見出し画像

歌詞のスパイスに「毛」の存在をみいだす

■曲のフックは細部に宿る

こんにちは!note初投稿のオーキです。
風の吹くまま気の向くまま、おもに歌謡曲のことを雑談しようと思っています。
よろしくおねがいします!

まったく興味がなかったのに偶然の出会いとでもいうんでしょうか、
ふと気づいたら好きになっていたことってありませんか?

まさに音楽なんて、急にメロディーや歌詞がすっと心に入ってきたり、いつもの風景が違って見えたり、「あれ…この曲って私のことを歌っている!?」なんて、シンクロするなど聴くときどきによってあります。

それって、曲の中にあった「フック」が自分のアンテナに引っかかった瞬間なんじゃないかと思うんです。

そこで今回は、愛すべき歌謡曲に隠れたフックがないか探してみたら、
予想だにしないものが出てきました!

■昭和歌謡の女王の名曲に、まつげを濡らす大人になる

画像1

わたしの脳内プレイリストが勝手に選曲したのは、昭和歌謡界の女王こと美空ひばりさんの「愛燦燦」(1986年)でした。

♪~
人は哀しい 哀しいものですね
それでも過去達は 優しく睫毛に憩う
人生って 不思議なものですね。 

(愛燦燦 / 美空ひばり 作詞・作曲:小椋佳 編曲:若草恵)

「不思議なものですね。」ひばりさんの全身から響く愁いを帯びた歌声で問いかけられたら…、私の心の中で北島康介が「何も言えねぇ。」と感極まってしまいます。

この曲は追悼番組でも必ず流れる、美空ひばりさんの代表曲だと思うのですが、
当時小学生だった私には、人生の喜怒哀楽を描いたこの歌のうま味を存分に味わうには人生経験が足りませんでした。

それが四十路になって聴いてみたら、まるで極上の出汁みたいに
人生で作ってきた古傷に、じわぁ~って優しく染みいってくるではありませんか。
とくに1サビ前のフレーズは、染み込みポイントです。

♪~ 
すこしだけの運の悪さを悔んだりして
(愛燦燦 / 美空ひばり 作詞・作曲:小椋佳 編曲:若草恵)

この「すこしだけ」という言い方がたまりません。サビ前からじわじわ来ます。

うちの父は、ひばりさんのラストライブDVDを見る度に涙するらしく、
彼女の歌声には人生を刺激するパワーがあるといい、ときどき見直すのだそうです。

この曲では人生をまるごと肯定する、その全てを愛しいと想う気持ちが歌声から深く伝わってきます。人生にさざ波のようにひろがりつづけるような、余韻が残る一曲です。

「愛燦燦」を聴いたら、おやじギャグの瞬発力と比例するように、歌詞へのシンクロする率も高くなっていることに気づかされました。

恋する気持ちやラブソングにある「切なさ」が体にフィットしなくなってくると
歌謡曲や演歌の歌詞が染みてくるようになってくるみたいです。

年を重ねるたびに、好みもジャンルも守備範囲は広くなるいっぽうで、涙腺もゆるくなるオプションまでついてくるんだから…人生って不思議なものですね。

■歌詞をクローズアップ。そこに「毛」は隠されていた。

画像2

「愛燦燦」は、引退を発表された小椋佳さんが作った曲なのですが、さっき脳内再生をした、1サビの部分だけをみても、最強のフックが潜んでいます。
クローズアップしてみたいのはココ!

♪~
過去達は 優しく睫毛に憩う 
(愛燦燦 / 美空ひばり 作詞・作曲:小椋佳 編曲:若草恵)

このフレーズはくせ者ですよ、奥様!
注目したいのはここで使われているのが「まつげ」なところです!

過去を思い出すときには「まぶたに浮かぶ」などいいそうなところを、あえてその先端についている「まつげ」という毛を選ぶことで、目元を強調するアイラインのような効果をしていると思いませんか!?

ここを「まつげ」に変えただけで、ぐっと目のイメージが画として浮かびやすくなり、目元の印象が強く感じられるようになります。

目元が浮かんでくると、つぎは歌詞にある「過去達は」という時間の中で流した涙や笑っている顔まで見えてきそうな気もするのだから、まつげの効果ってすごくないですか!

