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本屋さんで旅してきました!『本屋を旅する BOOKSHOP TRAVELLER』(第4回空間タンブラー)

秋、楽しんでますか?

私はまず「食欲の秋」から満たす派なので、とにかくかぼちゃ味のスイーツを見つけては食べてます。あとはやっぱり「睡眠の秋」ですよね〜。
え、運動の秋? まぁね、それもね、いいですよね……。

空間タンブラー第1回の記事でも、「もっと季節感を大切にしたい」という話をしたのですが、今回ご紹介する場所は私なりに「秋」を意識した場所。
秋のなかでも「読書の秋」ということで、ずばり「本屋さん」です。

今回訪れるのは、本屋を旅する BOOKSHOP TRAVELER

本屋を旅するってどういうことでしょうか?
ひょっとすると「旅行の秋」も叶えられるかも?

さっそく行ってみましょう!

1. 下北沢の北のまち

BOOKSHOP TRAVELERは下北沢駅(京王井の頭線・小田急線)から徒歩2分の場所にあります。

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(↑小田急)

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(↑京王)

店の入れ替わりが早く、駅の改装や再開発もあって変化が激しい下北沢。
駅から見て南側のまちには、本多劇場や駅前劇場など数多くの劇場があり、「演劇の街」としても知られていますよね。

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(↑南側のまち)

一方、北側のまちは個人商店が多め。こちらも賑わっていますが、南に比べると落ち着いたお店が多いように感じます。
今回のブックショップトラベラーがあるのは、北側のまちです。


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(↑北側のまち)

BOOKSHOP TRAVELLERへは、駅を出てこちらの北側の方へ進みます。

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すると、すぐにこの通りがあるので、ここを突き当たりまで真っ直ぐ進み、

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左に曲がって、この坂を上がります。
一つ目の角(ここ↓)をまた左に曲がると、

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看板があります。この看板がBOOKSHOP TRAVELLERの目印!
階段をあがれば…

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BOOKSHOP TRAVELLER到着です!
さっそく
中に入ってみましょう!!

2. 「なにこれ?」なものに囲まれた空間

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お店に入って手前側の3部屋はギャラリースペースで、同じビルの1階にあるバロンデッセ ラテ&アートさんのギャラリーでもあるみたいです。美味しい珈琲とアートと本を同時に楽しめるなんて素敵ですね。

上の写真に写っているのはその中の一部屋。取材時はちょうど「古本大放出フェア」開催中だったため本がたくさん並んでいますが、絵画や写真などアート作品の展示が主になっているそうです。

そして奥側の本屋スペースに行くと、

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ボックス状の本棚が並んでいます。

実はこの棚一つ一つは、BOOKSHOP TRAVELLERが個人や本屋さんに向けて貸し出しているもの。ここに並んでいる本は全て、それぞれの棚の「ひと箱店主」が選書した本なんです。

つまり、ボックスサイズの小さな本屋さんの集合体がこのBOOKSHOP TRAVELLER。
だから、ここに来るだけで一度にいろんな本屋さんを「旅する」ことができるというわけです。

棚を借りているのは、本屋さんだけではありません。

当店は店主とひと箱店主による手作りのボックス本棚を1箱ずつお貸ししています。
借りているのは本屋(実店舗・無店舗問わず)、出版社、作家(プロ・アマ問わず)、デザイナー、アーティスト、本好きなど
「東京での本屋活動の拠点」「実店舗を持つ前の予行演習」「広報宣伝の場」「本好き・本屋好きとの交流を求めて」
それぞれの目的のために様々な本屋が当店に出店しています。
(BOOKSHOP TRAVELLER HPより)

売っているものも、新刊から古本、絵本やzine、雑貨までさまざま。それぞれの棚の個性が光っています。

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BITE棚

(↑私たちBITE編集部もひと箱店主です)

ここにしか置いてないものもたくさんあり、「なにこれ?」と、つい手に取ってみたくなるような、ワクワクに囲まれた空間です。

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3. 店主はBOOKSHOP LOVER

今回ももっとトラベラーについて知るために、店主の和氣正幸さんにお話を伺いました。

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まず、どうしてこのような形態の本屋を開くことになったのでしょうか?

ずっと本屋を紹介するというか、本屋を応援する活動をしてたんです。そんな活動をしている中で、1階のカフェ(バロンデッセ ラテ&アート)を経営しているオーナーと出会って、本屋をやらないかと誘われたんです。そこで、自分が本屋をはじめるなら、と考えたときずっと本屋を紹介してきた人間が、普通の新刊書店や古書店をやっても仕方ないなと思って。それなら「本屋を紹介する本屋」はどうだろうと。(和氣さん)

和氣さんは、10年ほど前から「BOOKSHOP LOVER」としていろいろな本屋の魅力をブログや著書などで紹介されている方。同じ
棚貸しの本屋はほかにもありますが、「本屋を応援したい」という思いがベースとなっているのがこのお店の特徴です。

しかし、そもそもなぜ本屋がお好きなんですか?

 大学時代ブックオフでバイトしてたときに、そのブックオフがちょっと変わったところで。大学の近くだったこともあって、デリダとかドゥルーズとか現代思想系の本とか、よくわからない職業の本とかもいっぱい買い取っていたんですよ。そういう全然知らない本がいっぱいあって。そこで、なんかめちゃくちゃ知らないことがあって楽しいぞと思って。

なるほど、本屋好きの根本にあるのは知的好奇心なんですね。
私もこのBOOKSHOP TRAVELLERに来ると、知らない世界に出会えてワクワクします!

