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【私のアウトドア履歴書♯14】丹埜 倫さん(株式会社R.project 代表取締役、株式会社Recamp 代表取締役)

スペースキーの小野(@tsugumi_o_camp)です。今回のアウトドア履歴書は、未活用不動産の開発やキャンプ場運営と、幅広い事業を展開する丹埜さんにお話を聞きました。幼少期からライフスタイルとして自然の中に身を置いていた丹埜さん。アウトドアの本質的価値とは何なのか、熱く語っていただきました。


丹埜 倫(たんの ろん)さん
2006年にR.projectを設立、地域の未活用不動産を活かした合宿施設やキャンプ場の運営を展開。2019年にはスペースキーと共同出資にて株式会社Recamp設立、アウトドア事業へ本格的に参入する。現在、全国46地域でアウトドアに関わる事業を展開中(※2021年7月現在)。


原体験は、未開の地の開拓と冒険

-よろしくお願いいたします。まずはじめに、幼少期はどのように過ごしてきましたか?

生まれは東京です。当時は新宿在住で、まさに都心のど真ん中で育ちました。私の父はオーストラリア出身なのですが、田舎の古民家をリノベーションして楽しむような暮らしが好きな人。オーストラリアでやっていた開拓を日本でもするべく、平日は新宿で暮らし、週末は千葉で購入した古民家を開拓するという両極端の生活をしていました。週末になれば私も開拓を手伝ったり、山の中で秘密基地をつくったりするなど、自然の中で過ごすことが当たり前であり、生活の一部になっていました。

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(↑雑誌の表紙に起用されました)

なので、改めてアウトドアレジャーを楽しむということは少なかったですね。強いて言えば、登山をしたり、キャンプもしましたが今のようにキャンプそのものを楽しむのではなく、野営という手段としてのキャンプだったのかな。

子供の頃のこの体験があったからこそ、徐々に自分一人でも冒険に出るようになりました。特に、学生時代は自転車でのツーリングや川下りにハマっていて、どちらもルートを自由に決めたり、行ったことがない所を進むという“冒険感・開拓感”が性に合っていたなと。その流れでトライアスロンもしましたし、川下りしながら釣りもしたり。自然の中でいろいろ遊んでいましたね。

-いわゆるティーンエイジャー世代になると、アウトドアから距離を置く人も多いですが、ロンさんは逆ですね。

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自然の中にいようと意識したわけではなく、引き寄せられていったというか。やはり、子供の頃に体感した、自然の中で過ごした心地よさがあったからかもしれません。ライフスタイルの一部として、すでにアウトドアがあったから。

逆に、社会人になって都心に住むようになってからは、アウトドアに触れる時間がグッと減りました。インドアスポーツのスカッシュを始めたのもこの頃(日本代表として世界選手権に出場した経験もあります)。当時はトレーダーの仕事をしていて、1日中パソコンの前で過ごすような生活でした。週末に時々千葉に行くくらいで、この頃が人生で最もアウトドアと距離があった時期になります。

-そんな時期を乗り越えて、R.projectを立ち上げられました。合宿事業に決めたのはなぜですか?

地図や間取りを見るのが好きで、不動産に興味があったんです。特に地方の不動産に興味があって、地方には活用されて収益をあげている不動産もあれば、全く手付かずで放置された未活用の不動産もある。その評価のギャップに興味を持っていたのが前提としてありました。合宿所やキャンプ場がまさにそうですよね。管理・運営としてきちんと手を加えれば、その価値や魅力は何倍にも大きくなる。その地域に隠れた資産を磨き上げて、価値を再生してみたい。旧千代田区保田臨海学園(現:サンセットブリーズ保田)との縁も重なり、R.projectの立ち上げにつながりました。

合宿事業をはじめるようになると、必然的に郊外や地方に赴く機会が増え、アウトドアに触れる機会も増えました。ビジネスを介してアウトドアに立ち返り、また違った視点からアウトドアを楽しむという現在に至っています。

