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台湾ドラマ Silence 〜深情密碼〜

 さて、久しぶりの台湾ドラマシリーズです。このドラマ、何と視聴開始から完走までに丸2年かかってしまいました(Gyaoでの配信停止→大学受験→アマプラに加入して視聴再開→中国語字幕が表示できないので集中できず→YouTubeでの配信を発見→何とか完走という流れです笑)。 

 13年間初恋の思い出を抱えて生き続けた男女の物語という言葉にしてみれば結構ベタなストーリーですし、2006年の作品なので今の作品のクオリティーと比べると色々思うことはありますが、2年かかっても結局最後まで見続けたのはこの作品が嫌いじゃない、というかむしろ好きだからだろうなと。
アイドルドラマ特有のワチャワチャした雰囲気もありつつどこか上品さもあり、さらに私が周渝民に沼落ちしたきっかけの作品でもあるので、結果的にはかなり思い出深い作品になりました。

⚠️ここからはかなりネタバレを含みますので、未視聴の方はご注意ください



あらすじ

 子供の頃、入院先で出会い1週間という短くも濃密な時間を共有した偉易と深深は、それから13年経っても当時の思い出を忘れられずにいた。 
 ある日、若くして大企業の社長になっていた偉易は、失語症の女性と出会う。これまで物質的な豊さばかりを追求してきた偉易だったが、彼女の生き方から精神的な豊かさの重要性に気づき、考え方にも変化が生まれる。
 そんな折、癌が発覚し、余命3ヶ月であることが判明する。これからの残り僅かな人生の過ごし方を模索する中で、この世界に残る人たちに何かを還元しようと決意する。具体的には、精神疾患を抱え塞ぎ込む母に治療を勧め、自分がいなくなった後のためにビデオメッセージを残す。青島で出会った肉親を失った少年には、コツコツ文字を学ぶこと、そして水泳を教え、大会に出場するところまでを見届ける。
 また、失語症の女性と時間を共にする中で、彼女は13年前に出会った深深だと判明。残り僅かな時間は深深と愛情を深めたいと願った偉易は、同居生活を始め何気ない日常の1日1日を噛みしめる。
 さらに、これまでの自分は父親の言いなりになっていたことにも気づく。これからは自分が生きたいように生きようと思い、父親に背いて立場の弱い労働者のサポートに回ったりと、自ら呪縛を解き放っていった。
 彼のそうした姿勢に周りも変わっていき、死の恐怖と闘いながら、残された人々に多大な影響を残した上でひっそりとこの世を去る。

感想と考えたこと

 この作品、なぜか「ツッコミどころ満載」とか「矛盾もありますが…」とかが枕詞になりがちなのですが、確かにそういうところもあるとはいえ、基本的にはしっかり脚本が練られた作品だと思いますし、設定も思いのほか新鮮な部分があるなと、あらすじを書きながら思いました。

生命中最重要的不是得到
而是要懂得付出
一個懂得付出的人
才能夠懂得快樂的道理

「深情密碼」19話

上の引用は作中の深深のセリフ(というかナレーション)で、ざっくりと訳すと、「人生で最も大切なのは得ることではなく、与えることだ。与えることを知った人間は本当の幸せを理解することができる」という感じなのですが、ドラマ全体の核がよく表現されているように思います。
まさに、深深の影響によって、偉易は「得ることに執着する人」から「周りへの還元を考える人」に変わっていきましたし、他の自己中心的な登場人物たちも最終的には他者の幸せに目が向くようになっていったように思います。

 また、昔の台湾ドラマは全般に説明しすぎる傾向にあり、独り言が多用されたり、1から10まで状況説明させたりすることが多いように感じていますが、このドラマは比較的その傾向が薄めです。
まず、ヒロインの深深が失語症であるため、手話やボディランゲージによるコミュニケーションが目立ちます。必然的に視聴者が“空気を読む”シーンも多くなるのですが、その分1つ1つのやりとりが尊く感じられます(個人的には受話器を指でコンコン鳴らしてお互いの意思を確かめ合っているのが好きでした)。
ラストの偉易が亡くなる場面でも、死という言葉を一つも出さず、また直接的なシーンも映さず、間接的に伝えているあたり、ある種の品を感じました。

最後に

 知名度も評判もパッとしない今作ですが、見方によってはかなり色々深められる隠れた良作だと個人的には思いますし、台湾・中国・香港・韓国というグローバルなキャスティングもかなりレアではないでしょうか。
本当にこれだけ書いてもまだ語り足りないくらいなのですが、またこんな作品に出会えたらいいなと思います。



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