ルール展じゃなくてルール?展。『ルール?展』(第2回空間タンブラー)
「タンブラー=ぶらりと探索する人」
タンブラー片手に颯爽と歩くスマートな女性になりたい私が、
自分の好奇心だけはしっかりと握りしめ
面白い「場所」「空間」をぶらり探索します。
「ものを盗まない」「赤信号のときは渡らない」
「観劇中は静かに」「エスカレーターで左側に立つ」「右足から靴を履く」
みんなが守らなければいけない法律から、いつもの無意識な癖まで、世界はさまざまな「ルール」であふれていますよね。今回はそんな、「ルール」をテーマにした展示『ルール?展』に行ってきました。
1. たまにはゴージャスな空間を
会場は、六本木 東京ミッドタウン内にある21_21 DESIGN SIGHT。
初めてのミッドタウンだったので、他の建物も寄ってみました。
(↑会場に一番近いガレリアという建物。
ザ・大資本って感じ...!)
吹き抜けが開放的かつ上品な空間。
でも、正直言うと、私には高級すぎて、いるだけで緊張してしまいました......。
さて、そんなミッドタウンですが、ビル群の周りにはガーデンエリアが。
21_21 DESIGN SIGHTもそのなかにあります。
これまた洗練されたデザインの建築物…!
ではさっそく中へ入りましょう
2. 余白のある空間
中に入ると、会場のなかはこんな感じ。
”木の箱”が基調となっています。
(会場内写真撮影OKとのこと)
建物自体は無機質な感じがしますが、木の素材があることで、シンプルかつ柔らかい印象の空間になっていました。そのシンプルさが、ルールについて自由に考える余白を生んでいたのかなと思います。
さて、展示を見る前に『ルール?展』に来てまず初めにすることがあるので紹介します。
それは、何種類もあるスタンプの中から好きな2つを選び、自分のパンフレットに押すこと。
このルールを実行しながら、展示を巡ろうという仕かけです。
ただし、スタンプを押してみないと、ルールの内容はわかりません。おみくじみたいでワクワクしますね。
ちなみにこれも、《鑑賞のルール》という名前の一つの作品です。
ただ、実はこの日、私は足を怪我していて「大きな歩はばで歩く」が出来ませんでした。まさか、よりによってこんなルールに当たるとは。
でも、そのおかげでいろいろと気づかされたことがありました。その話は最後の章で。
3. 面白かった展示3選
では、いよいよ展示を見ていきましょう。
展示は全部紹介したいほど面白かったのですが、ここでは、そのなかでも特に印象に残った3つをご紹介します。
●面白かった展示1:鬼ごっこのルール
隠れ鬼、氷鬼、ドロケイなど、「鬼ごっこ」っていろんな種類がありますよね。そんないろんな鬼ごっこを、ルールを基準にチャート式にまとめたのがこの展示です。
一つ一つを見ると有名なものばかりですが、こうしてまとめると本当にたくさんありますね!
子どもの頃これ全部使いわけてたと思うと、我ながらすごい。笑
でも、たしかに、遊びながら自分たちで新しくルールを作っていくのって楽しいから、増えていくのもわかります。
それに、いま日常的に守っているルールもこんなふうに可視化してみると、きっと膨大な量になるんだろうなぁ。
また、チャートを見ていると、遊びのルールには遊びの難易度を調整する機能があることにも気づかされました。例えば、UNOの「◯◯縛り」みたいに。
日常生活では制約が多いほど窮屈になりがちだけど、遊びは制約があると楽しくなる。ってなんか面白い。
●面白かった展示2:京都人力交通案内「アナタの行き先、教えます。」
超複雑に入り組んでいる京都のバス路線。
それを「ヘンタイ」的な記憶力で記憶し、いろんなバス停で無償で乗換案内をしている二人の男性がいます。この展示は、その活動を紹介したもの。
(↑京都のバス路線図。)
「へ〜こんな活動してる人がいるんだ」と単純に勉強になったのですが、はじめは「ルールとどう関係するの?」とも思いました。
展示にあった説明を読んでみると......
