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命に繋がるラーメンを命の塩でつくる。

文・撮影/長尾謙一 

ぬちまーす 
(素材のちから第42号より) 

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〝ラーメン〟は、おいしくて健康的な食べ物でなくてはならない。

健康なラーメンには健康な塩が必要だ 
生命が誕生したと言われる海の水をそのまま塩にしたら、そこには生命に必要なミネラルがたくさん含まれている。沖縄宮城島沖の海水を〝常温瞬間空中結晶製塩法〟で塩にした「ぬちまーす」は、目指すラーメンをつくる理想の相棒になった。

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店主 早坂 雅晶 さん

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五福星(うーふーしん)  宮城県仙台市泉区
子供やお年寄りまで安心して食べられる、健康を追求するラーメンの店。店主の早坂氏は、蚕からつくられる高品質なタンパク質「シルク」を練り込んだ〝シルク麺〟を開発した自家製麺のスペシャリスト。その麺質はしなやかでなめらか。自ら見つけた素材も苦労して編み出した技術も惜しみなく公開し広く伝える。宮城県のエリアを大きく超えて全国にその名をとどろかす名店。

「ぬちまーす」は沖縄の方言で〝命の塩〟という意味

ラーメンが大好きという人はとても多い。日本人にとってラーメンは国民食となり、世界にまでその食文化は輸出され人気を博している。

さて、あらためて「ラーメンは健康的なメニューか?」と聞かれると、ほとんどの人は首をかしげるだろう。ラーメンは魔力のようなおいしさを持ちながら、それは決してヘルシーとは言い難い。

その理由はいくつかあるが、ラーメンには多くの塩分が含まれていることがまず挙げられる。ガツンとおいしいスープには多くの塩分が含まれているし、麺にも練り込まれている。

そんな中、おいしくて身体にもいいラーメンを提供する名店が仙台にあると聞いた。五福星(うーふーしん)がその店だ。早速お店にお伺いして店主の早坂氏に話を聞いた。

五福星のラーメンを一言で分かりやすく表現してくださいという問いに、「大げさな話かもしれませんが、スムーズに命に繋がるラーメンです。」と早坂氏は答えてくれた。

早坂氏は「ぬちまーす」を使っている。出会ったのはもう20年以上前のことだが、当時まだ若かった早坂氏はその価値がよく分からず、「高い塩だな。」程度にしか思わなかった。

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その後、早坂氏は仕事中に大きな事故に遭い死に直面することになる。一か月間寝たきりで流動食や点滴で過ごす中、命の大切さに気づく。心から「命に繋がるラーメンをつくりたい。」と思ったそうだ。その時に思い出したのが「ぬちまーす」だった。

〝ぬち〟は沖縄の言葉で〝命〟、〝まーす〟は〝塩〟という意味、つまり「ぬちまーす」は沖縄の方言で〝命の塩〟という意味なのだ。

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〝命に繋がる〟という言葉を使うと大げさに聞こえるが、健康なラーメンをつくるということは人の身体をつくり、命を守る、そういうことだ。

つるんとして、しなやかな〝シルク麺〟には「ぬちまーす」を練り込む。

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「ぬちまーす」で命に繋がるラーメンをつくる

今、一般的に出回っている塩は〝塩化ナトリウム〟で、塩化ナトリウム99.5%という純度だ。1997年まで専売法が施行されている間は日本で塩と言えばこれしかないに等しかったし、専売法が廃止されて塩の販売が自由化されたが、今でも塩と言えばミネラルを取り除いた99.5%純度の〝塩化ナトリウム〟が使われる。

さて、塩を取りすぎると高血圧を招くと言われるが、これは塩に含まれるナトリウムの過剰摂取が原因だ。このナトリウムを体の外へ排出するのがカリウムというミネラルであり、人の体にとって重要な役割を持っているのだ。
「ぬちまーす」にはカリウムをはじめとする21種類のミネラルがバランスよく含まれ、ミネラルの含有量世界一の塩としてギネスブックの認定を受けている。

ミネラルは人間の健康には不可欠なもの。早坂氏が「命に繋がるラーメンをつくりたい。」とラーメンづくりに集中しはじめた時に、塩を「ぬちまーす」に変えたことは必然だったと言える。

早坂氏はさらに探求を続けた。麺にシルクを練り込んだのだ。シルクとは絹のことだ。

天然の蚕からとれるシルクの成分には保湿効果があり、その美容効果が注目され、さらに吸収力のいいタンパク質として食用にも使われる。

ゲル状のシルクを「ぬちまーす」とともに麺に練り込み、氷点下製麺法という独自に編み出した製法でグルテンの偏りのない生地に仕上げ〝シルク麺〟をつくり上げた。

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こうしてつくられる多加水な麺はしなやかさが違う。つるりと艶やかでプリプリしている。時間が経ってものびないのは驚きだ。

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チャーシューには、豚を健康に育てる山形県平田牧場の三元豚と金華豚を使う。肥育日数が240日を超える肉質は、すっきりとした中に濃厚な旨みを持つ。ワカメは漁師が収穫したものを海水のまま運んでもらい、マイナス60℃以下の超低温で瞬間凍結させて、毎朝茹でて使う。

さらに店で使う水は、磁気を通して豊富なマイナスイオンを発生させる特殊な活水器を使い、調理によって水の分子の大きさまで使い分けるのだ。

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命に繋がるラーメン
シルクと「ぬちまーす」を練り込んだ〝シルク麺〟、平田牧場の金華豚を使った〝チャーシュー〟、土壌改良して元気になった樹からとれた黄色の完熟梅と生姜でつくる〝梅生姜〟、海水と一緒に凍らせたものを浜茹でにした〝ワカメ〟、その日の朝に炊いたフレッシュなだし、すべての素材が命の大切さを語りかけてくる。

「ラーメン屋とは、あなたにとって何ですか?」と聞くと〝ビジネス〟だと答える人がいるだろうが、早坂氏に伺えば間違いなく〝生き様〟と答えるだろう。きっとラーメンをたくさん売るよりも、たくさんのお客様を喜ばせることが自分の人生だと考えているはずだ。このラーメンを食べれば分かる。


協力/お問い合わせ:伊那食品工業株式会社

(2021年9月30日発行「素材のちから」第42号掲載記事)

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