見出し画像

SDGsなオマール

水産資源を最大限にいかし、無から有を生み出した商品 
オマール海老にはさまざまな商品の加工形態があるが、基本的にはホールで出荷されるもの以外はテール、クロー、ヘッドに分けられ、出汁を引く以外に料理の用途がないヘッドは一部を除き廃棄されてきた。
今から9年前の2013年、この廃棄されるオマールヘッドを使って新たな商品づくりがはじまった。やがて「フォン・ド・オマール」、「グラス・ド・オマール」、「カナッペ・ド・オマール」、「オマールサラダミート」と次々に商品開発は進み、これらは世界に販売されている。
無から有を生み出すこのプロダクトは水産資源を最大限に利用し、地元カナダに雇用も生んだ。まさに〝SDGsなオマール〟だ。

文・撮影/長尾謙一 
料理/横田渉 

《無から有を生み出したオマール商品シリーズ》
 フォン・ド・オマール
 グラス・ド・オマール
 カナッペ・ド・オマール
 オマールサラダミート
(素材のちから第45号より)

海の豊かさを、持続可能な形で最大限に利用したオマール商品。

今さらながらSDGsとは…

SDGsとは、世界中の人たちが目指す国際目標であり、すべての人々にとってよりよい未来を築き、その未来を持続可能なものにするためのものだ。その期限は2030年だから、それほど時間はない。

世界的目標は17あるが、目標の14番目に〝海の豊かさを守ろう〟がある。海洋ゴミによる環境汚染や乱獲をとりあげ、これに対応することで海洋と海洋資源を保護し、海の豊かさを持続可能な形で利用することを目指している。

さて、今回ご紹介する「フォン・ド・オマール」、「グラス・ド・オマール」、「カナッペ・ド・オマール」、「オマールサラダミート」の4品は、従来廃棄されていたオマール海老のヘッドを有効利用してつくられたオマール商品である。

原料のオマール海老は世界的な産地であるカナダのマリタイムエリアで漁獲される。もともとこのエリアは海の環境汚染もなく、乱獲もない、持続可能な水産業が営まれてきた。廃棄されていたオマールヘッドを原料にさらに新たな商品をつくることは利益を生み出し、これまでにも増して持続可能な水産業を展開し地域に貢献している。

これは海の豊かさを持続可能な形で利用するというSDGsの目標とぴったり一致する。

これからのキッチン事情を先取るアイテム

もともとオマール海老はすべてホールで出荷されていたはずだが、やがて簡便性やゴミの問題でパーツごとに分けられるようになり、殻をむいた商品もできた。今では生のむき身だけという商品もある。

さらに、キッチンではオマール海老を調理する技術を持つスタッフが少なくなっていくにつれて「フォン・ド・オマール」や「グラス・ド・オマール」、「カナッペ・ド・オマール」、「オマールサラダミート」などの商品が求められるようになった。人手不足、労働時間の短縮、技術不足、ゴミの削減は、ここ30年間の世界的な流れだ。「無から有を生み出したオマール商品シリーズ」は、こうした課題を解決してくれる。

オマール海老はレストランだけの高級食材ではなくなった

それでは料理を試作しながら商品をご説明しよう。
まずは〝白身魚とオマールタルタルのバーガー〟をつくってみた。白身魚の上にのせるタルタルソースにはオマール海老の身がたっぷり入っている。ここで使うオマール商品は「オマールサラダミート」と「カナッペ・ド・オマール」。

白身魚とオマールタルタルのバーガー

「オマールサラダミート」は、高圧の噴射水流を使いオマールのヘッドに含まれる肩肉の身を取り出したものだ。オマール海老の細い足に高い気圧をかけてむいた身もこれに加えてある。

「オマールサラダミート」の特長は、価格がリーズナブルなことだ。オマール海老のむき身商品と比べて約4分の1。高圧の噴射水流を使って身を取り出すため、むき身商品に比べて旨みや香りは少し弱いが、オマール海老の味噌、内子、肩肉をブレンドした「カナッペ・ド・オマール」と合わせることで香り、旨み、甘みがフォローでき濃厚感が増す。

