見出し画像

和食と「食感」

文・撮影/長尾謙一 

・食べるコラーゲン 
・ふわあわクイック 
(素材のちから第39号より)

画像8

「食べるコラーゲン」と「ふわあわクイック」の可能性

「食べるコラーゲン」と「ふわあわクイック」の舌触りや歯ごたえ、口溶けは、すべての人にとってきっと経験したことのない食感だろう。今までにない食感は果たして料理にどういかされるのか。そして、どんなおいしさを見せてくれるのだろう。

料理人が見つける「食べるコラーゲン」「ふわあわクイック」の魅力

ここ1〜2年の間にコラーゲン、ゼラチンの発展形としてご紹介した「食べるコラーゲン」や「ふわあわクイック」が次々に商品化された。今まで編集部で何度もメニューの試作を続けてその特長をお伝えしてきたが、十分にその可能性を引き出せたわけではない。

そこで、今回は日本料理店でこれらの新しい商品を使っていただき、その感想をお伺いすることにした。料理人が見つける新しい可能性と魅力をお伝えしたい。

画像2

店主 村田 明彦 さん

画像3

鈴なり 東京都新宿区荒木町
和食が持つ魅力をできるだけたくさんの人に知って欲しいといつも思っている。そんな思いで(株)にんべんに持ち込みコラボした〝飲む茶碗蒸し〟は、コロナ禍の中〝日本橋だし場〟の店頭で7月23日から9月末までの70日間で3,232杯を販売した。やはり日本人は和食が好きなのだと自分の信念に手ごたえを感じ、店のメニューづくりにもさらに力が入る。

サンマの酢締め「食べるコラーゲン」雲母仕立て添え

画像8

サンマの上にのるキラキラとした綺麗なコラーゲンを、まるで雲母(きらら)のようだと日本料理の職人は表現する。その食感は独特なもので唯一無二、未体験の歯ごたえのよさを持つ。コラーゲンとは、食感を味わい楽しむ食材だっただろうか?

「食べるコラーゲン」は、食感がとてもおもしろいと思います

「食べるコラーゲン」という商品名からイメージするのは、きっとゼリーのような感じなんだと思っていたのですが、凄くしっかりした歯ごたえがあっておもしろいですね。似たものがないか、いろいろ当てはめてみたのですがありませんね。

サンマの酢締めに「食べるコラーゲン」を細かくしてトッピングする料理からつくってみました。サンマは二杯酢で締めて鹿の子に包丁を入れます。上にのせた「食べるコラーゲン」は刻んでから土佐酢に漬けました。キラキラと雲母のように綺麗ですよね。

食べてみてまず驚くのは、やはり「食べるコラーゲン」の食感です。見た目はジュレのようですがまったく違います。しっかりとした歯ごたえがあって、サンマと一緒に噛んでも口の中に残ります。そして、その食感は今まで一度も味わったことのないものなのです。どれだけ記憶をたどってみてもこれに似ているものは出てきません。ですからサンマと一緒に食べるとお造りに何か新しい食感が生まれてくるような感覚です。

薄くスライスしてサンマの身の間に挟むのもおもしろいかもしれません。もともとサンマはコラーゲン豊富な魚ですが、サンマのコラーゲン感がさらに強調されますね。

味の点からも驚かされました。「食べるコラーゲン」には漬け込んだ土佐酢の味が染み込んでいます。クセもなく、いろいろな味が入ります。ゼリーのように口の中で溶けませんから、サンマを味わっている間、土佐酢の酸味がずっと口の中にいてくれます。梅肉を出汁に溶かしたものに漬け込んでおくと、梅の風味も入るし赤く色もつくでしょう。

