北海道警察の汚職事件。稲葉事件で約40億円分の覚せい剤が国内に流出。
北海道警察の汚職事件。稲葉事件で約40億円分の覚せい剤が国内に流出。
【稲葉事件の概要】
2002年7月に北海道警察の警察安全特別捜査隊班長であった「稲葉圭昭」元警部補が逮捕された。覚せい剤取締法違反容疑と銃刀法違反容疑で逮捕、有罪判決を受けたのだが、北海道警察において薬物の逮捕者は初だった。映画「日本で一番悪い奴ら」でも描かれたように、稲葉元警部は売人から薬を購入しるのではなく、自ら密輸に関与していたのだ。さらに拳銃を暴力団関係者に売りさばき、小遣い稼ぎまでしていたのだとか。本人曰く警察官時代の給料は年収1000万ほどだったらしいのだが、それではまったく足りなかったのだそう。
それは、過去のおとり捜査において故意に犯罪を誘発するような捜査もあったという疑惑があるからだ。つまり、故意に犯罪を誘発する際に、大金を使うこともあったからだと著者は思う。実際に協力者にお金を渡していたり、飲み食いに連れて行ったりとすることが多かったのも原因の一つだろう。
【稲葉が逮捕された経緯】
2002年、札幌市で飲食店を経営していた男が、自ら札幌北署に出頭し、道警に務めている稲葉が覚せい剤を使用していることを供述したことが始まりだった。尿検査後陽性だと発覚した稲葉。彼がアジトとして使用していた場所に、覚せい剤とロシア製の拳銃を発見。捜査の資金調達のために販売目的で所持していたのだとか。
道警に出頭した男は、映画で描かれた「山辺太郎」。イメージは映画と近いのだと感じる。自首した男も稲葉の協力者だったが、金銭トラブルが生じたことがきっかけで自首をしたのだ。
1993年には道警防犯部銃器対策室に配属され、8年間で100丁mの拳銃を押収し「エース」と呼ばれた稲葉が、どのようにして汚職という沼から抜けられなくなってしまったのか。気になる部分を解明していこう。
【腐りきった北海道警察】
当時の道警は覚せい剤所持で逮捕をすると10点という大きな得点がもらえたのだとか。5g以上だと+5点など細かく設定されたポイント制だった。覚せい剤以外にも、銃も大麻も、殺人も盗みも、それぞれポイントがついているのだとか。勿論このポイントは昇進に影響する。ノルマも存在し、達成できなかった場合の罰則もある。だからこそ、道警の警察官たちは、ポイント集めに必死だったわけだ。
「110番じゃ飯は食えない。とにかく『エス』を作れ」と教わっていたのだとか。
『エス』というのは、情報提供者のことだ。ヤクザの中にエスを忍ばせるのも、ヤクザの中にエスを作るのも、一般人全員をエスとして使うこともできたという。周辺の公衆電話に名刺を張りまくったり、バーやスナックにもお願いして名刺をあちらこちらに張っていたのだとか。
飲食店にはヤクザが多く、迷惑している店もいくらかあったのだとか。そんな時に店主は稲葉を頼ったり、覚せい剤を使用している人間の情報を入手していたのだ。やり方次第で、彼は町のヒーローになっていたはず。非常に残念でならない。ただ、彼も道警という組織の汚職に関わってしまった。
稲葉事件が発覚する前まで、暴力団員などと手を組んで覚せい剤密輸を見逃していたこともよくあったのだとか。発覚した時の一回ではない、警察組織も協力し、汚職に手を染め続けていたのだ。
【拳銃の大量摘発計画】
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