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断食道場インタビュー①信貴山断食道場その2

前回の記事の続きです。


どんな人が断食に来るのか

安井:
断食道場に来る人って、様々だと思うんですが、傾向的なものってあるんでしょうか?先ほど僕が道場に到着した時も若い女性の方が2名、滝がある道に向かって散歩していているのを見みました。

知仙さん:
昔はダイエット目的でいらっしゃる女性の方が多かったですが、そういった方たちは、今はホテルのファスティング宿泊などに行かれてるのだと思います。最近だと、割合として一番多いのは4、50代の男性でしょうか。成人病対策や、転職のタイミングで空いた時間などを利用して、または病気をされて入院前後の体質改善などを目的とされていらっしゃることが多いです。

リピーターのお客様は2泊のみの宿泊を、3ヶ月に一度くらいのペースで実施されたりもしますね。

安井:
2泊だけだと準備食などを食べたりすると、断食の時間が結構短くありませんか?

知仙さん:
そういった方々は、自分で断食前後の食事を調節して、入場後にはすぐに断食に入られます。

断食に向いていない人

安井:
断食に向いていない人っているんでしょうか?

知仙さん:
はい、いろいろなケースがありますが、まずは虚弱体質でエネルギーがない人。そういった人は食養生をしていただきます。その上で、どうしても断食をしたいという方には半断食をしてもらってます。

安井:
なるほど、エネルギーがないのに断食をすると生命力が弱まってしまうんですかね。半断食ってどういう内容なんでしょうか?

知仙さん:
7号食と呼ばれる食養法で、玄米にごま塩を振りかけたものを回数多く噛んでいただく方法があります。半断食は、お茶碗に三分の一ほどの量の玄米を1日に2回食べていただきます。一口を親指の先くらいのサイズにして、この道場では可能な限り一口200回噛んで飲み込んでもらいます。

安井:
最近僕の友人が、7号食を一週間実践したと言っていました。本断食より日々の食生活に取り入れやすそうですね。

知仙さん:
他には末期のがんを患われている方だったり、症状のひどい病気の人はお断りしています。胃が悪い人も断食しない方がいいですね。そういった方々は、事前の予約の時点でお断りします。

安井:
そうか、断食がなんでも治せる、というわけではないんですね。たまにそういった主張をみたりするので、ちょっと気になっていました。胃が悪い人はなぜ断食に向いていないんでしょうか?

知仙さん:
経験上の話になるのですが、例えば胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの病歴がある方は、それが10年前であっても何かしらの症状が出てくることが多いです。

予約の際に申告をせずにいらして、胃の調子を悪くされると、嘔吐や水も受け付けにくくなるんです。

胃の悪い人は、断食はせずに食養生をしてもらいます。

安井:
胃の悪い人は要注意ですね。話を聞いていて思ったのですが、病気や不調のない元気な人は、断食をしても意味がないのでしょうか?

知仙さん:
実際にあるのが、自身で「健康」と思っており断食の必要性を感じていない人がパートナーの方に連れられて一緒に入場するケースです。自分では健康と思っていても、実際に断食してみると良かったということはよくありますね。

断食すると、気分転換や代謝を上げるという効果だけでなく、普段当たり前のように意識せず取っている食事や、健康な日々の暮らし、仕事につくことができているということへの感謝、ありがたい気持ちが生まれます。

安井:
断食は身体だけの話ではないんですね。その他に、断食中の注意点などはありますか?

知仙さん:
断食中に気をつけてもらうように指導している内容として、急な身体の動きをしないようにというのがあります。

断食中は血糖値が下がりやすく、脳貧血になりやすいため、急に立ち上がったりすると立ちくらみが起こってしまう可能性があるんです。

宿便について

安井:
そういえば、身体の中に溜まった毒素が出ると言われている「宿便」ってあるじゃないですか。僕も含めて気になる人も多いと思いますので、詳しく教えてもらえればありがたいです。

知仙さん:
まず、腸にはたくさんのシワがありますね。そのシワとシワの間に、こびりついて剥がれない苔のようなものが付着しています。これを「宿便」と言います。 これは、普段の排便や下剤を使って出しても排出されません。

