一週遅れの映画評:『なのに、千輝くんが甘すぎる。』君に夢中。
なるべく毎週火曜日に映画を観て、一週間寝かしてツイキャスで喋る。
その内容をテキスト化する再利用式note、「一週遅れの映画評」。
今回は『なのに、千輝くんが甘すぎる。』です。
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この作品、ストーリーに絡む男の子が3人登場するんですけど、その私的ランキングをつけてみました!
第三位、千輝くんです!
この映画のメイン竿役、だから私は竿役って言うのをやめようよ。えっと主人公と懇ろになる……懇ろもまずいか? じゃあラブラブする人なんですけど。なんというか「おめぇ、顔が良くなけりゃ許されねぇぞ」という動きを繰り出しまくるのよ。だからこの作品に対する没入感を試されるっていうか、きちんとこのお話にノレてればめちゃくちゃ良くなるタイプのキャラクターで。
それでね、こういった「少女マンガ原作で主演がジャニーズ系とかの若手男性アイドルと、同じく女性アイドルかモデルから女優ルートに入りたい人の、大体100分前後でローティーンからミドルティーンがメイン客層な邦画」をそれなりに見てる私からすると、今回の『千輝くん』はそういう作品群の中ではなかなか良かったんです。
だから三位とはいえ、その顔の良さに支えられた動きにそこまで不快感は無い。とはいえあとの二人に比べていかんせんパンチが弱いところが、個人的には「作品の面白さに寄与してる部分が少ないな」って感じでまぁ三番手なんスよ。
第二位、かませ役の子。
なんつーの、こういう作品だとちょくちょく「主人公に惚れてるけど、結ばれない」ポジションに男の子って出てくるわけですよね。物語の起伏としても、主人公の魅力を別の角度から表現するためにも、そして主人公と結ばれる男の子の良さに説得力を出すためにも、そういった役回りってのは絶対居たほうがお話作りには楽で。
ただねぇこの『千輝くん』のかませ役はちょっと不憫すぎて。あとで話すんですけど、主人公は最初千輝くんともかませ役とも違う男子のことが好きで、そいつに告白してフラれる……ってとこから話がはじまんのね。もうこれ合計2回NTRれてんじゃん! いや正確には「僕が先に好きだったのに(BSS)」なんだけど、なっかなか100分中で2回それを喰らうのは珍しい。
しかもこの子、もともと陸上部で。最初、友達だった千輝くんを自分と同じ陸上部に勧誘して仲良く走ってたんだけど、そうやって後から部活に入った千輝くんに勝てなくなってしまう。それで陸上部を辞めてしまうっていう。
なんていうかな、作品全体を通していっこも良いことが無いっていう。救いはないんか、救いは。もうこのお話が成立するために必要な不遇さを一人でしょい込んでて、すっごいかわいそう。そしてかわいそうは可愛いからね、二位です。
第一位は、最初に主人公をフッた男!
いやね、すごいのよ。この男が同級生なんだけど、ダサ眼鏡で髪もくしゃくしゃ。園芸部でお昼休みとかに花壇で「元気だね~」とか言って水をやってるから「あー、心優しいタイプなんだね」と思わせて。
主人公が帰り道で待ち伏せして告白したとき「え? ストーカーですかぁ、キモッ!」つって走って逃げていくし、そのあとSNSで「なんか今日ブスに告られたwwwしかも待ち伏せされてて、ストーカーかよ。キッショwwww」と呟いてて、それが25リツイートぐらいされてるっていう微妙にリアルな数字になってる。しかも一緒にいる友達と「〇〇氏~、さすがでござるよ~」みたいなちょっと古いオタク口調でコミュニケーション取ってるのさ。
これが私にはすっごい不思議で。というのも絶対この男の子ってモテるタイプじゃないわけよ。それで高校生なら「自分には絶対彼女なんてできないんだ。一生童貞なんだ……」っていう自己評価で苦しんでておかしくない。そこに「好きです」って言ってくる同級生とかいたら、とりあえず「付き合っておけば、彼女いない=年齢じゃなくなるぞ!」みたいなテンションになっておかしくないと思うんですよ。
だから彼には何らか作品外の部分でバックボーンがある。秘密にしている過去のトラウマとか、セクシャリティの違いとか、そういった背景を思わずにはいられないのよ、私は。だからどっかでその理由が出てくるんじゃないか、ってのがもう気になって気になって。完全に彼に夢中だったものね、過去話こい!ってw結果なんの説明も無かったんですけどw
なんにせよ、この作品で一番記憶に残ってるのはこの男の子で。あのね、千輝くんと二位の子でBL妄想を喚起させるシーンとかあったんですけど、それよりもこの男の子と友人の方が個人的には熱いというか「ここ! ここ味がする! このガムまだまだ噛めるよ!」ってところで取り上げられた感じがして。ほら犬の躾とか「もっと遊びたそうなところで切り上げる」みたいなテクニックあるじゃない? もう完全にそれですね。一位です。
えっとぉ映画自体の話を少しだけするとぉw
これ主人公が失恋の傷を癒すために、千輝くんから「自分に”片想い”ごっこをしてはどうか?」って提案されるんですね。それで”片想い”でやりそうなことリストみたいのを作って、そのなかに「好きな人の好きなものを、好きになる」というのがあるんですよ。
それで千輝くんから「走るのが好き」って聞いた主人公は、自分もそうなろうとランニングをはじめる。それでちょっと無理をしてしまって筋肉痛でヨタヨタ歩いたり、靴擦れに貼った絆創膏に血が滲んでたりして。それで「無理しなくていいからね」って千輝くんに言われたりするんですよ。
それで後半。その千輝くんが大事な大会が控えてる中、靭帯を損傷するって怪我を負ってしまって。それで主人公が結構険しい階段のある神社へ、怪我からの回復を願ってお百度参りしたり。
なんとかリハビリをして、決して万全ではないけど大会に千輝くんが出場することになって。だけどちょっとしたトラブルが原因で、主人公はその大会の応援に行っていない。だけど友達から説得され走って会場まで向かうんですけど、その走ってるシーンが結構しっかり描かれているんです。
ここがね、かなり良いなと思って。
”片想い”ごっこ、っていうまぁ言うなれば偽物の感情をトレースしているわけですよね。それと「好きな人の好きなものを、好きになる」って近いじゃないですか。自分のものじゃない「好き」を参照して、それを「好き」になろうと演じるっていうのは。
で、ラブストーリーだから当然、その「ごっこ」だった”片想い”がいつの間にか本当の「好き」に変わっていく。偽物だったものが本物に移り変わっていく。それと同じように、別に自分のものではなかった「走るのが好き」も、それを演じていくうちに確実に主人公は「走る能力」を身につけていってる。好きになったかどうかは微妙だけど、少なくともそうやって偽物だった感情から「走る」行為がしっかりできるようになるって本物を身につけている。
この恋愛感情の変遷と、身体能力を変化を「走る」って行為でひとつに束ねて、100分のなかでストーリーの筋道を立てているのはかなり上手いし、面白かったですね。
起こる出来事の時系列に「それなんかおかしくねぇか?」と思う部分は何か所かあったんですが、こうやって中心に据えるお話として一貫性のあるものをきっちり出してるところは、正直好きな感じです。この手の作品としては、それなりに良いものだったと思いました。
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次回は『Winny』評を予定しております。
この話をしたツイキャスはこちらの15分ぐらいからです。
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