short story series『知らない』  person 03

作・木庭美生

澪奈です。高木澪奈。17歳。
2番のりばの8:00の電車で登校します。いつもと同じ電車で、だいたい3駅進んだくらいで人がかなり増えます。みんな下を向いて携帯を見るか耳にイヤホンをつけて音楽を聴いたりしてます。もうそれが当たり前のようになっていて、でも私はそれに抗いたくて。1人だけ本を見つめる。利き手で片手に本を持ち、もう片方の手でページをめくる。周りの人から見える私を想像しながら本の中身なんてどうでもよくて自分のことばかり考えています。べつにナルシストだとかそんなんじゃないです自分がかわいいと思うわけじゃないけれど、私いま抗ってるなと思ったりはします。かっこよく見えていることを願いながらページをめくります。恥ずかしいですよね。でもきっとみんなそんなもの。周りの人は私になんて興味はないけど意外と見てる。だから見え方に気をつかう。余計なことばかり考えているけれどそれもきっと必要なことだと思います。みんなが何を考えてるのか知らないけどたぶんたいしたことは考えてない。私もどうでもいいことしか考えてません。水曜日にだけ見る眠そうな女の子も、いつも仲良しの男友達と一緒に乗ってる男の子もきっとみんなそんな変なことばかり考えてる。変ですよね。お母さんが作ってくれたお弁当より、好きな彼の新品のスニーカーより自分のことばかりを考えます。

2018年10月24日

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