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椅子のカタカタが気になって仕方がない

ダイニングテーブルが我が家にやってきて早一週間。

椅子が届くまでの間、物置台と化していた悲しきテーブルも、やっと日の目を浴びる時がやってきた。

椅子を選ぶのにはさほど苦労しなかった。(あくまで私にしてはだが。)このテーブルと喧嘩しない椅子は割と限られていたし、そもそも予算が限られている。安くてイケてるインテリアがあるブランドをいくつかネットサーフィンし、IKEAの椅子に狙いを定めた。

だが、ここで買うことはしない。写真で見た感じと実物にずれがあるのがネットショッピングの嫌なところだ。
わざわざ雨の中店舗に出向き実物まで確認した。夫は即決の様子だったが、私はまだなんとも踏ん切りがつかない。
IKEAはたしかに安くて可愛い、汎用性もそこそこ高いと思う。ただひとつ懸念がある。

まずネジが見えてしまう仕様になるのが気に食わない。なら大金をはたいて継ぎ目が見えない良いものを買えば良い、というのが最もだがそんな予算もない。(何度も言う。)

ネジは目を瞑るとして、一番嫌なのが組み立て式という点だ。完成品が自宅に届くわけではないので、その完成度が購入者側に委ねられる。正直家具の組み立てに自信はなく、以前IKEAで購入したサイドチェストは組み立てが甘かったのか引っ越しとともにガタつき始め、数年ともたなかった。買う時にどんなに安くても、すぐダメになるならコスパが悪い。特に家具はゴミとして出すのにもお金がかかるから厄介だ。

そんなIKEAトラウマを抱えている私としては、IKEAでの家具の購入は慎重にならざるを得ない。
だからと言ってこの価格帯で同等のデザインのものも見つからない。結局3日悩み続け、最後は考えることに飽きてしまい、オンラインにて購入した。

椅子は平べったくて大きな段ボールに封入されてやってきた。「お前らで組み立てやがれ」と言わんばかりに平らだ。この中に椅子になるためのパーツが収納されているというわけだ。これを組み立てるのか、すでに気が重い。

大型家具でもないのに大袈裟な、と思うかもしれない。私はビビリで心配性だ。完璧主義者で失敗を恐れる、小市民だ。いかにも大成しなさそうな特徴を兼ね備えている。

たかが椅子2脚に何を身構えることがあるのだ、早く組み立てようぜ!と顔に書いてある夫。彼は届いたものはすぐ開けたくなる性分らしく、買ったものをいつまでも袋から出さない私の行動は理解ができないらしい。

何事も「心の準備」が必要なのだ、勢いで始められることと始められないことがあるんだよ!私はそう思うわけだが、大抵こうゆうのは動いたもん勝ちだ。夫は早速平べったくて大きな段ボールをいそいそとリビングに運び込んだ。組み立て開始のゴングが鳴る。

だが私にはサイドチェストで組み立てに失敗した苦い思い出がある。この男、絶対そのこと忘れてる。ここは私が組み立てよう。生活の質向上委員会委員長の出番だ。

「私が組み立てる!」

そう言うと少し驚いた様子で「あ、ほんと?」と作業の手を止める夫。第一寝起きで家具の組み立てなんぞしてくれるなよ。

だが私は完璧主義者。少しのズレもミスも許したくない。慎重にひとつひとつを進めるが故にナマケモノも驚くスローペースだ。このままでは日が暮れてしまう。少し苛立ちながらも夫に指示を仰ぐ。説明書が夫の方を向いてて私の角度では見えづらい。「私がやる」と言った手前、説明を仰ぐ以外で手を貸してほしいとも言いづらい。プチ四面楚歌だ。

そんな私を見かねてか、夫が一緒にネジを巻き始めてくれた。やはり手は多いに越したことはない。結婚してよかった、現金な私はこうゆう時に結婚のありがたみを感じる。

なんとか一脚が完成し、作業のために逆さにして机の上に乗せていた椅子を床に下ろす。背もたれをグッと押して強度をチェック。

カタカタッ。

ガタついている。脚4本のバランスがおかしいようだ。あれだけネジを少しずつ慎重に締めたはずなのに。このズレを恐れて、ネジは一本ずつキツく締めてはいけないことも承知して、全体のバランスを見て少しずつ締めたはずなのに?!??

西日が差し始めたリビングの心地よさと相反して、私の心に絶望が押し寄せる。小市民の絶望だ。

だが夫は何食わぬ顔で「え、でも座ったらガタつかないよ。」と座ってみせる。私も、と座るとたしかに座った時のガタつきは感じない。

ここで「じゃあ、いっか。」となれたら私も夫のようなおおらかな人間になれたのかもしれない。だが私は気になってしまう、このガタつきは気になる。

思い出してみてほしい。

学校の教室。クラスの席替えで新しい席の椅子がガタついた時のあのやりきれない気持ち。

お洒落な飲食店。素敵そうな席に通されてテンションが上がるも、いざ座って椅子のグラつきを感じた時のあのなんとも言えない気持ち。

勉強中も食事中も気になって仕方がない。あの気持ちを家で味わいたくはない。

「じゃあこの椅子は俺が使うよ。」と夫は言うがそうゆうことではない。カタカタする椅子が家にある、それだけで気になるのだ。

でも一回飲み込み(えらい。)もう一脚を組み立て始めた。一回経験した作業なのでスムーズに進められる。すぐに肝心の座面部分と脚の接合工程に入った。ネジの締め加減に細心の注意を払う。ネジ締め8分目で一旦ストップし、椅子をひっくり返し床に置いてみる。背もたれをグッと押してもびくともしない。

キマッタ…

小さくガッツポーズ。すぐにカタカタの椅子をひっくり返し、全体的にほんの少しネジを緩めてみる。もう一度床に置くと、やはり。カタカタしなくなった。

絶望からの逆転勝利。心の中の小市民が小躍りしている。



こうしてダイニングが我が家にやってきた。

同棲期間を含めると4年ちょっと。やっと、である。今までリビングとダイニングは一体化し、ソファに座って2人並んで食事をとっていた。私としてはさほど不便はなかったし、このままでも良いかな、と思いなかなかダイニングに手を出してこなかった。

だが、いざリビングとダイニングを分けてみると、生活の質が急上昇した。QOL爆上がりである。

寝食分離はよく聞くが、くつろぐスペースと食事をとるスペースも分ける方が、心の切り替えにもなり、より豊かな気持ちになれることを実感した。分かりきっていることとはいえ、いざ体感するとやはり感激するものだ。


夫と一緒に暮らし始めて4年以上が経ち、徐々にではあるが「生活」が出来上がっている感覚がある。これは嬉しいカタチだ。

生活は1日にしてならず。

インテリアひとつにしたってそうなのだと思う。一気に揃えたい気持ちはもちろんあるが、少しずつ、これからも生活に色をつけていこう。

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