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ふやかさないゼラチン。
ふやかす手間なく直接溶かすことができる「ゼラチン21」は、調理を合理化するためには絶好のゼラチンだ。
文・撮影/長尾謙一
ゼラチン21
(素材のちから第44号より)
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「ゼラチン21」は膨潤させることなくそのまま溶ける顆粒タイプのゼラチン。においがほとんどなく無色透明、そして少ない使用量で固まる最高級品だ。食材を厳しく選ぶようにゼリーの食感も吟味したい。
今使っているゼラチンを見直すきっかけをもらいました。
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オーナーシェフ 柴田 秀之 さん
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「フランス料理 ラ クレリエール」 東京都港区白金
ラ クレリエールの料理は真摯なフレンチだ。見るたびにバージョンアップしていて、何かに向かって突き進んでいる。今に満足することなく、さらなる高みを目指す努力を常に怠らない。些細なことにも丁寧に取り組む柴田シェフの姿からは料理人としての気概を感じる。料理人のひたむきな生き様が料理となり、お客様を感動させる。シェフが向かっているのは新しい料理のスタイルなのかもしれない。
〝顆粒ゼラチン〟を初めて使ってみた
私は20年以上フレンチの仕事をしていますが、ゼラチンはいつも板のものを使っていて、今回の「ゼラチン21」というテーマをいただくまで〝顆粒ゼラチン〟を使ったことはありませんでした。
ゼラチンは修業した店で使っていたものが基本になっていて、違うものと比べようと考えたこともありませんでした。ゼラチンを変えるとレシピも調整しなくてはならなくて、これって結構めんどうなことですから。
この料理は〝荒間鶏〟という老鶏を使った料理です。
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老鶏は相当硬いのですが、ムネ肉を合わせ塩で一日マリネして、それを真空パックして80℃のスチコンで8時間ゆっくり火を入れます。そうすると筋繊維が一本ずつほぐれる状態になっておいしく食べられます。
〝荒間鶏〟のガラで出汁をとり、ミンチにしたモモ肉、野菜、卵白、鶏の血液で澄んだコンソメをつくります。これを煮詰めて味を調えて、ほぐした鶏とジロール、「ゼラチン21」を加え、ポワレしたフォアグラと一緒にセルクルで固めます。
オマールの出汁をぎゅっと煮詰めたものにマヨネーズを加え、ここにも「ゼラチン21」を加えてゼリー液をつくって上からかけます。固まったらこれを天王寺蕪の上にのせます。
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天王寺蕪はさっと茹で上げシャキシャキ感を残し、ゆずの果汁とドレッシングと塩でマリネしたものです。飾りにはキャビアと日向夏を、グリーンのピューレはパセリ、ソースは老鶏に火を入れた時に出るジュースをぎゅっと煮詰めて、エストラゴンビネガー、シェリー酒、そしてクルミのオイルで仕上げています。
「ゼラチン21」は液体に直接ふり入れて使いますから、使う前にあらかじめ膨潤する板ゼラチンに比べて手間が省けます。しかし、もっと重要なことは、ゼラチンと水の関係にあります。
膨潤せずに使えることが生み出す大きな価値
ゼラチンは膨潤すると水を含みますから、仕上げの味に影響があるはずです。その点「ゼラチン21」にその要素はありません。顆粒ゼラチンのよさは、これに尽きると思います。
微量とはいえ、加わった水は最終的に味わいの差につながるはずです。薄まることを料理の製作者が読み込んでレシピをつくっているかというと、それは難しいと思いますね。膨潤も人によってやり方に差があります。ペーパーでちゃんと水分を拭き取って使うスタッフもいれば、ぎゅっと絞っただけで使うスタッフもいます。ですからゼラチンが含んでいる水の量が違うことがあるのです。加えた後に必ず味見して微調整しなくてはなりません。
これって無駄ですよね。しかし、「ゼラチン21」にはその必要がないのです。配合と手順を決めておけば、味はブレることなく完成します。さらに、少ない使用量で固まり無色透明でにおいもほとんどありませんから凄く使いやすいです。
ゼラチンは固める役目だけでなく食感をコントロールする
次の料理は一番下がカリフラワーのムース、次に貝の出汁と藻塩の柚子ゼリー、一番上にカリフラワーのヴルーテの〝カリフラワーの三重奏〟です。硬さが絶妙で、口溶けのギリギリを狙う結構気をつかう料理で、「ゼラチン21」はその実力を発揮しました。
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ゼラチンは固める役目だけではなくて、食感をコントロールすることでさわやかな中に濃厚感を表現しています。
デザートは新生姜のアイスクリーム、しゅわっとしたジンジャーエールの泡、ビールの蒸留酒のゼリー、新生姜のムース、7種類のスパイスを入れた新生姜のコンフィチュールです。
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(生姜の味わいを組み合わせて楽しむデザート)
ビールの蒸留酒はアルコールなので固まりにくいのですが、「ゼラチン21」はよく固まります。また、ジンジャーエールのムースはエスプーマがなくても「ゼラチン21」を0.7%加えて簡単にハンドミキサーでつくれました。作業性がとてもいいですね。
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「ゼラチン21」は未来形のゼラチン
〝顆粒ゼラチン〟のいいところばかりお話しましたが、計量がいらないことや、レシピを継承しやすいことなど〝板ゼラチン〟にもいいところがあります。どちらの方がいいというのではなく、キッチンの事情に応じて選べばいいと思います。
これからはキッチンに人手が揃いにくくなります。クオリティーの高い料理を限られたスタッフでやらなくてはなりませんから、システムを決めてやっていくことがとても大事なのです。レシピができあがったら後は誰もが同じように料理を仕上げることができる。そういうところに「ゼラチン21」は力を発揮する、未来形のゼラチンだと思います。
(2022年3月31日発行「素材のちから」第44号掲載記事)
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