「睫毛に憩う(まつげにいこう)」だけ見てもよくわからない言葉なのに、歌を聴いた人のイマジネーションの数だけ「まつげ」が浮かび上がってくるというからくりができてしまうのです。

よくわからない言葉といえば、キン肉マンの大好きなセリフで、
「へのつっぱりはいらんですよ。」というのがあります。
そのあと必ず「言葉の意味は分からんが、とにかくすごい自信だ!!」というツッコミが入るんですが、まさにおっしゃる通り意味は分からなくても伝わるという点では「まつげにいこう」もまったく同じではないかと思うんです。

つまり、考えるな感じろ!必要なのはフィーリング! ということです。

もしかしたらこの曲は「つけまつける」が流行るずっと前にまつげをフィーチャーしていた、隠れまつげソングなのかもしれない…。
(…もっと、まつげをフィーチャーした曲はあるとはおもうが、この場はこのまま押し切ります。)

もっといってしまうと「毛」の存在は、歌詞を引き締めるスパイスとして有効性があるのでは!?とすら思えるとこまできてます、わたしはね。
仮装大賞だったら、合格のラインを超えたあたりの確信具合です!

J-POPのヒット曲のみても、髪の毛とか、ギャランドゥとか、まつげとか、歌詞のみならずタイトルにもなっている曲もあるというのが、「毛」のポテンシャルを裏付けているようにも思えてならないのですよ。

しかも、曲の歌いだしや導入部分で、毛はすぐに登場していたりもするんだから、その活躍ぶりにも驚きます。きゃりーぱみゅぱみゅの「つけまつける」(2012)とかね。

画像3

そんなヒット毛ソング中でも「ギャランドゥ」(1983)は色物にみえてしまいそうなんですが、西城秀樹さんの鼻にかかった歌声とギャランドゥーのインパクトでで、一度聴いたら忘れられないパンチのあるかっこいい一曲です。

(もんたよしのりver.)

この曲は「ギャランドゥー」が記憶のフックとなって、忘れられないんです。
フルコーラス歌えなくても「ギャランドゥー」のとこだけ反射的に歌ってしまうのは、それが毛だったからではないでしょうか?

「毛」要素が入るとリスナーが無意識に、毛=パーソナルなものと変換してしまい、その人の記憶にアクセスしやすくしているのかもしれない…
歌詞における「毛」は人の記憶を刺激する、そんな「毛」がしてなりません。

■星野源の歌で「毛想」。男性をパンのように楽しむ。

画像4

もはや話題は毛ソングの話になっていますが、もう1曲好きな毛ソングを紹介したいと思います。

星野源さんの「くだらないの中に」(2011)
この曲の歌いだしもまた、毛はじまりです。

♪~
髪の毛の匂いを嗅ぎあってくさいなってふざけあったり
(くだらないの中に/星野源 作詞・作曲・編曲:星野源)

歌いだしからいきなり出てくる「髪の毛」ワードに…
「えっ!源くんは今なにを嗅ぎあったっていったの!?」とのっけからリスナーの耳と心をがっちり捕まえにきます。

さらに、髪の匂いを嗅ぎあうほど親密で愛しい相手といるんだろーなと、
すかさず妄想にうながしパーソナルな世界へ一気に引き込んでいきます。
そして心地よい源くんの歌声の中で「毛想」状態ができあがります。

しかしこの曲は毛想だけでは済まさず、すぐさま新天地に向かい始めます。
「毛想」から現実に引き戻す、女性に人気のフックが待ち構えているのです。
それがこのフレーズです。

♪~
首筋の匂いがパンのようすごいなって讃えあったり
(くだらないの中に/星野源 作詞・作曲・編曲:星野源)

リスナーはここで「何のパンだろう?」と素に戻り種類を当てにいこうとなります。

いきなり登場した「パン」は、人を戸惑わせ毛想から現実に戻ってこさせる役割をしています。さらに、いろんな意味での「おいしそう」という欲求をかきたてまくる匂わせのフックとしても効果があります。

このあざやかなフック変化はさすがです。ふつう髪の毛の次に「パン」は出ない!パンをもってくるところが、星野源さんの巧みさであり、ここのフレーズは匠の仕事といってもいいんじゃないでしょうか。

