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【レビュー】フォーチュンインプロ
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企画者の藤野さんは自身でも体験型のコンテンツを創っており、その根底にあるのは今まで誰もやっていない新しいものを、他にないものを作りたいという想いを抱きこの企画を立ち上げました。
インプロ(即興芝居)×占い、初めて見る組み合わせに興味が湧きました。
誰もやったことがない新しい試み。
あるテーマに沿ってお客様1人にインタビューしてその内容を元にロングシーンを上演するというものがあります。
(中略)
そこで逆転の発想から、まだ起こってすらいない未来のシーンを作ったら面白いのではないかと思い至りました。
もちろん未来なんて誰にも分かりませんし、想像で作ることはできます。でもそれだけではなく、なにかしらの根拠が欲しかった。
それなら占いに頼ればいいのではないか。
誰でも一度は星座占いや血液型占いなど、興味を持ったことがあるのではないでしょうか。今自分がやっていることは良い選択なのか、うまくいくのか、どんな傾向があるのか・・・。
わからないからこそ怖いし、少しでも安心したい。
個人的に占いに救われたことがあり、数年前を思い出していました。
未来がわからなくて押しつぶされそうな時、「来月は人生を変える出会いがある」と書かれていた星座占いを見かけたことがありました。何もしていなかったのに、なぜかその通りになっていて「人生には不思議なこともあるものだなぁ」と思ったものです。
インプロなのでどんな物語ができるのか誰にもわかりませんが、目の前にいる人の人生を使うので作品の土台は0ではありません。
プライバシーに配慮した構成が組まれていました。
私自身が何か企画を考えて実践するときに「今まで誰もやってない新しいものを」という観点を持って発信しているからです。
これまでにも謎解きから始まり様々な体験型イベント等のコンテンツを作って世に送り出しましたが、他にないものを作りたいという気持ちが強いみたいです。
主宰の藤野さんが書いている通り、占いでありながらその結果を演じていく時間は新しい発想でした。
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まず、選ばれたお客様を舞台上にあげて、仕事・恋愛・健康・お金など何でもお客様の好きなテーマで10分程度の占いをします。
※占われるお客さんのプライバシーに配慮し、内容についてはSNSに書かないようアナウンスがありました
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そして占ったシーンを元に、キャストたちがインプロ(即興演劇)でお客様の未来の架空のシーンを20分程度演じます。
キャスト6名の中から自分自身を演じてもらいたい方を主人公として選び、他のキャストは主人公の大切な関係者(家族・親友・恋人など)や、アンサンブル(シーンに必要となる様々な役割)を演じます。
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とある失恋してしまったお客さんの占いでは失恋する直前の話から新しい人に出会うまでを、家族に悩みを持つお客さんの場合は「こうなれたらいいな」という関係性を新しく創造して物語を創っていきました。
本人と会ったことはないけれど、創造することはできる。
もしも、という可能性が救いになるときがある。
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お客さんは「やり直してほしい」「ちょっと違う」と思った時にいつでも止められるよう、ベルを渡されます。
お客さんが止めていいのかわからずベルを鳴らせなかった場面もありましたが、お客さんの表情を見て「本当に止めなくて大丈夫ですか?」とキャストが声をかけてシーンをやり直す場面もありました。
シーンが止められるのが当たり前という前提がキャスト全員に共有されていたのは安心できました。
どの部分を修正しますか?と訊ね、セリフを言い直して物語を続ける。
シーンを止めたり修正するのはディレクター(演出家)。お客さんもその立場を楽しんでいるようで、シーンが止まるたびに笑いが起きていました。
積極的にベルを鳴らすお客さんもいましたが、気にしすぎることもなくキャストもどんどん物語を紡ぎ、すぐにまたベルが鳴っても修正しベルがなるのが当たり前だと思っているからこそ何度もシーンをやり直すことに抵抗がない。いつしか「お客さんがベルを鳴らすのはいつだろう」と楽しみになっていました。
そういえばお客さんに期待をする光景は珍しいな、と不思議な感覚になりました。プレイヤーと同じく創り手の認識があるからこそ期待してしまうのかもしれません。
インプロにも紙を配って単語を書いてもらうなど、お客さんと関わる方法はあるが演出家の立場を与えるのはリスクが大きい。
そのぶん、お客さんは一緒に創っている実感強く持てる。
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正直、普段の公演を観る時より緊張していて笑ったり拍手したりするタイミングを迷ってしまうのではないかと不安でした。
実際に占われたお客さんが見るので、お客さんがもし「シーンを止めたい/止めたいけど止めれない」と思ったらどのような選択があるのかが気になっていました。
キ(ャストはインプロの経験豊富な人たちで稽古中に話し合いもきっと行われただろうし大丈夫だろう、と思っていましたが)
でも、占い師の岬さんをはじめ開場中から和やかな雰囲気でした。パンフレットには星座占いもあってお客さんと話が盛り上がっていたので「この公演は安心して観ていられるな」と思えました。
アフタートークはお客様と共にシーンを振り返り和やかな空気に包まれていました。実際に占われたお客さんが嬉しそうに「こんなふうになれたらいいなあ」という姿を見て癒しの効果もあったのだなと一緒の時間を共有できて嬉しく、お客さんの幸せを願わずにはいられませんでした。
今回は占われたかったお客さんも「自分だったらどんなふうになるんだろう」と想いを馳せたか再演を望む声がありました。
再演があれば占いに興味がある人、自分の未来の人生を他人が演じているのを見たい人に観てほしいです。
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人はなぜ、占いに興味を持つのだろうと改めて考えていました。少しでも安心したい、背中を押してほしい、救われたいという想いがあるからではないだろうか。
日本は弥生時代には太占(ふとまに)と言う鹿の肩甲骨に火のついた棒を押し付け、骨のひび割れの形で吉凶を判断する占いなどがあり、権力の象徴ともされてきた時代もあります。
悩みは変わっていくけれど、希望や救いを求めてしまう欲求は消えることはないのかもしれない。
占いによって人の深淵を覗き見る、少しの背徳感もある。
他人が演じているのを見ることで、傷も後悔も肯定されているように感じる
のかもしれない。
人は不安になる。
人は周りの目を気にしてしまう。
だからこそ、自分を疑ってしまう。
未来はどうなるのか誰にもわからない。
思うようにならなくて涙を堪える日が続くかもしれない。
それでも明日は、未来はやってくる。
占いは、道標だ。
古代から形を変えながらも、変わらない小さな光。
私も誰かも、どうか健やかに。
少しでも良き人生になりますように、と願わずにはいられない。
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