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一週遅れの映画評:『映画かいけつゾロリ ラララ♪スターたんじょう』ゾロリ先生の手には。

 なるべく毎週火曜日に映画を観て、一週間寝かしてツイキャスで喋る。
 その内容をテキスト化する再利用式note、「一週遅れの映画評」。

 今回は『映画かいけつゾロリ ラララ♪スターたんじょう』です。


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 なんか『ゾロリ』の映画見ると泣いちゃうんだよねぇ、しかも本編とあまり関係ないところで。確か『ZZの秘密』の時は、すっごい前半のゾロリママがオムライス作るシーンで涙止まんなくなっちゃってw 今回はビートっていうキャラクターがイチゴを販売する屋台を設営してるとこで泣いてたんだけど、これもストーリーにはあんま関係ないですw なんなんだろうね、これ?
 
 それでね、今回のお話はミュージシャンを目指すカバの女の子・ヒポポが、自分の殻を破ってがんばるって話なんだけど……あのね、ちゃんと面白かったの。ちゃんと面白かったんだけど、なんかところどころ変なのよ
 変、ていうとネガティブに聞こえちゃうな……なんか「自分の知らないもので動いてる」って感じかな?
 
 そもそもこのヒポポって子がミュージシャンを目指すようになったのが、幼少の頃にテレビで見たアイドルに憧れてなのね。だから普通に考えたらダンスと歌をがんばって、それでアイドルオーディションを受けて。みたいになるじゃん。
 だけど違うのよ。この子、アコースティックギターを持ってストリートミュージシャンやろうとしてんの。しかも後半で「新曲を作るんだ!」と言われて、歌詞を書くっていう。
 私の中では「アイドル」と「シンガーソングライター」ってやっぱ別の職業って感じがするのよ。どっちも立派なミュージシャン/アーティストであるのは間違いないんだけど、使う能力が重なってはいるけど完全に交換はできない……例えばテニスとバトミントンみたいな関係に思えるのね。
 だからちょっと変っていうか、「あーなるほど、子供の目からはそう見えてるのかぁ」って感じたのよ。テレビとか動画で歌ってる人、って括りとしてそこにあんま差異は無いんだな、と。それは軽い発見でしたね。
 
 でね、今回はゾロリが、というかゾロリ”先生”がそこに一枚噛んでくるんですけど。いまゾロリ先生って言い直したじゃん、もともとゾロリの子分であるイシシとノシシは「ゾロリ先生」って呼んでるんだけど、今回の映画においては間違いなく「かいけつゾロリ」ではなく「ゾロリ先生」だったのよ。
 というのも、ゾロリって基本的に利己的な動機の強いキャラクターではあるんですよ。自分の目的がまずあって、それと利害が一致するから協力するのがベースにある。多少は情に脆いところはあるから、最後の最後で自分の利益を投げうって行動することはあるんだけど、っていうかめちゃくちゃ多いんだけどw 今作だとそれもちょっと違うのよ。
 確かに最初はヒポポの才能を見出して「こいつをプロデュースして儲けてやろう」と考えてるんだけど、すぐにそういう打算はなりを潜めるのよ。実際作中でも「オレさまはあの子を純粋に応援したいだけなんだ」みたいなことを言い出すのね、いや、確かにゾロリはダークヒーローでもあるから「口ではそう言ってるけど本心は違う」場面って結構あるんだけど。今回は演出等も含めて、このセリフは本気なのよ
 
 それでヒポポには「周りの人が自分を見て笑ってる気がして、大きな声で歌えない」って問題があって、その解決を手助けしてくれるのが、「妖怪学校の先生と生徒」たちなのね。ゾロリは以前この妖怪学校のピンチを救ったことがあって、それで彼らは快く協力してくれるんだけど。
 妖怪側にも利益があって、本来ヒポポは声がすっごく大きい。それで妖怪を見て「キャー!」って叫ぶんだけど、妖怪は妖怪で「自分たちはもう怖がられないんじゃないか」って悩みを抱えている。だから大きい声の悲鳴がめちゃくちゃ嬉しいのよ。だからここで本来の『かいけつゾロリ』シリーズならゾロリと他のキャラクターにある「利害の一致」が、ちょっとズレて他のキャラクター同士の「利害の一致」になっているのね。
 ただ一緒にヒポポの特訓をしていくうちに、妖怪とヒポポは仲が良くなって利害を越えた協力関係になっていくのね。つまりゾロリがヒポポに対してとってる、特に得るもののない協力と同じ位置に変化していく。
 
 これって総じて「人脈という財産」の話だと思うんですよ。利害を超えた関係がある、だからこそそこに信頼が生まれる。物語中盤まではヒポポとゾロリ、ゾロリと妖怪たちの間には信頼があって、そこからヒポポと妖怪たちの関係が深まることで信頼が生まれていく。
 そのハブとなっている、仲立ちをしているゾロリの立場はいつもの「かいけつゾロリ」ではなく、「ゾロリ”先生”」と呼ぶのが相応しい気がして、さっき言い換えたんですよ。
 物語の最後。いつも通り旅に出ているゾロリたちは、このお話がはじまったときと同じく素寒貧で(ていうか毎回そうなんだけど)デビューして人気者になったヒポポのポスターを見て「ヒポポに似てるけど、ま、別人だろうな」と言うんですね。だけどそのヒポポが手にしているギターにはちっちゃいゾロリ先生の人形がぶら下がってる。
 
 ゾロリたちのお話は基本的に無一文の状態から始まって、無一文で終わる。そこにはなにも獲得していない姿が描かれているけど、実際は培った関係性、つまり人脈を財産として持ち帰っている。だから助けが欲しいときに、ちゃんと協力してくれる人(今回なら妖怪たち)があらわれる。
 そしてそれは「利害を超えた関係」を築いたからこそ、生まれるものだと。『かいけつゾロリ』シリーズって今年が35周年で、それだけこの作品が愛されてきた(いや、本当はそれ以前の『ほうれんそうマン』シリーズから読んでた私は「35周年どこじゃねぇぞ」って気持ちもあるのですが)のは、いろんな人たちの助けがあったからだ。という部分にも繋がっていて……いつもの『かいけつゾロリ』じゃない、だけど「ゾロリ先生」として納得いく映画でした。
 
 ただ、その、ゾロリの野望に「お嫁さんが欲しい」ってのがあってですね、作中で出てくるカワイイキャラクターは大抵、ゾロリがお嫁さんにしようと画策するのですが。ヒポポちゃんはその枠としては華麗にスルーされてることに……いや、やめましょう。この話は掘ってもいいことない気がする!
 面白い映画でした! 以上! ってことでよろしくおねがいしますw

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 次回は『Dr.コトー診療所』評を予定しております。

 この話をしたツイキャスはこちらの18分ぐらいからです。


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