言葉と思い出
ストーリー、疾走感など物語に引きこむスピードは「君の名は。」「天気の子」と同じく変わらない。
今回は大きく3つのキーワードについて記しておく
きます。
ストーリーのネタバレはないですが、情報なしで観たい方は映画を観た後に読むことをおすすめします。
あける、とじる
家、自転車、扉。日常で無意識に行なっている動作が頻繁に出てくる。
開ける、は「明ける」ともとれる。あの世とこの世をつなぐ扉。
何か一つが終わってもその先で何かに繋がっている。
記憶が詰まった扉を開ける時、時間は戻せないけれど出会える人もいる。
言葉が持つ力
鈴芽が猫のダイジンに、目の前から消えるよう言い放つ。その言葉を聞き、ハッとするダイジン。
物語が後半に進むたび、だんだん痩せ細っていく。目から純粋な輝きが消え、一気に年を重ねたような体へと変化していく。
明らかに痩せている状態になっていても鈴芽は声をかけない。
大切な人を傷つけられた怒りで気にもしていない。
扉に入る時、鈴芽はダイジンがなぜついてきたのかを悟る。
ありがとう
言われた瞬間にダイジンの目は輝き体も若返る。
たった一瞬の出来事が、強烈に焼きついた。
この5文字に大きく影響を受けたダイジンは、もともと要石と呼ばれ何百年も扉を閉ざす役割を担っていた。
人と話したり、感謝されることはなかったのかもしれない。
ただ、そこにいるのが当たり前とされてきた。
だから、感謝されてすごく嬉しかったのだろうし、遊びたかったのかもしれない。
声の跡
廃墟がいくつか出てくる。2014年に訪れた宮城県を思い出した。
目の前の廃墟に響く、そこに住み続けるはずだった声の木霊。
それは、津波で被害を受けた小学校を訪れた感覚と同じだった。人はいないのに、賑やかな空気に満たされ子どもたちの声が聞こえていた。
そんな不思議な感覚を鈴芽も味わう。
私だけではなく、確かに感じる人もいるのだと知る。
ここに残る、と聞かなかった隣の人。
なぜ引きずってでも
連れていかなかったのだろう。
なぜ、私はあの時逃げてしまったんだろう。
とあるおばあさんの言葉が蘇る。どんな選択をしても後悔はあるかもしれない。冷静になって考えると、自分でもわからない道を過去に選んでいたりする。
それでも、責めないでほしい。自分を大切にしてほしい。
あの時、言えなかった言葉を誰かに言えるようになっていたい。
自分にも、言い続けていたい。