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【IRの裏側】自社開催した上場企業同士の合同セミナーを実務視点で振り返る

みなさまこんにちは。スパイダープラスのIR活動を通した学びをシェアしていく企画、【IRの裏側】です。

2023年9月20日に開催した「セーフィー社との合同IRセミナー」は、
取り組み的にも結果的にも、効果の高いIR施策でした。

今回のnoteでは、合同IRセミナーの企画背景や狙いから、効果測定方法と実際の結果まで紹介し、IR施策を考える上でのヒントにして頂ければというnoteです。

(実際のセミナー内容については下記をご覧ください)


1. 企画背景・狙い

(1)企画背景(課題意識)

まずは、「そもそも何で企画したの?」という点について。
「資本市場における「建設2024年問題」の認知度を向上させるIRがしたい」というのが出発点でした。

当社では、「働き方改革が建設DXの転換点になる」と2021年の上場直後から資本市場に発信しています。

3年間発信し続けているので、説明会に参加いただく投資家や1on1の機会をいただく投資家には、「2024年に起こる建設DXの転換点と、そこから高まる需要への期待」について意思疎通が取れてきています。

しかし、建設業界と同じく2024年に働き方改革関連法が適用開始となる物流業界の方が、「物流2024年問題」とメディアから大々的に取り上げられているのが現状です。

この状況に、「建設2024年問題」への関心はまだまだ低い、投資家にとっても投資テーマとしての認知度はまだまだこれから、という課題感がありました。

(実際に「2024年問題」とGoogle検索すると、面白いくらい「物流2024年問題」に関する記事しかでてきませんので、ぜひお試しください!)

また個人的に「建設DX業界を広く盛り上げるIRがしたい」と、
常々考えていたこともあり、「メディアがまだ取り上げきれていないのであれば、自分達で注目度を高めよう!」という発想から、今回のセミナーを企画することとなりました。

2023年8月3日に投資家・IRの御用達ツールである株探が、<トップ特集>として「人手不足対策待ったなし、「建設DX」関連株に上昇ステージの幕が上がる」という特集記事を配信されました。
前日のIRリリースと相まって、このニュースが配信された翌日には、出来高・株価共にポジティブな反応が見られました。

「これだよ!これ!」と特集化自体に興奮しながら、スパイダープラスを「建設DXの代表格」と一番始めに挙げていただいた事は大変光栄な出来事でした。(該当ニュースは下記)
https://kabutan.jp/news/marketnews/?b=n202308031328

(IR担当回顧録)

(2)合同IRセミナーに至った経緯と狙い

こういった背景から、「建設2024年問題」への注目度を高めるために「建設2024年問題に特化したIRセミナー」を実施することにしました。
(通常の決算説明会ではそれを解消する時間を割けきれないですからね…)

IR施策として実施するので、「建設2024年問題」の注目後向上の他にも、「自社株への需要創出」も求めたいところです。

「投資家開拓や、投資の意思決定に繋げるには?」という思考と、「業界を盛り上げるIR」という観点でセミナー内容を検討している中で、

「『建設2024年問題を企業同士が語り合う』という内容であれば、市場環境も競争環境も一度に理解できておもしろいのでは?」

という発想に至り、
「他社と、しかも競合・類似企業と合同でIRセミナーを行う」と決定しました。

そこから大枠の企画案を練り上げ、前提となるセミナーの目的を以下の3つに設定しました。

1. 株式市場における「建設DX」というテーマ性の認知度・注目度向上
2. 自社を多面的に理解する場を作り、投資意思決定の判断材料を提供
3. 新規投資家の開拓、投資家の相互送客

(合同IRセミナーの企画書から抜粋)

3つめの「投資家の相互送客」について補足すると、
普段のIRで機関投資家、個人投資家との会話・質疑から

「建設DXをテーマとして認識しているのに、あの企業は見ていないのか」

と思うことが多々あり、という事はその逆も然りで
事業領域が被っているのにスパイダープラスを知らない投資家もいるだろうと考えていました。

そういった投資家を開拓できれば、スパイダープラスを知らないだけで、「建設DXの機会」については一定理解はされているので、「はじめまして」の投資家よりも意思決定は早いはずです。

