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一週遅れの映画評:『M3GAN/ミーガン』パワー!!!!!

 なるべく毎週火曜日に映画を観て、一週間寝かして配信で喋る。
 その内容をテキスト化する再利用式note、「一週遅れの映画評」。

 今回は『M3GAN/ミーガン』です。

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 家族旅行中に事故にあい両親死亡、唯一生き残った女の子・ケイディ。その生き残ったケイディちゃんをまだ若い(30代前半ぐらいかな?)叔母が引き取るんだけど、この叔母が研究者気質であんまりコミュニケーション能力が高くないっていうか……まぁ5~6歳の両親を失くしたばかりの女の子相手にパーフェクトコミュニケーション取れるヤツなんてそうそういないですけどね。
 そこで困った叔母は自分が開発中の学習型AIを搭載した等身大アンドロイド「M3GAN」を、子守り兼お友達として与える。最新AIが「ケイディを守る」という指示に従って学習を続けた結果……って話なんですが。
 
 まぁもうなんとなくわかるじゃんw ケイディに危害を加えそうな相手に対して過剰防衛を繰り返し、それを咎められたら「私の邪魔をするな」つって製作者にも襲い掛かってくる! みたいな展開。もうほんとそのまんまなので、ストーリー的な説明がほとんど不要なのよね。
 それで最後には「ケイディを悲しませない」って名目で、その可能性を持ったあらゆるものを彼女の周りから排除しようとしたミーガンは倒される。そして叔母は「悲しむこと」だって必要だったのよ、みたいなことをケイディに言うわけですよ。悲しみを遠ざけているだけではダメで、いつか両親を失った悲しみと向き合わなくてはいけない。
 つまりここでは「幸福を求める」ことしかできないAIではたどり着けない、「不幸を受け入れる」ことの必要性を説く……って話に着地するんですけど。
 
 いやぁ、どっちもめっちゃパワー志向の攻撃的姿勢ですねぇw
 ミーガンは「とりえず全部粉砕してやるぜー!」って感じで、ケイディに危害を与えそうなものをバンバンぶちのめしていくわけですよ。完全に力づくでケイディの外側にあるものを排除していく。
 一方で叔母さんの言うことも「辛い現実と向きあえっ!」っていう、かなり攻撃的な態度ではあるわけですよ。だからこの2つの対立はどっちもパワーでなんとかしようって思想によるものではあるんです。
 
 で、そこにどんな差があるか? っていうと力の向かう方向ですよね。ミーガンの方はケイディの外側にあるものへ力を向けている、つまり他傷/他責のパワーであるのに対し、叔母さんが説くのは自傷/自責のパワーである。そうやって比べたら「まぁ自傷のほうがまだマシかな?」程度の違いしか無いと思うんですよ。
 ここで重要な役割を持つのが、叔母さんが以前に作成していたロボットで。外から操作できてかなりのパワーを持ってる半ば工作機械みたいなもんなんだけど、最終局面でケイディはそのロボットを操ってミーガンに立ち向かうわけさ。
 
 この場面では他責の攻撃性(ミーガン)から離れつつも、叔母さんの主張である自責の攻撃性はまだ登場していない。つまりはその2極の中間にある状態なんですよね、そこに「コントロールできる純粋なパワー」が介入していく
 ケイディはまだ小さな女の子で、外からの悪意に対抗する術なんてほとんど持ち合わせていない。だからミーガンみたいに他責の攻撃性によって危険を排除してくれる存在ってやっぱり必要なんですよ。でもそれと同じくらい自分の中にある悲しみと向き合って、それを乗り越えていかなくちゃならない。
 結局のところ他責の攻撃性だけでも、自責の攻撃性だけでもだめで、そのふたつをバランス良く両立させていくことが正しい。その象徴として「コントロールできる純粋なパワー」が登場する、っていうのはものすごく整った図式だとは思います。
 
 ただいかんせん、全てが”””パワー”””なんですよねw
 AI搭載アンドロイドの不気味さも、両親を失った少女の悲しみも、叔母さんの仕事と人間関係に対する悩みも、すべてパワーが吹き飛ばしていくので、なんかホラー/スリラー作品とは思えないようなスッキリ感があって……なんだろうね、「嫌いじゃないわよ!」って作品でした。
 もっと怖くも、イヤな感じでメンタル責めてくるのも、ゴア表現もできる中で、ある種ヘラヘラ笑いながら楽しめる感じに調整している抑制のかけ方があり。なのに「抑制をかけたら、パワーがでてきた」みたいな不思議さはかなり独特の味があって、なんかこう名作ホラー! とは絶対に言えないけど「50本映画見るなかで、こういうのがひとつふたつあると新鮮でいいわね」という立ち位置の作品として、見れて良かったとは思ってます。
 
 ……それと今回、「人形」がテーマの映画ということで「すぱんくtheはにー(3次元の姿)」ぬいぐるみを自分で作って、これをアバターに配信をしました


 こちらのぬいぐるみを抽選で1名様にプレゼントしたいと思います。適当に私のDMへ「お手製すぱんくぬいぐるみ、くれ!」的なメッセージをいただければ、当選者に送りつけます(郵送方法は当選時に相談させてください)。
 熱いすぱちゃんマニアからの応募、待ってるぜ!!

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 次回は『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』評を予定しております。

 この話をした配信はこちらの20分ぐらいからです。


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