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一週遅れの映画評:『スーパー戦闘 純烈ジャー』これを私は最低の「悪」と呼ぶ。

 なるべく毎週火曜日に映画を観て、一週間寝かしてツイキャスで喋る。
 その内容をテキスト化する再利用式note、「一週遅れの映画評」。

 今回は『スーパー戦闘 純烈ジャー』です。

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 あのですね、私は怒ってます。比較的ほとんどの駄作でも楽しめる方だとは思ってるんですよ、自分のことを。それは過去にした話とか文字起こししたヤツとかを読んでもらえればわかってもらえると思うんだけど……「つまんない」とか「良くない」とかは言う、確かにそういう評価をすることはある。それでもまぁ心のどっかしらには「こうやって話すことができる」って価値はあると思って、喋ってるんですよ。
 
 その上で、その上でね。この『純烈ジャー』は本当に「作られるべきではなかった」作品です、そう言い切る。マジで最低最悪。
 それはこの作品が「人と人を無意味に対立させる」からです、そういうものを私は「悪」と呼びます。『純烈ジャー』は悪です、それも救いようがないタイプの。
 
 こういう戦隊パロディ作って、まぁ2つの方向性しか無いと思うんですよ。メタネタ全開でギャグに走るか、本気でカッコいいものを作るか。そういった点からまず『純烈ジャー』はひどく中途半端、というよりもそういった意図なく適当に映像を並べて時間を埋めてるだけにしか見えない。
 
 まずカットの繋ぎがめちゃくちゃ。一番ひどかったのはかなりの序盤に主人公たちと敵組織が乱戦になるんですけど、仲間の一人が羽交い絞めにされてボコられるんですね、で次のカットでそのボコられてたヤツが何故か「物陰から戦闘の様子を伺っている」んですよ。何かその拘束を解いたとかそういうシーン無しで!もうその時点で映像と映像の連続性が死んでる
 他のシーンでも「武器を手に突撃→次のカットで素手」とかざらで、これコンテ段階から破綻してるでしょ……みたいな感じなんです。
 
 その上お話もひっどい。主人公の一人が「純烈ジャー」に変身できるようになるため「オフロディーテ」という妖精と契りを結ばないといけない、って設定なんですの。まぁそれはわかる。で、最初若い女をそのオフロディーテだと思い、そいつを口説く。だけどそれは敵の策略で、本当のオフロディーテはその主人公が「正直ババア」って呼んですっげー冷たく当たっているおばちゃんだってことになるわけ。
 いやね、その正直ババアが元教師で、主人公はその教え子だった。そのとき主人公は正直ババアに酷い行為をしてしまって、その反省を素直に表せられなくて冷たい態度、っていうか「うっせぇんだよ!正直ババア!」って40近いおっさんが言ってるから普通に悪意が強いだけにしか見えないんだけど。
 そこから自分の行いを反省して、その正直ババアと契りを結ぶ……とかやられてもハッキリ言ってそれに至るまでの剥き出しの悪意が強すぎて、弱いエピソードだけで「反省しましたー、まえから気になってたんですー、契りましょうー」は無理だって。無理。まったく成立してない。
 それがストーリーの一番大きい柱になってんだもん、マジで救いようが無い。
 
 他にも本当にしょうもない下ネタギャグがさ……主人公のひとりがケツ出すだけとか、やたら「ソープランドに行ってた」みたいなイジりしたり、「垢スリスペシャルや!」からの音声だけ「うおぉーあは~ん」って流れてそこから「妙に顔がつやつやしてる」みてぇーなくだらないお約束つっこんできたり、敵の一人が乳首を触られると身悶えするからその乳首を指で突いて倒すとか。
 古くさいし安っぽいしつまんないしで、ただただ不快なことが繰り広げられるんですよ。
 
 あのね、私はいわゆる特撮ファンです。だから正直「純烈」っていうグループのことはほとんど知らんですよ。だからこう思ってしまうんです。
「あ、純烈ってグループのファンは”この程度”のものが面白いって感じる人たちなんだな」
 って。だって監督は佛田洋で4人中3人が特撮に出演経験があって、それでこの内容ってことはきっと私たち特撮ファン向けじゃなくて純烈ファン(なんか純子、烈男とか言うらしいですね。そういう身内ノリがお好きなんですか、そうですか)向けなんでしょ?あーあーひどいもん見せられた。そういう感想になるんです。
 
 一旦は。
 
 ただね。このコンテンツがあふれる時代に、ちゃんと人気があって活動してる人たちが、たぶんですけどそんな「つまらない」わけないんですよ。恐らく純烈ファンの方々は「純烈」の良いところ面白いところを一杯知ってる、冷静に考えればそのはずなんです。
 だからきっとこの映画を見た純烈ファンの人はきっとこう思うんです。
「あ、特撮なんてやっぱ”この程度”のもので、こんなのを喜ぶ人がいるんだねぇ」
 って。だって純烈の4人が一生懸命やって、それでこの内容ってことはきっと私たち純烈ファン向けじゃなくて特撮ファン(なんか大きいお友達って言うらしいじゃない。気持ち悪いなぁ)向けなんでしょ?あーあーひどいものを見せられた。そういう感想になるんです。
 
 つまりお互いにお互いを「アイツらはダメだ。そのせいで自分の好きなものが穢された」って気持ちになるんです。
 これがね最初に言った「人と人を無意味に対立させる」ってことなんですよ。お互いの溝を深める効果しかない、だから私はこの作品を「悪」と呼ぶんです。
 
 いま同じ時期にやってるから比べられても仕方ないと思うんですけど、『ザ・ハイスクールヒーローズ』っていうジャニーズの「美 少年」って人たちが戦隊モノをやってるんです。これがねちゃんと特撮として面白くて、その上でそれぞれの役者がちゃんと魅力的に扱われている。
 私はジャニーズとか全然わからないけど「ふーん、いいじゃん。この子たちにファンがいるのはわかるわ」って思えるのね。それに加えて「ハイスクールヒーローズの特撮は面白いけど、でもニチアサの戦隊が本当に面白いときはこれ以上だぜ!」と思うわけ。
 それってたぶん美 少年ファンたちも「これはこれでカッコいいけど、ライブとかではもっとカッコよくてカワイイんだよ!」って思ってるってことだと感じるんですよ。
 
 それってお互いの断絶を乗り越える「きっとこの役者にも奥深い一面があるのだろう」「きっと他の特撮にも素晴らしい物語があるのだろう」っていう相互理解を、異文化交流を起こせると思うんです。
 
 私は『純烈ジャー』にそれを期待していた。でも出てきたのは真逆の「悪」だった。
 
 本当に、本当に最低の作品でした。

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 次回は『レミニセンス』評を予定しております。

 この話をしたツイキャスはこちらの18分ぐらいからです。


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