってことさえ知っていればいきなり続編を見ても(例えば今年なら『スパイダーマンNWH』とか)なんとなく理解できる「あぁなるほどそういうピンチの場面で、そう行動するヒーローなんだね」って、それでもそこで省略されてる過去とか背景を知ってるほうが当然より楽しめる。
 続編モノとかMARVELみたいなユニバースものがそうなるのは当たり前ではあるんですけど、そうじゃない単体もの……っていうとAVみたいだけど、いやそれも繋がっていてね、えーと、えーと、まず映画の方から言うと要は描きたいシーンとか主張したいテーマみたいのがあるわけじゃないですか、作品には。ただ映画一本でそこに辿り着くにはちょっと難しい、時間的な尺であったりとか予算とか役者の問題とか、いろいろ原因はあるけどもそうなったときにこの手法って便利なんですよ
 よくあるこういった場面ですよー、ここのキャラクターを投げ込みまーす。するとこんなことを言って、こう動きますね。はい、これでこの登場人物の背景や設定がだいたい掴めますね?じゃあOK!みたいな感じで必要な説明に取られる時間が省略できるんですよ。
 これがAVだと単体女優の作品を見て、まぁエロいわけですよね、それで最低限の役割は果たしている。ただそこでデビューから時系列で見ていくと最初は清純派で淫語もの数作やったけどハマってなくて、そこからハード路線にいって最新作ではボウルいっぱいのザーメン飲んどる……みたいな変遷が見えたりとか、企画ものでも例えばちょっと古いけど私が好きなビーバップ・みのる監督の「ナンパ☆第三世代」シリーズとか巻数が進むにつれて監督の人間性とか撮りたいエロみたいのが形成されていってめちゃくちゃ面白いんですけど、これもさっき言ったことと同じ系の話ではあるわけです。
 
 で、で、それの使い方が上手い作品というのはいっぱいある、というか面白い作品ってそれをちゃんと使っているんですよ。”ちゃんと”というのがどういうのかって言うと、そうやってキャラクターの紹介をショートカットしつつそこからその作品固有のものへと自然に導いてくれる。
 
 じゃあどういうのがダメかっていうと「やりたいシーンがそれ」な作品です。つまり「二人が一線を越えるときに立ち上がる迷いや葛藤、あるいは照れ、そして漏れ出す本音」が一番見せたいとことなのに、それを「セックスしないと出れない部屋」でやろうとしてるような作品、ということなんです。違うじゃん!そこが見せたいなら二人の関係を、そこにあった「これまでのこと」をじっくりと煮詰めていくから「面白いシーン」になるんじゃん!なのにそこを省略しても、何というかこちらが想定しているもの以上の事が何もないわけよ
 新しい作品を見に行くっていうのはね、自分の想像の外側が、思いもよらないものが欲しいんですよ、私は。なのに「知ってる、そういうのは知ってる、やりたいことはわかる、で?それだけ?」みたいのを見せられると「あー損したわぁ」って気分になる。
 
 今回見た『ツーアウトフルベース』は、まぁそんな映画。タイトルからして「野球で2アウトフルベースの場面のヤバさはわかるじゃん?」みたいな空気があるけど、そんな感じ。
 だってねぇ最後の最後に主人公二人が超カッコつけて言うセリフが「いまがどん底なら、あとは這い上がるだけ」「夜明け前が一番暗くて寒い」なんだぜ?そんな言葉100万回聞いたわ!いらんのよ、そういう「知ってる」ものは、もういらんのよ

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 次回は『東西ジャニーズJr. ぼくらのサバイバルウォーズ』評を予定しております。

 この話をしたツイキャスはこちらの18分ぐらいからです。


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