お造りを盛り付ける時に添えるものは結構決まってしまっているので、「食べるコラーゲン」はとてもおもしろいと思いますね。いろいろと工夫できそうです。

おいしい味を中に入れ、美しく色づけできる「食べるコラーゲン」の可能性は大きい

次は、温かなイワシのつみれ汁に「食べるコラーゲン」を入れてみます。

イワシのつみれ汁 味噌のコラーゲンと生姜のコラーゲン

画像5

イワシのつみれには味噌と生姜をわざと加えずにネギだけで仕上げます。味噌の味と生姜の味はそれぞれ別々に「食べるコラーゲン」に染み込ませようと考えました。「食べるコラーゲン」には味も色も染み込みますから、味噌味のコラーゲンと生姜味のコラーゲンができるはずです。

これを全部一緒に食べることで、イワシの風味、味噌、生姜が混ざり合い、つみれ汁として成立するとイメージしたのです。

味噌味のコラーゲンは出汁に味噌を溶かして濃いめの味噌汁をつくり煮込みます。生姜味のコラーゲンは出汁にすりおろした生姜を加えて汁気がなくなる手前まで煮込みました。

〝サンマの酢締め〟でトッピングした雲母仕立ての「食べるコラーゲン」は、冷たかったのでコリコリとした歯ごたえでしたが、温かいともちもちした感じになります。しかも味噌味と生姜味では歯ごたえが違っていて、味噌味の方がしっかりしています。味噌味の方は色もしっかりとつき、生姜味の方はそれほどつきません。おもしろいですね。全部を一緒に食べてみると狙い通りイワシのつみれ汁になっていますし、何よりも温かくもちもちとしたコラーゲンは本当においしいと思います。昔流行ったコラーゲン鍋はコラーゲンを入れると溶けてしまいましたが、「食べるコラーゲン」は独特の食感が楽しめます。鍋料理にはこのもちもち、プルプルとしたコラーゲン感は最高じゃないでしょうか。

バニラアイスとイチジク 赤ワインコラーゲン添え

画像6

「食べるコラーゲン」はデザートにも使えます。赤ワインに砂糖を加えて沸かしてアルコールを飛ばし、そこに角切りにした「食べるコラーゲン」を熱いうちに入れて漬け込みます。赤ワインの味も色も染み込みやすく、冷やすと食感がしっかりします。これをイチジクとバニラアイスと合わせました。やはりゼリーにはないこの食感が魅力です。

「食べるコラーゲン」の温度の変化による食感の違いはとてもおもしろく、冷製の料理から煮物、蒸し物でもメニューの可能性はかなりあると思います。

泡のソースは絡みやすく、口当たりのよいなめらかさがおもしろい

さて、それでは「ふわあわクイック」を使ってみます。

マグロ納豆泡醤油

画像8

まず、納豆の泡醤油をつくります。納豆を洗い、裏ごしした後、醤油と出汁でのばし、1対1の割合の「ふわあわクイック」と一緒にハンドミキサーで回します。山芋を添えたマグロの赤身にたっぷりと納豆の泡醤油をかけてマグロ納豆をアレンジしました。泡のソースはマグロに馴染みやすく、口当たりもソフトで違った食感のアプローチができます。

牡蠣の酒蒸し ワカメの泡ソース添え

画像8

牡蠣の酒蒸しにも泡ソースを合わせてみました。牡蠣の殻を開け、酒をふり、強火で蒸し、冷やして土佐酢で洗い、食べやすい大きさに切ります。ワカメは細かく叩いてすり鉢ですって、昆布出汁でのばし塩で味を調え、これに「ふわあわクイック」を1対1の割合で加え、ハンドミキサーで泡立ててワカメの泡ソースをつくりました。今の時期ですと牡蠣に餡をかけたり、ウニをのせて冷やしたジュレをかけた料理を出しますが、このワカメのソースは絡みやすく泡のなめらかさがおもしろいなと思いました。


協力/お問い合わせ:新田ゼラチン株式会社

(2020年11月30日発行「素材のちから」第39号掲載記事)

※「素材のちから」本誌をPDFでご覧になりたい方はこちら

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?