「オマールサラダミート」に「カナッペ・ド・オマール」をしっかりと和えてから、ゆで卵、マヨネーズ、みじん切りにして水にさらした玉ねぎ、ピクルス、パセリのみじん切りを加えタルタルソースをつくる。これをトマト、レタス、白身魚のフライと一緒にバンズに挟んだ。

そもそもこのタルタルはエビマヨという言葉があるほど相性がいいのだが、「カナッペ・ド・オマール」が持つオマール海老の味噌と内子が、通常の海老では味わえない濃厚感を楽しませてくれる。オマール海老の身もたっぷり入っていて、海老好きにはたまらないタルタルだ。

次は〝オマール海老のリゾット〟をつくってみる。あらかじめ米は「フォン・ド・オマール」、水、ニンニクのみじん切り、玉ねぎのみじん切り、塩を加え硬めのオマールライスを炊いておき、オーダーが入ったら仕上げるスタイルにした。

オマール海老のリゾット

「フォン・ド・オマール」の特長は、その純粋な風味にある。原料はオマールヘッドに含まれる肩肉、ニンニク、玉ねぎ、トマト、オリーブオイル、白ワイン、これだけだ。化学調味料も酒も一切入れない。シェフがキッチンでつくるものと同じ本格派のフォンだ。

仕上げは、「カナッペ・ド・オマール」を水でのばして加熱し、そこに「オマールサラダミート」と炊いたオマールライスを加え混ぜ、バター、パルメザンチーズを加え塩で味を調え、パセリをふって仕上げた。濃厚な香りも味もたまらない、オマール感あふれるとはこのことだろう。

その他にも、オムレツを巻く時に、「オマールサラダミート」、「カナッペ・ド・オマール」、ケチャップを混ぜて加えれば〝オマール海老のミートオムレツ〟ができる。

オマール海老のミートオムレツ

また、マーガリンと「カナッペ・ド・オマール」を合わせたオマールマーガリンスプレッドをつくっておき、食パンにたっぷり塗って焼いてもおいしい。オマールバターをつくっておけば、パスタや魚料理にも合わせることができる。

オマールソーストースト

オマール海老は、レストランだけの高級食材ではなくなった。

「グラス・ド・オマール」の実力を知る

次に「グラス・ド・オマール」を使った料理をご紹介したい。「グラス・ド・オマール」は「フォン・ド・オマール」を減圧低温濃縮することにより、フォンの香りや味にダメージを与えることなく濃縮したものだ。
キッチンでフォンを煮詰める場合、鍋肌でフォンを焦がしてしまうと焦げ臭がついてしまうため、スタッフは鍋から離れられない。そんな手間もこの商品は省いてくれる。

また、液体を濃縮すると、良い点と悪い点がはっきり出てくる。濃縮すると感じなかった雑味がはっきりと出てくるはずが、これほど濃縮しても雑味はまったく感じられず、オマールの凝縮した濃厚感しか存在しない。この品質は「フォン・ド・オマール」がいかにピュアであるかを物語る。

さて、ピザを焼いてみよう。「グラス・ド・オマール」と「カナッペ・ド・オマール」をトマトソースと合わせ生地に塗り、ミニトマト、ニンニク、パルメザンチーズ、オレガノ、オリーブオイル、塩で焼き上げる〝オマール海老のマリナーラピッツァ〟だ。

オマール海老のマリナーラピッツァ

しっかりと焼いて、濃厚なオマールソースの焦げた生地が楽しめるようにしてみたが、サクッと焼けた生地にこの香ばしさはたまらない。

最後は「グラス・ド・オマール」と白ワインビネガー、オリーブオイル、オレガノ、塩でドレッシングをつくり、「オマールサラダミート」とトマトをサラダにしてみた。

オマール海老のサラダミートとトマトのサラダ

ドレッシングは、オマールの濃厚感とビネガーの酸味のバランスが熟成したバルサミコのようだ。トマトは甘みを増し「オマールサラダミート」は風味がいきいきとしている。オマールのドレッシングは結構おもしろい。

さて、SDGsなオマールをご紹介したが、いかがだっただろうか。パスタやカレー、ピラフ、ラーメンや春巻きなど応用メニューは広い。ぜひお役立ていただきたい。


協力/お問い合わせ:株式会社インタークレスト

(2022年6月30日発行「素材のちから」第45号掲載記事)

「素材のちから」本誌をPDFでご覧になりたい方はこちら

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?