「楢山節考」を書いた作家の深沢一郎氏が、恋に悩める女性読者に「男性をビフテキだとおもって、味わいなさい」という最高なアドバイスをしていたのですが、
深沢節を今風に焼き直したら、星野源さんが歌う「パン」かもしれないと思います。

いま女性を対象に街頭アンケートをしたら、ビフテキよりパン派が圧勝するはずです。それぐらいパンは女性からの人気も高く、なにより値段もちょうどよく手軽で毎日いただけるのがパンの良さじゃないでしょうか。

「男性をパンのように味わう」ニューエイジの恋愛指南と女心がわかっている、星野源さんのおいしい一曲です。

※今回は毛ソングとして紹介をしましたが、この歌は「人は笑うように生きる」をはじめ、心を照らすような素敵なフレーズが残る曲です。ぜひまるごと1曲味わってもらえると嬉しいです!

■歌詞の毛量が多め!?髪フェチ疑惑のsumika。

画像5

歌詞における毛の存在と、毛ソングについて語ってきましたが、憶測を絶対的な確信に変えてくれたバンドを発見しました。それがsumikaです。

とにかく歌詞における毛量が多めなところに大注目です。
歌詞サイトでsumikaの曲をざっと検索してみたところ、59曲中8曲の歌詞に髪の毛を発見!
グッドメロディーかつ、毛量も折り込んだ毛ソング、ダーク編とライト編を紹介します。

sumikaの毛ソング・ダーク編は、自分が旅行で3泊家をあけているすきに、夫が家に不倫相手を連れ込んでいた形跡を風呂場で見つける妻目線の歌詞にハラハラさせられる、
「Traveling」(2019)です。まさに住処で起きた、毛惨事ソングです。

♪~
排水口に絡まった長い長い髪
亜麻色に染まった新しい髪は
私のものじゃない
(Traveling/sumika 作詞・作曲 :片岡健太)

知らない髪の毛から察する…もうここだけで、毛惨事なのが伝わってきます。
「私のものじゃない…」亜麻色に染まった髪の毛を凝視する、奥さんの瞳まで見えてきそうで、聴いててハラハラします。さらに驚くのは、この奥さんすでに何回か夫の不倫を見過ごしているという、リスナーからしたらかなり心配な設定です。

曲の最後には仕事から帰ってくる夫を家で迎え入れる奥さんなのですが、髪の毛を見つけてから、自問自答を繰り返しながら何も気付かなかったように振舞う妻。ドラマをみてるようです。なのに曲調は一転して、旅行から戻った奥さんが家に帰る足取りのような軽快なラップではじまります。軽快さと歌詞のギャップにヤラれる1曲です。

ライト編は、「リグレット」(2014)という疾走感あるバンド王道のギターロックな曲です。
いま会えない愛しい人(元カノ?)を想いだす、失恋真っただ中にいるなのですが、sumikaならではの「髪の毛」の出し方に注目して聴いてください。

♪~
誰もが羨むような容姿でもない
だけど僕はニットからはみ出ている
前髪を見ていれば幸せで
(リグレット/sumika 作詞:KENTA KATAOKA 作曲:JUNNOSUKE KURODA)

「だけど僕は」からはじまる独白とでもいいましょうか、彼だけが知っている彼女への愛しい気持ちが、「ニットからはみ出ている前髪」ここのワンフレーズからグッと伝わってきませんか?

もう1回書きます、ニットから「はみ出ている前髪」ですよ!
他人には全然わかんないけど、この彼だけは知ってるんだな~その可愛さを。
やっぱり毛はパーソナルな気持ちを表す、フックですね。
愛しさをつたえられるなんて、毛の可能性は無限大です。

それにしても、ここまで歌詞に登場する毛に注目して、曲を紹介してきましたが、
どの曲にもいえるのが歌詞の言葉選びって独特で見れば見るほど面白いですね。
また気になる曲をシェアしたいと思います!お付き合い頂きましてありがとうございます!では!

3/3に待望の3rdフルアルバム「AMUSIC」をリリースしたsumika。
彼らの現在(いま)を詰め込んだ特別番組をSPACE SHOWER TVでお届けします!
https://www.spaceshowertv.com/program/special/vip_sumika.html

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?