そういった経験値から、「投資家の相互送客」をセミナーの目的としても設定しました。

2. 登壇企業のソーシング方法

目的が定まったところで、「どこと一緒にやろう?」となります。

ソーシング自体は泥臭く、建設DXを事業機会としているいくつかの会社の【IR問い合わせ】に「情報交換してください!」と連絡しました。

だいたいの会社は「IRの情報交換しませんか!」というと、「ぜひ!」と返ってきます。
なので、今回問い合わせした企業もすぐに連絡が返ってきて、
ネットワーキングすることができました。

ちなみに、情報交換の中では各社そろって「わたし達、スパイダープラスさんについて質問されることほとんどないです」との事でした。
なので、「相互送客」と「多面的理解」は企画の狙いとしてアリだなと、
ソーシングの時点で一定の自信が持てていました。

(IR担当回顧録)

一方で、企画自体への反応は各社まちまちでした。

そんな中で、セーフィー社は「おもしろそうですね!やりましょう!」と二つ返事で快諾いただき、セーフィー社と合同IRセミナーを開催することとなりました。

建設DXをいくつかのカテゴリーで分けると、セーフィー社のサービスで実現できる「遠隔臨場」は国交省も推し進めるテーマであることから、お声かけした企業の中でも特に企画との相性も良い企業様でした。

3. 自主開催セミナーにおける集客方法

今回のセミナーは個人的な肝いり企画だったこと、単発企画で終わらせず「次」に繋げるためにも、視聴数の確保は重要でした。
そのため、集客に関しては普段の決算説明以上よりも注力しました。

(豪華メンバーでセミナーやって、視聴者集まんないとか笑えないぞ・・・と自らにプレッシャーをかけながら。)

とは言え、やったことはシンプルで
1. TDnetで「セミナーやります!」の開示2. SNSで拡散!拡散!拡散!の2つです。(「SNSで拡散!」は普段より2個分、「拡散!」してます。)

多くの投資家に届けられる手段としては「開示」が最も効果的と考えているため、今回もセミナー集客手段としてTDnetを活用しました。

開示の際、東証の方から「面白そうな取り組みですね」とコメント頂けたのは嬉しいサプライズでした。

(IR担当回顧録)

そして、X(旧"Twitter)での拡散です。

X(旧"Twitter)での拡散の良さは、
投稿に対して誰が「良いね、リポスト、コメント付きリポスト」したのか把握できること、アナリティクスでポスト閲覧者の行動も見れることから、
集客活動の結果も把握できる有効な手段です。

また、拡散の効果として普段スパイダープラスを見ていない、そもそも知らない投資家の認知を獲得できますし、またその投資家が拡散するとさらに多くの「新規投資家」にリーチすることが期待できます。

(この考え方については、下記のセミナーもご参考になります!)

結果的に、社内外の多くの皆様にもご協力いただいたことから、
当社のIRアカウント史上最大の、5万超のインプレッションを記録することができました。

日々のPV数を観察していくなかで、株式投資勉強会の主催者や株式投資系You Tubeを運営されている方のリポストによってインプレッションが
一気に1万くらい伸び、「インフルエンサーの拡散力すごいなー!」と感嘆しました。

(IR担当回顧録)

その他、セミナー中も「ライブ配信やってます!」というポストを進行に応じて投稿するなど、セミナー開催中の集客にも力を入れていました。

ちょっとアレンジを加えた投稿もしていました。
(実際、セーフィー佐渡島CEOの通信テクノロジーに関する造詣の深いお話はオススメです!)

実際に、投稿直前に減っていた視聴者が10名程度で増加したので、
「説明会中の拡散も集客に有効」という新たな発見がありました。

以上が、集客についてやったいたことです。

今回から、Xのポストを意識的に追いかけていましたが、
インプレッション数以外の指標を追った方が正しいだろうとも思っているので、今後の説明会やセミナーなどを通して、「解」を見つけていきたいと思います。

ちなみにそれ以外にも、「みんせつ」で「セミナーを説明会登録する」というのもやっていました。
「みんせつ」上で参加登録があると機関投資家の参加予定者がバイネームで分かるので「みんせつの説明会登録機能」の活用はオススメです。

ちょっとしたTips(多分)

4. 結果、効果測定

では実際に、結果をみていきます。
まず、セミナーの目的は再掲となりますが以下の通りです。

1. 株式市場における「建設DX」というテーマ性の認知度・注目度向上
2. 自社を多面的に理解する場を作り、投資意思決定の判断材料を提供
3. 新規投資家の開拓、投資家の相互送客