-やっぱり引き寄せられているのかもしれないですね!ロンさんにとって、アウトドアの魅力とはなんでしょうか。

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単純・直感的な楽しさはもちろんありますが、本質的な価値は何なのか個人を軸として考えた時、“不確実性”が思い当たりました。特に、私が好むツーリングや川下りなどのアクティビティは、次に何が起こるかわからないワクワク感があります。ルートやペースを決め、状況を読んで、自分で考えて進んでいくことの楽しさ。不確実に対処していく楽しさがある。実は私は人が決めたルールに沿って行動するのは苦手なので(笑)、失敗も含めて自分で決断・行動できることに価値があると感じています。

-自然という不確実を楽しむことが、アウトドアの醍醐味ですね!


アウトドアが与える影響

-近年では合宿事業に加えてアウトドア事業にも注力されていますが、アウトドアが他事業に与える影響などはありますか?

今やっていることとして、合宿事業にアウトドアのエッセンスをプラスする試みを実践しています。例えば、合宿プランの中にキャンプファイヤーを追加してみるなど、そういった機会をできるだけ盛り込むようにしています。

スポーツ合宿をする目的の1つに「チーム力強化」があります。合宿を通じて普段では得られない気づきからコミュニケーションを図り、絆を強くする。アウトドアにはその効果をより高める力があるのではないかと私たちは考えています。焚火がよい例で、焚火を囲んでいるとより深い話ができたりコミュニケーションが強まった経験がある人も多いのではないでしょうか。

ストレス軽減、学習効果など、チーム力強化以外にもアウトドアには様々な効果が期待されています。実際に、ここ最近ではアウトドア目的でのお問合せも増えています。アウトドアに触れる機会を多くの方が望んでいる現状から見ても、様々な面での影響を感じています。

-たしかに。アウトドアをプラスすることで、合宿の目的も変わってきそうです。運営するスタッフさん側の意識の変化などはあったのでしょうか?

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合宿事業はコロナの影響を受け、あまり動いていないのが実際のところです。ただ、若いスタッフはアウトドアという新たな側面に、ワクワクしているように感じています。

合宿とアウトドアの大きな違いは、合宿はグラウンドが目的=価値であるのに対し、アウトドアはその地域資源そのものが価値。地域の自然の中で遊び、地域の木材で焚火をして、地域の食材をいただく。地域とのつながりをもって、この地域をより好きになってもらえることが、アウトドアの大きなメリットです。またこの地に、わざわざ足を運んででも来たいと思ってもらえる、そこに価値を感じてほしい。地域の誇りとなる施設となるために何ができるか、スタッフにはそういった意識をもって関わることを期待したいです。

-地域活性化にもつながる、意義ある仕事ですね。


アウトドア業界に思うこと

-アウトドア業界について思うことを聞かせてください。

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アウトドアの本質的価値と、これから時代に必要とされる価値観が合致してきたなという印象で、とてもポジティブに感じています。コロナによってより加速し、それに伴ってテクノロジーも進化しました。リアルに対する価値が高まり、アウトドアに対するニーズの見直しが飛躍的に進んでいる。各産業がアウトドアに期待し注目している現状は、とても興味深いなと。

とはいえ、そうなると競合も増えてくるでしょう。私たちとしては、コンセプトや理念をしっかりと発信し「Recampに行きたい!」と思ってもらえる工夫をしてきたいと考えています。以前と比べてキャンプやアウトドアは盛り上がりを見せていますが、観光産業と比較すると規模はまだまだ。アウトドア市場はあってまだないようなものなので、市民権を得られるかどうかはこれから。競合となる関係者と手を取り、業界が協力して社会認知を高めていく取組も必要とも感じています。

-まずは現在のブームを文化にすることが大事ですね。

盛り上がっているように見えて、実際は土日祝しか稼働していません。平日と休日の差を埋め、稼働率を上げていくことが課題です。それには、企業研修や合宿、課外教室など、レジャーではない側面からアウトドアを組み込んでいく仕組みが必要。学校教育のカリキュラムとしてのキャンプなど、特に教育の分野でアウトドアがベースになれば、文化として定着しやすくなるかもしれないですね。