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ところで、和氣さんのBOOKSHOP LOVERとしての活動は、「ある空間の魅力を紹介する」という点で空間タンブラーと共通していますね。本屋に行く時に注目して見るポイントがあればお聞きしたいです。

 良さはそのお店ごとにあるからいっぱい言えるんですけど、あくまで好きだからやってるし…だから、良い・悪いとかはわからない。
 あ、でもカフェとかでもあるでしょ?「見た目だけおしゃれにしている」みたいなとこ。それなのにトイレに行ってみたら汚いとか、なにこれインスタントコーヒーみたいな味、とか。 すごい嫌な気分になるんだよね。

わかります。特にトイレは超重要。

 本屋がそれ(見た目だけ)っていうのは基本的に少ないですけどね。(本を)選ばなくちゃいけないから。でも、だいたい選書ですね、見るのは。何を置いているか。その上で、空間についてどういう風に考えているのか。「ここはとにかく本を並べたい、本を売りたいんだ」とか、カフェが入ってくると「居心地どうかな」とかっていう見方かな。

やはりまず選書なんですね。本屋の場合、本を選ばないといけないからこそ、見た目以外のところでお店ごとの個性がはっきり出そうです。

また、良さはお店ごとにあることや、見た目だけおしゃれなのはちょっと…というのは空間タンブラーをやる上でも大切にしたい感覚です。
たしかに内装やインテリアなどの見た目は、そこにいるときの体感に大きく影響しますが、きちんと質の良いものを提供していたり、お客の立場に立って快適さを考えていたり、そういった「中身」が、結果的に「この空間が好き!」という気持ちを左右するんじゃないかと思います。だから、その空間の魅力を人に伝えるときも見た目の説明だけでなく、できるだけ「中身」に触れながら伝えることがすごく大事だと感じました。

4.とにかく本屋を応援したい!

さて、いろいろな本屋を巡られてきた和氣さんですが、ご自身で本屋をするにあたって、空間づくりで特に気をつけたことはありますか?

 かっこよすぎないようにしようと。入りにくくなるから。ださくするわけではなく、かっこよくしすぎない。この空間は元々ギャラリーだったこともあって何もしなくてもかっこいいんです。だから、キメすぎない、っていうのを結構大事にしてて。例えば、アンティークの本棚とか入れたらもっとかっこよくなるんですよ。でも、それはちょっと違うなって思ったんですよね。(和氣さん)


たしかに、私もあんまり洗練されすぎた空間だと入りづらいし、いざ入っても自分がここにいていいのか…?とつい気になってしまいます。そうなると「本屋を紹介する」という目的からも少しずれてしまいますもんね。

これは私の体感ですが、BOOKSHOP TRAVLLERの店内は明るくて温かみがあって、「素敵な場所に来た」という感じはありつつ気は張らなくていい、ちょうどいい空間だと思います!

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それでは最後に、これからBOOKSHOP TRAVELLERをこんな場所にしたいということがあればお聞きしたいです。


 海外文学好きな人がもっと来たくなるようにしたいなとか、短歌好きな方々は来てくれるようになったから俳句好きな方にも来ていただきたいだなとか。あと、ギャラリーの場所でもあるからもうちょっとアートを強めたほうが良いし……やりたいことがいっぱいある。
とにかく本屋を応援していきたいんです。本に関わる人たちを応援していきたいので、(アイデアは)そのために必要なことは何?っていうのの一つ。(和氣さん)

なるほど。「本屋を応援する場所」としてこれからもどんどんアップデートしていくイメージですね。

実は今年の春ごろ、私はBITE編集部として編集長園田さんと一緒に、ここBOOKSHOP TRAVELLERで1日店主(ひと箱店主限定)をしたことがあります。そのとき、和氣さんはいつも本の並びを整えたり、目立つところに置く本を変えたり、新しく張り紙を作って貼ったり、常にちょっとづつちょっとづつ何かを調整し、改善していました。

今回インタビューさせていただいて改めてわかったのは、それも全て「本屋を応援したい」という目的のためにやっていたことなんだということです。
一つの明確な目的のために、ありとあらゆることを常に考えて動かし続けていく。ここにあるたくさんのワクワクとともに、そんな和氣さんの姿も、BOOKSHOP TRAVELLERの魅力の一つとして伝わればいいなと思います。



最後にもう一つだけ!
今、BOOKSHOP TRAVELLERにぜひ見に来てほしいものがあります!

それは「文学カレー」!

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文学の中に出てくる料理をアレンジして出す古本酒場、コクテイル書房とコラボレーションして作られたこの「文学カレー」。
晩年を下北沢で暮らした「日本近代詩の父」萩原朔太郎の『雲雀(ひばり)料理』という詩をモチーフにして作られたそう。

雲雀は無理なので鶏の手羽元を使い、朔太郎は酒好きなので出身の前橋のお酒を香り付けに使用し、かつ、二日酔いのときに食べても「5月の朝(朔太郎の詩の中にあるフレーズ)」のようにすっきりした気持ちになれるように仕上げました。(和氣さん)

私も一つ購入し、「レモンをかけると美味しい」とのことだったのでレモンをかけて食べました。カレーといえば香辛料を足して複雑にしていくものですが、これはできる限りシンプルにしたそうで、その通りほんとうにすっきりした味でした。手羽元がごろっと入っていて食べ応えもあるし、レモンをかけるとより爽やかさが増して美味しかったです!ここでしか買えない味なので、ぜひぜひ味わってみてください!!

あれ?一度に「読書の秋」「旅行の秋」そして「食欲の秋」まで満たしちゃいましたね。

というわけで、第4回空間タンブラーは「本屋を旅する BOOKSHOP TRAVELLER」でした。インタビューに答えていただいた和氣さん、そして

最後まで読んでいただいた方も、ありがとうございました!次回もお楽しみに!

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