マガジンのカバー画像

いつか、死んでしまうから。

9
私と誰かの記憶の断片。
運営しているクリエイター

2021年6月の記事一覧

朝

棒のようになった足を引きずり、家に帰る。

「ただいま」  無意識で言葉が出てしまう。

つい数時間前まで彼女がいた部屋を見渡す。

深夜、浴びるように飲んでそのままになっていた空の缶ビールを手に取る。
昨晩の思い出が消えてしまいそうで元の場所に戻した。

空が明るくなってきた。

昨晩の出来事を思い出したくなくてベッドへ戻る。

あの香水の香りが充満していて、誰にも聞こえないはずの嗚咽を我慢しな

もっとみる