松永天馬050

【第6回】松永天馬の歌詞深読みゼミ「炎と森のカーニバル/SEKAI NO OWARI」

アーバンギャルド松永天馬の歌詞深読みゼミでは、J-POPの歌詞を題材にしながら、歌詞の深読みを行なっていきます。
スペシャカレッジ通信 串田

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【第2回】松永天馬が歌詞に対して思うこと#2

【第1回】松永天馬が歌詞に対して思うこと#1

課題曲「炎と森のカーニバル/SEKAI NO OWARI」
作詞:Fukase

「炎と森のカーニバル/SEKAI NO OWARI」の歌詞はこちら

串田

やっぱ、僕面白いと思います。
SEKAI NO OWARIの歌詞。

 
松永

新しい世代の歌詞だなってすごく思いますよね。
まず、横浜にある遊園地のコスモパニックは実在するみたいで、
横浜BLITZの近くにあるコスモワールドって遊園地の中の、
コスモパニックっていう後楽園で言うビックリハウスみたいなものがあって、
そこの非常口がパーティーのエントランスっていうのは、
現実と非日常が地続きになってるっていう、
わくわくさせる話なんですけど、
この始まり方がアニメ的であるなと。
セカオワさん自体が、
現実ってものからトーキョーファンタジーに誘いますよっていう、
コンセプトで活動されてると思うんですけど。

 
串田

ふんふん。
 
松永

僕は、この歌詞を見てて、
この間深瀬さんがツイッターでファンに「今の彼女のとのことは歌詞にしないんですか?」
って言われて「一番新しい曲(炎と森のカーニバル)ががそれですよ」。
ってリプしてて

「え?」って思って、それを思った上で読み返してみると、
「魔法使いは言ったんだ、この恋は秘密にしておくんだよ、さもなければこの子の命が危ない」

なるほど、そういうことだったんだ!っていう。

 
串田

世界観にうまくはまってますね。

松永

魔法使いが「この恋を気をつけろよ!」って言うことをささやいてくるんですけど。
魔法使いは週刊誌記者なのか、事務所的なことなのか。

 

串田

確かにそう読めますよね。
 
松永

でもあの2人は、あんまり隠さないというか、
物怖じしないのが、新しい世代だなって気がします。
昔は、隠さなきゃ駄目だろ!
っていうような所があったように思うんですが。

しかも、このヒットしてる「炎と森のカーニバル」にヒントを隠してくれている。
 
串田

本当にすごい。

松永

横浜っていうのもヤンキー感あるんですよね。
海の近くに開放感みたいなものがあって、
その海の近くにある遊園地っていうのがロケーションがばっちりだと思うんですよね。

 
串田

しっかし、これ、
「君」をきゃりーに置き換えるととんでもないことになってきますね。

 
松永

「君はここでは大スター」……。

串田

ライブ見てるんですかね。
「私をパーティーに連れ出して。」とか。
なるほどねー。深瀬さんすごいな。

 
松永

基本的に昔から、
これはSF作家とかもそうですけど、
ファンタジーってのは現実をよりリアルに表すための手段として、
用いられることがあるんですね。
例えばロシア文学でも、
ソ連が言論弾圧とか表現規制が厳しかった時代に、
マジで政府を批判したものを書いちゃうとすぐ逮捕されちゃうから、
SFにたくして書いちゃうってのはあったんですよ。
SEKAI NO OWARIさんも基本的にファンタジーを書いてるんだけど、
ファンタジーの裏側にちゃんとリアルを忍ばしてるというか、
絶対何かが何かの象徴になってるのかなと。

串田

ふんふん。
 
松永

例えば、
「森」ってものは何かの象徴であったり、
「炎」ってものは何かの象徴であったり、
何かのイメージで書いてくれてるっていうところがあって、
そうなると、「ミイラ男」は何なのかな?
「魔法使い」は何なのかな?
「悪魔のDJ」は何なのかな?
「月のカクテル」は何なのかな?
っていう。

 
串田

「悪魔のDJ」ってのもリアルにいる人っていう(笑)

松永

例えばですけど、
深瀬さんがきゃりーさんとお忍びで、
外タレのDJのパーティーみたいなところに行って、
例えばブルームーンみたいな、
そういう月の名前が付いてるようなカクテルを買って来て、
っていう実際そういう経験があって、
それがファンタジーに置き換えられてる可能性もあるのかな
っていう。

 
串田

そうなのかもしれませんね。
ブルームーン(笑)

松永

でもなんか、秋元さんみたいな人は別だと思うんですけど、
結構自分の経験ってのを2割くらい入れて、
8割くらいをファンタジーに置き換えて、
小説家もそうだと思うんですけど、
スパイス程度に自分の経験を入れることで、
リアルになってくるところはあると思うんですね。

 
串田

しっかし、
これ最後のラスサビからぞくっと来ますね。
「人ごみの中、離れないように君と手をつないだ その君の手を離さないと僕はもう決めたんだ」
とか。

 
松永

うわーー!
ってか微笑ましいカップルですよね。
ビジュアルが浮かんでくる。
こことかはもう、
普通に手を繋いだってこともあるかもしれないし、
色んな人に反対されたりとか、ファンの目があったりしても、
僕は君を離さないってことを歌ってるのかな。

 
串田

ばりばりの純愛!
 
