フランケンシュタインの著作権はどうなってるの?
ここでは複数の著作権が絡む題材についてフランケンシュタインを例に挙げて考えてみます。
著作権とは、字のとおり著作物を作り出した人に与えられる権利のことを言います。
その定義は、著作権法の中で「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものをいう」となっています。
具体的には
① 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
② 音楽の著作物
③ 舞踊または無言劇の著作物
④ 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
⑤ 建築の著作物
⑥ 地図または学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
⑦ 映画の著作物
⑧ 写真の著作物
⑨ プログラムの著作物
が該当します。
イラストやデザインでも、よくトレースやパクり問題が話題になりますが、これらは上記の著作物に対して、著作権法という法律に定められた権利を侵害していることが理由となっています。
著作権の侵害が発覚した際は、その影響はデザイナー個人だけに留まらず、関係した企画・企業すべてに及ぶこともあります。
著作権についての詳しい情報は、たくさん書籍が出ているので、クリエイティブに関わる方はぜひ一度目を通していただきたいなと思います。
また、今回監修をお願いした川上大雅先生も、クリエイターのための本を執筆されています。
どれも勉強になる内容ばかりなので、ぜひお手にとっていただきたいです。
そして本題に戻り、「フランケンシュタイン」の話となります。
四角い頭、ツギハギの顔、ボルトのついた大男風の怪物でお馴染みですね。
私たちの思い浮かべるこのフランケンシュタインには、複数の著作権が絡んでいます。
そのため、使っても大丈夫だと思っても、思わぬ落とし穴があることもあります。
「フランケンシュタイン」は怪物を作った人の名前
まず、そもそもの元である「フランケンシュタイン」とは何なのでしょうか?
四角い頭、ツギハギの顔、ボルトのついた怪物、ではありません。
「フランケンシュタイン」は怪物を作った男性の名前です。
出典は『フランケンシュタイン』(原題は『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』)、1818年にメアリー・シェリーによって出版された小説です。
(出典:国会図書館→https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001116667-00)
物語に登場する青年フランケンシュタインが、生命を作り出すという野望を持ち、人間を繋ぎ合わせて、生命を吹き込みました。
私たちが思い浮かべている「フランケンシュタイン」は、このとき作られた生命体のほうを指します。
では、その生命体が、ツギハギやボルトの外見をしているのでしょうか?
小説内の記述を引用してみたいと思います。
私たちが持っているイメージであるツギハギもボルトも、どこにも言及されていません。
なぜ四角形の頭、ツギハギの顔、ボルトのイメージがあるの?
では、私たちのフランケンシュタインのイメージである四角形の頭、ツギハギ、ボルトのある背の高い怪物というはどこから来ているのでしょうか。
答えは1931年に公開されたユニバーサル社の映画「フランケンシュタイン」です。
(出典:映画.com→https://eiga.com/movie/48851/)
この映画の中で、怪物を演じたのはボリス・カーロフ氏。
特殊メイクが施され、四角形の頭、ツギハギの顔、ボルトがついています。
(なお、1作目の怪物の顔にはツギハギはありませんが、4年後に公開された続編「フランケンシュタインの花嫁」にはツギハギがあります。)
この映画の大ヒットで、いつの間にかフランケンシュタインは、怪物を作った青年の名前ではなく、怪物そのものを示すようになっていきました。
では著作権はどうなってるの?
では、ここまでに出てきた制作物の著作権について整理してみましょう。
まず原作であるメアリー・シェリーによって書かれた小説です。
小説の著作権は著作者の死後70年までとなっています。
著者であるメアリー・シェリーは1851年に亡くなっていますので、原作の小説の著作権は切れていることがわかります。
つまり、小説内の文章を抜粋して記載しても、権利的には何の問題もありません。
ではユニバーサル社によって制作された映画はどうでしょうか?
映画の著作権は、映画の公開から70年です。
ユニバーサル社によるフランケンシュタインの映画は1948年の「凸凹フランケンシュタインの巻」が最後ですので、結論としてはこちらも著作権が切れています。
ということは、このユニバーサル社によってデザインされた四角い頭、ツギハギ、ボルトの大男を描いても、権利的には問題がありません。
※ただし、「フランケンシュタイン」はユニバーサル社によって商標登録されている役務があったりします。長く愛された知的財産を、権利が切れているからといって、好き勝手に扱えば、権利元やファンから何かしらの折衝がある可能性があるでしょう。
これで全部、と言いたいところですが、まだ発生している著作権が残っています。
原作の翻訳本です。
原作自体の著作権は失効していますが、その原作を翻訳した文章にも著作性があると認められていますので、翻訳者に著作権があります。
翻訳本の著作権も、その翻訳者の死後70年です。
フランケンシュタインは今もなお、さまざまな翻訳者によって、翻訳されているため、著作権の切れていない本も多く存在します。
著作権が切れていない以上、文章をそのまま引用の体裁をとらずに抜粋することは、著作権侵害となります。
このように、1つの作品やキャラクターにも、複数の権利者が存在することは多く、著作権が切れていると思って安心していても、思わぬところで著作権を侵害してしまうことがあります。
一般的にお馴染みであると思っているキャラクターでも、必ず著作者が存在しますので、その権利が切れているかどうか、必ず確認するようにしましょう。
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