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一週遅れの映画評:『”それ”がいる森』いや、完璧って言っていいんじゃない?

 なるべく毎週火曜日に映画を観て、一週間寝かしてツイキャスで喋る。
 その内容をテキスト化する再利用式note、「一週遅れの映画評」。

 今回は『”それ”がいる森』です。

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 これはねぇ、宣伝が悪いですよ。絶対
あのね超面白かったの、私は。マジでめちゃくちゃ笑ったし、いまでも思い出し笑いできるくらいなんだけど……同じ劇場にね、カップルがいたんですけどそのひとりが、映画が終わってぱっと明るくなったところで「思ってたのと違ったね……」ってぽつりと言ってて。もうそれが全てって感じはある。

 だって「”それ”の正体は一体!?」みたいなフリだと、大体は次々と消息不明になる登場人物たち! ついに見つかる無惨な死体! そしてついに明かされる怪異の正体(ここが中盤の山)! みたいなストーリーを想像するじゃない。そしてこっちが驚くような捻りの効いた恐怖を期待するじゃないですか。普通は。
 いや~~~~~~全然違ったねぇw
 
 ということでここからいつも通りネタバレに躊躇なしでいきますよ? いいですか?
 
 あのね、小学生二人が立ち入り禁止の森で見つけたのが、でっかい銀色の乗り物なんですけど、それが映画開始から15分ぐらいなのねwもう「宇宙人かい!」って”それ”の正体が判明するわけですよ。で、その直後に背後から高速で追いかけてきた緑色の猿みたいのに、小学生のひとりがガッチリとフェイスロック極められて連れ去られるっていう。なんだろうプロレス星人かな?
 もうこの時点で「あ、これ怪奇生物スリラーだと思ってたけど違うわ。B級モンスターホラーじゃん!」ってわかるわけですよ。
 
 ええと、B級モンスターホラー映画って愛好家もたくさんいるし、それ自体は立派な映画のイチジャンルではあるんですよ。最近では『シャドウ・イン・クラウド』とか『サイコ・ゴアマン』ていう名作もあったりして、私も好きなジャンルではあるんです。です、ですよ、ですけど、ですけど! いきなり不意打ちでぶつけていいジャンルじゃあねーでしょww
 だって主演が元嵐の相葉雅紀ですよ!? いや確かにジャニーズ所属タレントは時々「何があった?」っていうくらいポンコツ映画に出たりするし、まぁ嵐の中では相葉くんがこういう作品に出るのは一番違和感ないんだけどさ。それでもこの宣伝、この配役でB級モンスターホラーが出てくるとは思わなくない???
私はジャンルがわかった時点で受け身が取れたから完全に楽しめましたけど、これを見て「思ってたんと違う!」ってなるのは無理ないことですよ

 で、その宇宙人の造形が銀色でつるっとした感じのグレイ型そのまんまで、久々にこんなオールドスクールなエイリアン見たな~ってちょっとノスタルジーを覚えてしまう感じなんですよね。まぁ「じゃあさっきの緑色した猿はなんだったん?」て感じですけど、特に説明はないです
それでその宇宙人が大人は殺すけどなぜか子供はさらっていくんですね。そのときの殺害方法が心臓を一撃で貫くなのですが、ほら宇宙船に乗ってくるぐらいだから地球よりも高い科学レベルを持っているわけですよ、一体どんなトンデモ兵器が繰り出されるかと思っていたら。
ズビシュッ!って感じで指の一本を伸ばして突き刺すんですよ! めちゃくちゃフィジカルじゃん、シンプル暴力繰り出してくるじゃん。むしろ最初のフェイスロックの方がまだ”技”でしたね。

 それでなんやかんやあって、この宇宙人が成長するために人間の子供にしかない成分が必要で、そのためにを捕食してるってことがわかるのね。あるある、そういう無理やり子供をターゲットにする理由をひねり出すホラー映画w
それで宇宙人の姿をすでに目撃していた主人公が「そうか、それで大きいのと小さいのがいたんだ!」って言うわけですよ。その後、主人公の目の前で子供が喰われるんだけど。っていうかその喰い方もいきなり顔面がバシャアって大きく開いて、なんか食虫植物みたいな形になり丸飲みなんだけど、ここがちょっと女性器っぽいデザインなのも「やってんなぁ」っていうB級モンスターホラー系でよくある感じで実に良いんですよね。
 でね、その子供を喰った宇宙人がブルブルブルブルって震えたかと思うと、いきなり左右に真っ二つに裂けて。もう『すごいよ!マサルさん』でめそを引っ張ったときの「避けたー!?(ガビーン)」しか脳内に出てこない感じなんですがw

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それで二つに分かれた宇宙人が「にゅるんっ」って感じで半身づつ再生して、つまり二人に分裂して増えるんですよね。
ほうほうほう、そうやって増殖してい……おん? なんかさっき「大きいのと小さいのがいたんだ!」とか言ってなかったか? 増えた奴らは同じサイズなんだが? まぁね、宇宙人の謎の生態だから間違いもありますわな。OK、OK、受け入れましょう。

 そのあと宇宙人が小学校に襲撃してくるわけですよね、子供たくさんおるからな、宇宙人氏にとっては釣り堀みたいなもんだもんね。警備をしていた警官をサクっと惨殺して、ていうかその前に山狩りをしていた県警の刑事含む10数人を殺してるんですけど。まぁそれで迫る宇宙人から逃げて、生徒と教師は倉庫に隠れるのですよ。
 だが近づいてくる宇宙人、奴は人体を易々と貫通する指を金属製のドアに伸ばして!
 \コンコン/
 普通にノックしたね、いま。あら意外と紳士なんですわ~。そして私は笑いをかみ殺すのに必至よ。
 
 さらになんやかんやあって宇宙人を撃退し、それから1か月後……そこでは小学校の校庭でサッカーの試合に興じる子供たちの姿が! いや日常取り戻すの早ない!? ダース単位で人が殺されて、一部の人間以外は犯人すらわかってないのに!?
 
 という感じで基本的にずっと笑って見れる作品なんですが、これ自分としては「けっこう良い映画だったな」って枠に入ってるんですよ。というのも、真面目にホラーを作ろうとしてコレだったら酷評やむなしだとは思うんですが、どう考えても「ズッコケB級モンスターホラー」を作ろう、というかそういった作品群から影響を受けて「本気でB級モンスターホラー作品を作りたい」という意志が確かに感じられたんです。そして実際にその通りのものが出来上がっている。だからプロジェクトとしては、めちゃくちゃ上手くやり遂げた作品なんです。役者の全体的な演技の軽さも、これ完全に狙ってるでしょ。完璧と言っても問題ないと思う。
 だからあとは視聴者にジャンル適性があるかどうかだけで、そして私にはそれがあった。だから面白かったし、良い作品だと言えるんです。
 
 ただやっぱあの宣伝はミスマッチを生むだけの、お互いに不幸になる原因だから。そこだけは何とかすべきだったよね、絶対。

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 次回は『七人の秘書 THE MOVIE』評を予定しております。

 この話をしたツイキャスはこちらの15分ぐらいからです。


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