松永

そう。
それを想像して聴いてしまうと、
歌詞が肉迫してくるというか、
決意を感じますよね。

 

串田

確かに、
決意がすごい。
強度がある。

 
松永

上っ面のこういう感じで書いとけばいいんでしょ?
っていうのが無いですね。
自分の肉感があるファンタジー。

串田

なるほどなー。
ロックバンドの系譜で言うと、
SEKAI NO OWARIってどういう所とつながって来るんですかね?
存在が独特だと思うんですが。
相対性理論とか?
 
松永

相対性理論はJ-ROCKの流れを分断し、
ヲタクとかサブカルとロキノン系を再接続したんですね。
サブカルの中に病んだ要素とか、
コミュ力が低い要素とかを持ち込んだことによって、
ロキノン系が全然違う様相を呈して来た。
今年のROCK IN JAPANの大トリがセカオワさんで、
去年の大トリがPerfumeさん
ってことで言ってしまえばドラムがいない。

 
串田

言ってしまえば。
やっぱり、EDMの世界の動きとリンクしてませんか?

 
松永

ある種、EDMですよ。
日本では所謂EDMサウンドでEDMやってますよっていうDJが人気になってる訳じゃないですが、
でも日本で言うEDMっていうものは、
ガラパゴス的に処理された結果、
ボカロであったりアイドルだったりすると思うんですが、
SEKAI NO OWARIさんが出てきたのも世界的に見れば、
EDMの亜種なんじゃないかと思ってます。

 
串田

日本的EDMかー。
 
松永

やっぱり、
相対性理論はヤンキーは入ってないんですよ。
ばりっばりサブカルな人。

 
串田

アカデミックな感じもあるし。

松永

STUDIO VOICE側の人間。

串田

毎号買ってました(笑)

松永

今の20代後半から30代にかけてのサブカルの人まだそういうことがあると思うんですけど、
今はもう、若いサブカル野郎は本当にヤンキー的なものに抵抗が無くなってくるし、
ヲタクもヤンキー的なものに抵抗が無くなってくるっていう。
一番それを促進させたのは、ヴィレッジヴァンガードドンキホーテの2大巨頭だと思ってて。

串田

ほうほう。

松永

ヴィレッジヴァンガードはサブカル版ドンキホーテで、
ドンキホーテはヤンキー版ヴィレッジヴァンガードってよく言ってるんですけど、
ヴィレヴァンとか行くと、
ちょっと意外にヤンキーぽっていうか。

串田

面白いサングラスとか。

松永

そうパーティーのノリとか、
ヤンキー感があったりするんですよね。
ドンキホーテは逆に、
コスプレ衣装とかを積極的に入れるようになってます。
でんぱ組.incとコラボをやったりとか、
AKB劇場がドンキホーテの上にあるっていうのもあると思いますけど、
ヲタクが入り浸れるような要素もあって。
だからそこはどんどんくっついてきてて。
相対性理論がJ-ROCKの世界で準備したけども、
実際にヤンキーという一大勢力を取り込んだのはSEKAI NO OWARIさんだと思うんです。
逆に、我々アーバンギャルドとか相対性理論とかの系譜で一番売れてるのは、
サカナクションさんだと思います。

串田

なるほど。
SEKAI NO OWARIのヤンキー的なところに行けてるのは、
日本では強いんでしょうね。

 
松永

やっぱり、サブカルってのは都市文化だし、
ネットで拡散されてる感はあるけど、
実質日本人の8割はヤンキーだと言われてますからね。
あとの2割をヲタクとサブカルで分け合うみたいな(笑)

串田

ハロウィンがあんだけ流行るのも、
ヤンキー層を取り込んだからですもんね。

 
松永

おっしゃる通り!
街でハロウィンの格好を普通にしてもいいよっていうのは、
混ざり合いの部分で出て来たものだと思うし。

串田

ヤンキー的な人はほとんどやっちゃうでしょアレ!

松永

やっちゃいますよね。
だんだんネットの世界とか2次元にあったものは、
現実におりて来て、街のアイコンとして取り入れられたり、
服のデザインに取り入れられるようになってきたってのが、
今ここだと思うんですよ。
ハロウィンで言うと仮装だし、
モードに秋葉系のデザインが入って来たり、
セーラーモチーフの服が流行ってきてるのとかもそうだと思いますし。
その中でSEKAI NO OWARIのリアルとファンタジーを行き来する姿勢ってのが、
ものすごく時代にしっくりくるっていう。

串田

面白いっすね。
SEKAI NO OWARIでこんなに話せるんですから。
今後も注目していきたいと思います!

次回に続きます。

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