また、個人的にブームとは本質と違う部分で騒がれていることが多いように思います。キャンプもSNS映えを狙ったものであれば、冷めるのも時間の問題でしょう。ただ、キャンプの本質は“発見”や“達成感”が得られること。「Recamp」では、この本質を大事にしたいと考えています。キャンプで何かに気づき、学び、工夫する。そして達成し、成長する。この想いを大事に体験価値を提供していきたいです。

-その上でスペースキーに期待することは何でしょうか。

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スペースキーさんの強みは何と言っても、発信力です。アウトドアが好きな人たちが、ユーザーさんに寄り添って良質な情報を届けているという実績がある。スペースキーさんが伝えるからこそ、その情報は価値になります。今後、自治体や各産業との取組が増えていく中で、スペースキーさんと一緒にやれるのはとても心強い。ぜひ力を貸してもらえると助かります。

また、発信力のあるスペースキーさんだからこそ、レジャーではないアウトドアの価値についても発信してほしいと思っています。教育や企業活動など、アウトドアをしない人たちにとってもヒントとなるような記事であったり、アウトドアの新たな取り組みなど。それにより、他産業や業界への期待感がより高まるはずです。

-スペースキーだからこそ伝えられることもあるのかもしれないですね。


今後の目標

-今後やってみたいアウトドアはありますか?

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子どもとできるアウトドアを増やしていきたいですね。海が近い所に住んでいるので、サーフィンとか。ツーリングなどの旅要素のあるアウトドアにも挑戦してみたいなと考えています。

-ステキですね!アウトドア×ビジネスで挑戦してみたいことはありますか?

思ったことは大体挑戦してしまうので……(笑)。アウトドアは道具によって楽しみ方がガラッと変わるってことがありますよね。買うにはハードルが高い、買うほどではないけれどあったら楽しいだろうなというギアを「Recamp」で提供してみるとか。アウトドアの新しい楽しみ方を気軽に体験できるようなサービスをやってみるのもおもしろそうだなと考えています。

-例えばどのようなギアがありますか?

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最近発見したのは、薪風呂です。薪風呂があると、雨のキャンプでもかなり楽しめますよ!持ち運びも可能なので、ゴムボートに積んで川下りを楽しんで、川辺で薪風呂なんて楽しみ方もできます。これはかなりオススメです!

-すごい!おもしろいですね!

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R.projectとしては、人生の中で何度もR.projectのサービスで楽しんでいただくことが理想の姿です。日帰りのバーベキューから長期の合宿まで、様々なニーズに対応できる企業力が備わってきました。今後は教育をはじめ、もっとライフスタイルに溶け込んだサービスで、何度も違った形でアウトドアを楽しめる機会を創出したい。子どもから大人へ、そしてまたその子どもと一緒に、時を重ねてランダムに楽しめる。そういった持続性も意識してアウトドアを提供していけたらいいですね。

-アウトドアを楽しむ1人として、その理想の姿に期待感が高まります!ぜひ一緒にアウトドアを盛り上げましょう。ありがとうございました!


■ お知らせ ■

・RECAMP山中湖

2021年7月21日に「RECAMP山中湖」がオープンしました!全サイトから富士山が眺められる最高のロケーション、フラットな地形で初心者も設営がしやすいことなどがポイントです。ぜひお越しください!

・館山ファミリーパークキャンプ場 by RECAMP

千葉の有名観光施設「館山ファミリーパーク」がキャンプ場としてリニューアルしました!2021年7月22日プレオープン、22年3月本オープンを目指してただ今準備中です。南国の雰囲気を感じながらキャンプを楽しみませんか?

・タカオネ

全く新しい高尾山の楽しみ方を提案する施設「タカオネ」も2021年7月にオープンしました。“山で過ごす”ことをメインに、カフェに立ち寄るようなカジュアルな山での過ごし方を見つけることができる施設です。