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一週遅れの映画評:『ソニック・ザ・ムービー』速いだけじゃ逃げられないモノ

 なるべく毎週火曜日に映画を観て、一週間寝かしてツイキャスで喋る。
 その内容をテキスト化する再利用式note、「一週遅れの映画評」。

 今回は『ソニック・ザ・ムービー』です。

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 やっぱりね、痛感しましたよ。「作品に対して、見る前から批評するもんじゃあない」ってことを。
 
 今回の映画『ソニック』て、まぁみんな覚えてると思うんだけど、最初に主人公であるソニックのビジュアルが発表されたときにまぁ~~~大不評だったじゃない。可愛くない、気持ち悪いって。でそこからデザインの調整があった?した?みたいなニュースも出てきてさ。
 でね、見た感想。
「ソニック、もっと気持ち悪くて良かったんじゃない?」 

 ソニックは異星人でその体にある不思議なパワーで超加速ができる、で幼い頃そのパワーの秘密を付け狙う相手から逃げてたった一人で地球にやってくる。それから16年、人間にずっと見つからないように暮らしてきた彼がフトしたきっかけで一人の警官と出会う……って冒頭なのよ。
 もうその部分を聞いただけで「あぁその人間と歩み寄ったり喧嘩したりお互いのトラウマを理解しあったりしながら友情を育んでいくのね」ってわかる、こんなのはネタバレでもなんでもなくてそれ以外の関係性を「ソニック」っていうすでに人々から受け入れられている存在に対して構築するのは、はっきり言って不可能なわけで。
 
 ソニックって一応設定上はハリネズミなんだけど、まぁ違うじゃんw
 なんだかでっけぇ気味の悪い動物?なの?って感じでエイリアンであること間違いない!って造形で、作中でも最初は「なんだか気持ち悪い怪生物」扱いされるわけ、だからさ、そこで「かわいいな」って見てる側が思ってしまうビジュアルだと物語としては失敗してることになっちゃう。
 だからここでは「ソニックという既知のキャラクター」と「映画ソニックとしての在り方」がコンフリクトを起こしてしまっているのね。そこできっと製作者はストーリーの最初では拒否され、最後には愛される姿っていうのをギリギリまで考えていたと思うのよ。ただやっぱりソニックっていうのはすでに愛されているキャラクターなのだから、そのビジュアルに対して反射的にクレームを入れる人がいるのはわかる、わかった上で……
 
 うーん、やっぱそこには突っぱねる勇気というか意志を見せて欲しかった、いや「これは作中でのワンシーン切り取ったもので、見ていただければきっと彼の愛くるしい、そしてカッコいい姿に満足いただけると思います」ぐらいの説明はしてもいいし、なんなら反応を見てコッソリ修正してもいい。でも「じゃあデザインを修正するよ!」って言ってしまうのは――あの正直言うとね、私これって嘘だと思っていて、あまりにも修正が早いっていうかメインキャラクターのデザイン変更をして、しかも延期無しって、ちょっと手際が良すぎる。だから本当は大して手を入れてないんじゃないかなー、って思ってるんだけど。
 それはそれとして、私の前には「修正前ソニック」と「修正後ソニック」っていう二つの可能性が提示されてしまうわけじゃない。それを比べるなって言われても無理な話だし、まぁこれっていわゆる規範批評になってしまうからイヤなんだけどさぁ、結局絶対に見ることのできない「修正前ソニック」って見ることができないだけに「こっちほうが良かった」を無根拠に背負えてしまう。
 だからそういった可能性を提示された時点で、もう100%楽しめなくなってしまうのよね。
 
 作品としては、全体的にそつなく面白い話であったのと、ヴィランのエッグマンがめちゃくちゃ良くて、どちらかっていうとソニックよりもエッグマンの奇抜な動きや言動が作品自体の面白さを数段上げている。
 才気あふれる天才でエキセントリック、ゆえに理解者はいないっていうマッドサイエンティスト像でありながら、根幹に明るさと派手さがあって、全編通してずっとハイテンションなのが、見ていてすごい面白かった。あのあれ『キングスマン』のヴァレンタイン、だったけな?あれをもっと明るくしたような感じを受けた。
 
 ソニックっていう出来上がった、そして人気のある(ここには件の騒動への皮肉はもちろんあるよ!)キャラクターよりも、ヴィランだからある程度好き勝手しても怒られないエッグマンの方で、そうやって面白いことをやてるのは上手いな、と思いました。
 
 観終わったあと「あー面白かった」ってちゃんと満足できる映画だった、あとゲームへのリスペクトも感じた。ゲームをどうやって映画というメディアで表現しようか?という挑戦があったし、それは成功していたように思う。

 うん良い映画だったよ。それは本当。

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 この話をしたツイキャスはこちらの20分ぐらいからです。


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