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父のありがとうございます

#中学生〜高校生

ある日、父がカウンターを買ってきた。

付いているボタンをかちかちやると、9999まで数えられるようなやつだ。

父は別に野鳥の会ではなく、持つ意味がわからなかったため、聞いてみた。

ぼく「それ何に使うの?」

父「実は、数えたいものが有るんだよね。」

ぼく「でしょうね。」

話にならないので、すこし様子見することにした。

するとその夜、

リビングの方から父の声と、
カウンターが回るカチカチと言う音が聞こえてきた。

何を測っているのか気になったのでリビングに行ってみると、
父がテレビを見ながら、ブツブツ何かを唱えカウンターを回していた。

近づいて、よく聞くと何を言っているのか、はっきり聞こえた

父「ありがとうございます。(カチ)ありがとうございます。(カチ) ありがとうございます。(カチ)ありがとうございます。(カチ)ありがとうございます。(カチ) ありがとうございます。(カチ)ありがとうございます。(カチ)ありがとうございます。(カチ)ありがとうございます。(カチ)」
(ありがとうございますはめちゃくちゃ小声で早口)

ぼく「(まじか)」

怖すぎて話しかけて良いのか微妙だったが、
あふれる好奇心には逆らえず話しかけてみた

ぼく「なにしてんの?」

父「測ってるの。ありがとうございます。(カチ)ありがとうございます。(カチ)」
(ありがとうございますだけめちゃくちゃ小声で早口)

ぼく「なにを」

父「ありがとうを。ありがとうございます。(カチ)ありがとうございます。(カチ)」

ぼく「ぇ? どゆこと? なんで」

父「なんか本に書いてあった。やりだしたら運気があがるらしい。ありがとうございます。(カチ)ありがとうございます。(カチ)」

しかしながら、父のありがとうは。
本当に感謝しているのかわからないくらい、ボソボソと言っていては意味が無いのではと思った。
というか、会話の途中にやられるとすごくうざったい。

ぼく「何回やるのソレ」

父「1日1万回ありがとうございます。(カチ)ありがとうございます。(カチ)」

ぼく「まじか。それ1-2時間くらいかかるよね」

父「うん。ありがとうございます。(カチ)ありがとうございます。(カチ)ありがとうございます。(カチ)ありがとうございます。(カチ)」

ぼく「テレビ見ながらでも良いの?」

父「どうなんだろう。ありがとうございます。(カチ)ありがとうございます。(カチ)」

ぼく「よくわからないけど、なにかに感謝するのが目的なら量より質なんじゃない」

父「そうかもね。ありがとうございます。(カチ)ありがとうございます。(カチ)。ちょっと邪魔だから後でにしてくれる?」

ぼく「(だめだ、コーラ飲も)」

その後、父のありがとうは2ヶ月くらい続き、いつの間にか終りを迎えた。
ありがとうございますを一回0.7秒だとすると、約二時間。
それを2ヶ月行った父は120時間程度ありがとうを言ったことになる。


怖い。

今でもカウンターは父の机の上に置いてあり、
たまに数字が変わっているのは気にしないことにしている。

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