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【第9回】松永天馬の歌詞深読みゼミ#7「心のプラカード/AKB48 」

アーバンギャルド松永天馬の歌詞深読みゼミでは、J-POPの歌詞を題材にしながら、歌詞の深読みを行なっていきます。
スペシャカレッジ通信 串田

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課題曲「心のプラカード/AKB48」
作詞:秋元康

「心のプラカード/AKB48」の歌詞はこちら

松永

AKB48、心のプラカード。
AKBって1年のルーティンを、
去年好評だったものは生かし、
不評だったものはハズシで動いてるとおもうんですが、
去年は恋チュンが!

串田

大ヒットしましたよね。

松永

AKB落ち目って言われてましたけど、
久しぶりに世代を超えて、
オタではない人もみんなが歌えるような歌で。
モータウンサウンドで日本人に親しみやすいメロディー。
あと、特筆すべきはPVですよね。

串田

あれは、すごかったですよね。

松永

色んな人が「恋するフォーチュンクッキー」に合わせて踊るって言う。
伊勢丹の店員も踊るわ、
インディーズミュージシャンも踊るわ、
ギャルニカみたいなアート集団も踊るわ…。

串田

サイバーエージェントとか最高でしたね
みんな可愛くて。

松永

そういった代理店仕事としてのAKBの大成功が前提にあっての、
今年の心のプラカードっていう歌ですよね。
曲調は総選挙で選ばれた16名によるAKB屈指のサンバ。
サンバかよ!っていう。

串田

親しみやすい。

松永

これぐらいのテンポの方が、お年寄りでも聞けるのかなって感じなんでしょうね。
AKBは明確に元ネタの歌謡曲を決めてからコンペに入ると聞いたことがあります。
毎回、「AKBで言えばこの曲みたいな」「J-POPでいうとこの曲」って課題を出してデモを募るらしく…。
だから「前しか向かねえ」っていう大島優子の卒業曲がMONGOL800の「小さな恋の歌」に似てるって言われてましたけど、似てる以前に、恐らくお題としてあった(笑)。
今回は「てんとう虫のサンバ」で間違いないと思います。

串田

なるほど。

松永

歌詞で言うと、
センターまゆゆへのヲタの目線。
シチュエーションは握手会。
「一瞬」、「5秒」だけ、握手の瞬間だけ僕の方を向いてくれる。
その時にあなたが好きですっていうのが口に出せないから、
心のプラカードに書いておきましょうっていう。

串田

(笑)
言えないんだ。

松永

でも確かに、
プラカードでは無いですけど、
自分の名前を覚えてもらうために、
名札をつけて握手会に望むヲタの人っているんですよ。
バンギャで言えば、うまく話せないから、
手紙に書いて渡す人もいます。女の子は男の子より、手紙の文化がありますよね。

串田

おー、
そこを工夫するんですね。
でも握手会で人気ある人とかって、
覚えてたりするって言いますもんね?
そこにファンは賭けるんだ。

松永

コミュ力がアイドルのバロメーターとして、
一つ重要になってきたのは、
握手会文化のおかげっていうのも言えて、
これってどっからきてるのかなって考えると、
基本としてあるのはゼロ年代初頭からのメイド喫茶ですよね。

串田

あー。
でんぱ組とかもそういう感じですもんね。

松永

そう。
ディアステもそうだし、
AKB劇場もそうだし、
メイドがアイドルをアップデートしたと思ってるんですが、
メイドはウェイトレス。言わずと知れた接客業。
歌を歌ったり、ルックスも重要だったりするけど、
コミュ力が一番大事だったりする。
不思議なことに、
アイドルの子はあんまり美少女すぎても、
ヲタが話せなくなるっていうので、
意外に人気が出ないと聞きますね。
具体的に名前を出すと、
アフィリアなんかは全体的に女の子のクオリティが高いんですけど、
かわいすぎるのがひとつの壁になっているのでは、なんてことも言われてます。

串田

あー。
確かにモデルみたいな子ってあんまりいないですもんね。
韓流的な。

松永

いないですね。
モデルみたいな子が特待生としてAKBに入っても、
メンヘラになって辞めちゃう例もあったような…。

串田

やっぱ、
馴染まないんだ。

松永

なんかいろいろあったんでしょうね。

串田

ファンはみんなやっぱり名前を覚えて欲しいってことですよね?

