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《スペイン情報》 断崖絶壁の上の白い村

スペインで一番美しい田舎町で楽しむ食事 
圧倒的なロケーションを持つ、スペイン有数のグルメな土地 

文・撮影/市川路美 

スペインで一番おすすめの田舎町

スペインは何処もかしこも見所が盛り沢山の、世界を代表する観光大国。バルセロナなどの大都市も魅力的ですが、絶対に訪れて欲しいのが小さな田舎町。スペインらしいエッセンスがギュギュッと詰め込まれています。

大自然の中にある圧倒的なロケーションと、味のある鄙びた雰囲気が大きなチャームポイントで、事あるごとに「スペインでは必ず田舎町も訪れて下さい」とアドバイスしていますが、そうなると一番よく聞かれるのが「どの町がお勧めですか?」の質問。お勧めしたい町が星の数ほどある事に加え、スペインは地方ごとに全く異なる雰囲気を持つので、一番を決めるのが本当に難しいです。

苦渋の選択ではありますが、スペインを初めて訪れる方達にはロンダの町をお勧めしています。スペイン南部のアンダルシア地方に位置するロンダは、外国人観光客がイメージするスペインをそのまま再現したかのような町。青い空と白い家並みのコントラストが眩しい、スペインを代表する「白い村」です。基本的にアンダルシア地方の村々は何処も白いのですが、その中でも「一番美しい白い村」とされるのがロンダ。白い村のくくりを超えた、何か別次元の美しさだと思います。

人口3万5千人を抱えるので、村と言うには大き過ぎるかもしれません。でものんびりした田舎の雰囲気が隅々にまで浸透しているので、「大きな規模の白い村」みたいな感じでしょうか。

スペインの白い村を代表する場所ではありますが、ロンダの最大の魅力は、その特殊なロケーションにあります。海抜739メートルの断崖絶壁の上に造られた町なんです。

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こぢんまりとした旧市街とバスや電車の駅がある新市街の間には100メートルの渓谷があり、この2つのエリアを結ぶ橋がロンダの町のシンボル的存在となっています。

スペイン語で「新しい橋」を意味するプエンテ・ヌエボ。

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18世紀の橋なので、そんなに新しい訳ではありません。直ぐ近くのローマ時代からの橋を「古い橋」と呼んでいるので、それに比べたら新しいの意味です。

建築当時は世界で最も高い所に架けられた橋でした。98メートルある橋の上から下を覗き込むと、高所恐怖症でなくてもキュッと身が締め付けらるような、何とも言えない絶景を見る事が出来ます。

橋の上からの景色も素敵ですが、一番の絶景は崖の下から見上げる眺めだと思います。文字通りの断崖絶壁の上にあるロンダの白い町並みと美しい橋、長閑な大自然の圧倒的な大パノラマが広がります。反対側の古い方の橋、プエンテ・ビエホから見上げるロンダの町も捨て難く素敵です。

いずれにせよ、ロンダを訪れると登って降りてを繰り返す事になるかと思います。体力が必要ですが、頑張った後には絶対後悔しない素晴らしい景色が待っています。

美しいだけでなく美味しさも大きな魅力

ロンダは美しいだけでなく、グルメな土地としても大変有名な場所。何を食べても美味しくて、更に安いです。殆どのレストランが小皿料理を提供するので、色々な物を少しずつ沢山食べられるのも魅力の一つ。

週末になるとロンダ周辺に住むスペイン人達が、美味しい物を求めてロンダへやって来ます。観光客以上にロンダの人達も外食が大好きなので、小さな町には本当に沢山のレストランやバーがひしめいています。