断食することで心身の活動エネルギーを外から取ることができないため、自分の体の中に貯えられた栄養から取ることになります。筋肉や内臓の隅々から栄養を吐き出すため、血液は身体全体にわたってくまなく循環することになります。

ただ単に身体に貯えられた栄養だけでなく、身体の隅々に滞留していたさまざまな毒素も引き出されることになり、体の隅々まで大掃除ができることになります。特に胃腸は食物が入らないため収縮し、胃の拡張や胃下垂も自然に回復します。腸管も収縮することにより、腸壁に長年付着していた宿便は段々と剥がれて取れます。

安井:
そういうメカニズムなんですね。宿便が出るタイミングっていつなんでしょうか?

知仙さん:
宿便が出るタイミングは個人差がありますが、断食後に食事を始めて胃の活動が再開された時です。

安井:
そうなんですね。長期的な断食をした事がないので、宿便については全然知りませんでした。自分自身で体験してみないとわからないことが多そうなのでやってみます。

200回噛むことについて

安井:
今いる静坐室の壁に、200回噛むことの重要性を書いた紙が貼ってあるのが前回入場させてもらった時に印象的でした。200回って結構回数が多いと思うんですが、噛むことについてもう少し知りたいです。

知仙さん:
まず、200回噛むというのは、あくまで食物をしっかり細かくするのが目的です。噛み方が重要で、顎を大きく開けずに細かく動かして咀嚼します。(目の前でカカカカと、歯を噛み合わせる動きとテンポをお見せしてくれました。)

安井:
なるほど、大事なことは食べ物を細かくするということなのですね。そのペースでの咀嚼だと、200回噛むというのもそこまで難しくないように感じました。他に食物を噛む際に気を付けることはありますか?

知仙さん:
たくさん噛んでいると、唾液が出てきて食べ物を歯ですり潰すのが難しくなってきます。なので、舌と上顎を上手に使って食物を口内に残しながら、唾液を飲み込むというのが必要になってきます。

安井:
たしかに!それは前からずっと疑問だったんです。クジラは海水を歯の隙間から出して食べ物を口内に残すというのを聞いたことあるのですが、それに近いように感じますね。

知仙さん:
他には、一口のサイズを小さくして、噛むときには一旦箸を置くというのが重要です。一口分を親指の先ほどにして口の中に入れ、その後は箸を置いて噛むことに集中するといいですね。

安井:
一旦箸を置くのはかなり大事な気がします。箸を持ったままだと次の一口に考えが引っ張られてしまって、今口の中にある食べ物を集中して味わうことができないことになりやすそうです。箸置き持ってないので買ってみます。

本日は取材をお受けいただき、誠にありがとうございました。

取材を終えて

断食を自分でしたり、信貴山断食道場でさせてもらったりした経験はあったのですが、インタビューを通して想像をはるかに超える断食の奥深さを知ることができました。ここで伺った話を周囲の人に話すと、多くの人が持っている断食に関するイメージが実情とかなり距離があるように感じます。僕の話を聞いて、断食のイメージが変わり、やってみたいという人が増えています。現代の日本人に合った心身のリセット方法として、断食はとても有用だという気持ちが強まりました。

最近流行りのファスティングで断食の認知は広まっていますが、世界には宗教的なものや健康目的の断食技法が数多く存在します。人類が実践してきた断食の技法を少しずつ、体験しながら学び、紹介したいと思いました。

施設情報

名前:信貴山断食道場
設立年:1959年(昭和34年)
宿泊設備:個室、2人部屋、共同トイレ、共同浴場(1日おき、宿泊者5人以下の場合は1人ずつ入浴)
定員:30人程度

食事:正食(マクロビ)に基づく玄米菜食(減食、回復食期間)
断食中:具なし味噌汁・出汁片栗、出汁葛など
希望者に提供:リラックス体操、静座(読経等)
その他:WiFi利用可能(別料金)
注意事項:金銭は入場時に道場に預ける

近隣施設情報:朝護孫子寺、開運バンジー、信貴の湯

住所:奈良県生駒郡三郷町信貴山西2-102
電話番号:0745-73-2507


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