「街での活動の許可は複雑に管轄が分かれ、利益を目的としない彼らの活動は、それらの狭間にあります。ルールのグレーゾーンに朗らかにアプローチする彼らの活動は、蔓延する自主規制が生きづらさを生む社会を緩めることの大切さを教えてくれます。」展示説明文より
とあります。
なるほど。つまり、路線と同じように管轄も入り組んでいて、二人はそのルールに挟まれて活動しているんですね。
とすると、もし決まった時間に決まった道しか走らないバスの路線も一つの「ルール」と捉えるなら、(路線という)ルールを熟知した二人が、(管轄という)ルールに挟まれながら活動をしているということになります。
一見するとルールとの関係がわからなかったものが、実はそんな面白い構造をしている。そこが気に入った展示でした。
●面白かった展示3:会場ルール変更履歴
『ルール?展』のルールはどのように変化したのか?
これは、その記録を書き出し、掲示板に貼り出したもの。常により良い空間をつくるために試行錯誤する、その過程を可視化した展示です。
これは、ほかの展示と比べるとあまり展示っぽくない展示かもしれません。でも、開催期間中、ルールが追加・変更される度に更新されるので、未完成で上書き保存な展示って面白い!と私は思いました。
そして、貼り出された文章はあくまで事務的なのですが、そのなかにはコロナ対策と体験型展示との両立の難しさが垣間見えます。まさに“いま”のルール作りのあり方を体現している展示でもありました。
今後も更新されて、開催終盤になれば、より興味深い変遷が見えそうですね。
というわけで、以上、面白かった展示3つでした!
このほかにも、選びきれないほどたくさんの面白い展示があり、なかには長い行列ができていた体験型展示もあります。
まだまだ開催期間中なので、ぜひ自分なりのお気に入り展示を見つけてみてください!
4. 守れないルール
最後に、私が《鑑賞のルール》(「大きな歩幅で歩く」)を守れなかった話をして終わりたいと思います。
というのも、私が今回の『ルール?展』で一番印象に残ったのが、実はこの《鑑賞のルール》だったからです。
この日、私は足を怪我していて「大きな歩はばで歩く」が出来ませんでした。怪我なので一時的なものではありますが、「みんなが守れるルールを自分は守れない」という状況は、私にとって新鮮でした。
そして、ふと「じゃあこれが現実の社会だったら?」と考えてみたんです。
身体的、精神的、経済的、いろいろな理由でどうしてもルールを守れないということは現実の社会でも起こりうることです。
そんなとき、「守れない人」はどうなるか。
場合によっては、なんらかのペナルティが課されることもあるでしょう。守れないことによって誰かが損をすれば、それを償うことが求められます。
でも、「守れない人」にとって、ペナルティがあるかないか、重要なのはそれだけでしょうか。ペナルティが無ければ、自分が「守れない人」であること自体は何も問題ではないのでしょうか。
少なくとも私は違いました。
「大きな歩はばで歩く」は守れないからってなんのペナルティもないルールです。
それでも、私は守れなくてモヤモヤしました。今の自分の不自由な部分を突きつけられたような気がしたからです。
つまり、「ルールがある」ということはそれだけで、誰かを線引きする力になる。
それが今回、最も強く印象に残ったことでした。
たしかに、社会にルールは必要です。
でも、ルールを自然で当たり前に守れるからといって、誰のための、なんのためのルールかを見失ったり、いろいろな事情で「守れない人」の存在を想像できなくなったりすれば、その線引きの力だけが残って、誰かを疎外してしまうことになります。
だからこそ、ルールに対して「?」を持ってみることが大事なのではないか。
「ルール展」じゃなく「ルール?展」なのは、そういう意味でもあるのかなと思いました。
ちなみに、これまでの私にも、こんな風に「ルールを守れない」という状況はきっとあったと思います。でも、展示という形で立ち止まって考えられる空間にいられたからこそ、気づけたことがたくさんありました。
なかなかお出かけを薦めにくい状況ではありますが、【11月28日まで】開催しているので、ぜひ行けるタイミングで行ってみてほしいと思います。
以上、第2回空間タンブラー『ルール?展』でした。
最後まで読んでいただきありがとうございました。次回もお楽しみに!
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