松永

いわゆる認知厨ですよね。
でも「認知されたから目標達成しました。ファン辞めます!」
みたいな人も世の中にはいるらしく(笑)。
そんなのありなんだ!って思いましたけど、
認知が一つのゴールとして考えてるヲタの人もいるみたいです。

串田

なんかすごい世界っすね。

松永

でもこのプラカードってモチーフは歌詞を書く前に企画会議で出てたんでしょうね。
「プラカードを使った空中戦を仕掛けるんで、歌詞に入れてもらえませんか?」
っていう。

串田

どうなんですかね。

松永

「恋するフォーチュンクッキー」は踊ってみただったから、
今年はそれにメッセージをつけてみましょう、みたいな。

串田

こういうのを見てて思うのが、
今までってSEXだったりとかそういう所までを含めて表現するってのがあったと思うんですけど、
告白するっていう重要性が増してますよね。

松永

モー娘。もSPEEDも安室ちゃんも、90年代のアイドルはSEXまでいってましたよね。
今でもK-POPはSEXを暗示させる表現があるけど、J-POPはそれ以前に回帰してる。
AKBはSEXどころか付き合うところまでいかないし、
下手したら初めて言葉を交わす瞬間を歌にしている。
AVに飽きたら水着グラビアに戻ってくる感じかもしれない(笑)

串田

日本はそんな感じになってるのかな。

松永

歌詞に出てくる「君」=女の子が、
AKBメンバーをイメージして書かれてる所にポイントがあると思うんですよね。
一般的な女性ではなく、相手はAKBだっていう前提で考えると、
非常にクリアになりますよね。だって相手は一般人じゃない、アイドルだから。

串田

う。
だから、これ勘違いしちゃだめですよね(笑)
周りの女の子に対しての歌ではない!

松永

そう!
周りの女の子に、
「ギブ・ミー・ア・チャンス 一回だけ」とか、
適用してはだめです(笑)

串田

高校とか大学のクラスに当てはめてはならない。
でも、当てはめてるやついそうですけど(笑)

松永

でも代理店的とか揶揄しましたけど、
歌詞の内容もプロジェクトにしてしまう参加型の方法論は現代的だし、
アイドルっていうドキュメント性の強いプロジェクトに合ってると思うんです。
今は「一人のカリスマ」ではなく、
「みんな」が重要視される時代だから、
みんな等価値なんだっていう前提があってできることだと思うんです。
バンドとかも参加型の動画プロジェクトをやったりするんですけど、
いまいち盛り上がらないことが多い。
サカナクションが「アルクアラウンド」の時にリスナーから歩く動画を集めて、
っていう企画をやってたんですけど、いまいち盛り上がらなかったのは
山口一郎さんが圧倒的なカリスマだからではないか。

串田

なるほど。
バンドはカリスマ性が必要な部分は大きいですもんね。

松永

まゆゆも僕と同じ人間で、
握手会では同じ目線で話せるし
ググタスだってやってるし、
裏アカ持ってるかもしれないし(笑)
恋する権利はあるんだぜっていう存在だから、
成立する。

串田

AKBのドキュメンタリーとか見てると、
やっぱりあっちゃんが抜けたのはでかいですよね。
より等価値感が出た。

松永

ですよね。前田敦子はやっぱりカリスマ的なところがあった。
あっちゃんがいた時の求心力で持ってたAKBと、
それ以降の「みんな」で作るAKBは別物になってると思いますね。

串田

それ以降って、
ヒエラルキーもあんま感じないですもんね。

松永

ないですよ。
だってまゆゆがセンターの実感無いですもん。
もちろんファンの方からしたらまゆゆは別格かもしれないけど、カリスマには或る種の存在感や人を狂わすパワーが必須で、彼女にはそれはあまり感じない。
今度、モー娘。も道重さゆみというカリスマが抜けた後、
「みんな」を重視した方針にシフトするかもしれない。

串田

どんどん増えてってますよね。
AKBと吉本は。

松永

吉本!確かに地方にどんどん進出してますしね。

串田

関西の人が、
「おまえ面白いから芸人なれやー」
みたいなノリで、
全国的に「きみ可愛いからアイドルなりなよー」な感じになってる。
ちょっと可愛い子の人生の選択肢としてアイドルが存在してる。

松永

バイトの感覚に近いですよね。

串田

スカウトじゃないし。

松永

自分から志願するっていう。

串田

アイドルの募集だけで、
雑誌が成り立ってしまうんじゃないかって思いますよね。

松永

アイドル求人情報誌(笑)
アイドルanとかアイドルフロムエーとか…。

串田

ストリートで女の子だけもらえるような(笑)

松永

そうですね!モモコのノリで作るべきだと思います!(笑)

串田

よし、
それ、
やりましょう(笑)

次回に続きます。

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