(合同IRセミナーの目的)

この目的を達成したか否かは 1. 視聴者数 2. アンケート結果により効果測定しました。

効果測定1:視聴者数

まず目標として「視聴者数200名!」という数字を掲げていました。
結果的に、リアルタイムで最大126名、平均視聴者数は96名となりました。

平均視聴者数は開始から100名を突破するまでも計算されているはずなのと、開始30分以降は終了まで常時の視聴者数は100名前後と思います。

また、2日後にはアーカイブ動画も配信しました。
約2週間経った現在、ユニーク視聴者数は400名近くまだ伸びています。

リアル配信とアーカイブ配信の視聴者数から、
【目的1:「建設DX」というテーマ性の認知度・注目度向上】と、
【目的2:スパイダープラスを多面的に理解する場を作る】の2つは達成

できたと言えるでしょう。

ところで、視聴者目標数「200名」という数字がどこから来たかと言うと、
スパイダープラスの決算説明会が毎回100名以上の参加があることに加えて、セーフィーさんのネームバリュー、企画的目新しさ、他社のIRセミナー参加者数から考えて「発行体の自主開催で200名超えたらすごい!」という感覚値で設定しました。

(IR担当コメント)

効果測定2:アンケート結果

アンケートは、合同企画らしく両社の測りたい参加者の属性情報を取れるアンケートを作成しました。

普段はセミナー開催後にアンケートを実施していましたが、今回は「質問投稿時」からしっかりと属性情報をとれるように設計しました。結果的に、質問投稿者も多かったことから一定量のデータを取得することができました。

結果的には、【目的3:投資家の新規開拓・相互送客】を達成できました。

「両社のセミナーに参加経験あり」の投資家が想定以上に少なかったこと、「どちらか一方しか参加したことが無い」投資家が多かったことは、
「同じ事業テーマを扱っていてもカバーしてくれていない投資家がいる」という仮説が検証できた結果となりました。

また、「(両社のセミナーに)初参加」投資家が2割いたということは、100名程度の投資家には「建設2024年問題」に興味を持っていただけたとも言えるでしょう。

5.まとめと今後の展望

以上が、今回の「合同IRセミナー」についてをの企画背景からその結果までの振り返りでした。

今回のセミナーは、定量的にも結果が伴ったものでしたが、
視聴者から「第2回開催希望!」とコメント頂いたり、登壇したCEO・CFOから「やって良かった」と言って頂けたりと、定性的にも成功したと言えるセミナーとなりました。

(セミナー登壇者の集合写真。皆さん良い表情です。)

また、アーカイブ配信を御覧頂いた個人投資家様のこんなポストもありました。(こういった反応が見れるのも、嬉しい限りです。)

冒頭記載したように「業界を盛り上げるIRをしたい」と常々考えていたこと、また、合同企画ならではの「そんなやり方してるんですね!」と他社から学べるという体感もあったことかた、個人的にも「やって良かった」
IR施策となりました。

最後に、今後の展望についてです。

まずは開催要望もあったセーフィー社との「第二回」については、
「あの時の答え合わせ」的な感じで開催できそうと思っています。

その他にも、別の会社様とも「合同IR」をやりたいと思っています。
もしかしたら、「建設業界」に絞らず、「SaaS」とか「グロース企業」のカテゴライズで「成長戦略」を語るという切り口もアリかもしれません。

また、今回のセミナーで「IRを通じて経営レベルのネットワークを作れる」という効果もありました。

今後は、「企業価値に貢献するIR」だけでなく「事業機会を生み出すIR」といのも模索して、「IR」という仕事の幅・魅力拡げていきたいと考え、思考を巡らせております。

以上、施策としての合同IRセミナーに関する振り返りでした。
長文にお付き合い頂きありがとうございます。

スパイダープラスの【IRの裏側】その続編にご期待頂けますと幸いです。

(最後に、セミナーまだ見ていない!という方は、ぜひ御覧ください!)


*本記事に関する注意事項
本記事は、情報提供のみを目的として作成しています。本記事は、日本、米国、その他の地域における有価証券の販売の勧誘や購入の勧誘を目的としたものではありませんのでご留意ください。