美食の町として有名なロンダは、レストランの質が総じて高いので、何処で何を食べても美味しいです。地元の人達で賑わうレストランなら、更に安さが期待出来ます。

お勧めなのが古い方の橋、プエンテ・ビエホにあるカルロス5世門をくぐった先にあるエリア。カルロス5世門を抜けて新市街の方へずんずん進むと、地元の人達で賑わうバーやレストランが沢山あります。旧市街にあるレストランは美味しいだけでなく、雰囲気のある内装や素晴らしい景色を楽しめるレストランが多いです。プラスα込みとなるので、お値段がかなり高くなります。

反対に新市街にあるレストランは地元の人達が通うので、安くて美味しいがモットー。その分雰囲気の無いレストランが多いのですが、カルロス5世門近辺は旧市街寄りの新市街なので、雰囲気と安さを兼ねた良い所取りのエリアとなっています。

ロンダで見つけた美味しいモノ

そんなカルロス5世門近辺にある一番人気のレストランで、お勧めの小皿料理を堪能してきました。

まずは日本人も大好きなポテトサラダ。スペイン人も大好きで、飲みの席には必ず登場します。

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茹でたジャガイモとお好みの具をマヨネーズで和えた料理で、通常は缶詰のツナを使うのですが、ロンダの町では茹でたタコを使っている店が多かったです。タコ好きな日本人としては、これだけでロンダの町の印象が良くなってしまいます。タコ、ジャガイモ、マヨネーズの組み合わせは、ハズレのない美味しさでした。

ミートボールもスペイン人が大好きな一品です。肉に玉ねぎは加えず、つなぎも少ない肉感の強いミートボールでした。

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ミートボールに卵を絡め、一度揚げてからトマトソースで煮込むのが美味しさの秘密なのだそう。

コロッケも根強い人気を誇ります。ビールには世界共通で揚げ物が一番。スペインのコロッケは日本で言うクリームコロッケが主体です。色々な種類がありますが、一番ポピュラーなのが生ハム入りクリームコロッケ。でもロンダの名物はオックステールの煮込み入りクリームコロッケです。

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ロンダは闘牛でも有名な土地で、オックステールの煮込みが郷土料理となっています。抜群の美味しさで、郷土料理入りコロッケは、地方都市を訪れる楽しみの一つだと思います。色々な場所で食べ比べて、一番美味しいコロッケを見つけて下さい。

オックステールだけでなく、ロンダは牛肉も美味しい土地。牛の赤身の肉はシンプルに調理するのがベストです。

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焼いてから岩塩を振っただけのシンプルな一品だったのですが、赤身の美味しさが口の中いっぱいに広がって至福の味でした。

スライスしたパンにトマトソースを塗り、スモークサーモンをのせたオープンサンドウィッチも人気があります。

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アンダルシア地方ではサーモンよりもバカラオと呼ばれる白身のタラの冷燻の方が人気があります。味わえる場所が少ないので、サーモンではない魚の冷燻があったら絶対に試してみて下さい。サーモンよりさっぱりしています。

ロンダのおすすめスポット

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ロンダの町は100メートルの断崖絶壁の上にあり、更には城壁で囲まれています。これほど攻めにくい場所も珍しいのではないでしょうか。

城壁は広い所で1メートル位の幅があり、歩くように整備はされていませんが、誰でも勝手に登る事が出来ます。高所恐怖症の人だと少し怖いかもしれませんが、ゆっくり時間を過ごして欲しい素敵な場所。城壁から眺めるロンダの白い町並みと、何処までも続くアンダルシアの乾いた大地の眺めが素晴らしく、時が経つのを忘れてしまいます。偶に見える白色の粒々の固まりは放牧の羊の群れ。見晴らしが良いので本当に遠くまで見渡せます。

コロナ禍の今、国外に出られないスペイン人達は週末になると地方都市を訪れて絶景とグルメを楽しんでいます。ロンダ周辺には有名な白い村が点在しているので、ロンダを拠点にしてスペインの白い村巡りをする人が多いです。

コロナが終結したら是非訪れて欲しい、スペインで一番お勧めの田舎町です。


(2021年9月30日発行「素材のちから」第42号掲載記事)

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