3つの〝最適〟を持つフィーレ
品質の高い冷凍魚をつくるための切り札はどこにもない。〝原料〟〝加工〟〝保管〟の3つの基本的な工程を〝最適〟に実行することで冷凍魚の品質は決まる。そして〝最適〟のレベルは必ず商品のおいしさと一致する。
文・撮影/長尾謙一
料理/横田渉
ナチュラルシー
お刺身フィーレシリーズ 冷凍(全7種)
・金華いわしフィーレ
・金華あじフィーレ
・金華さばフィーレ
・さんまフィーレ
・天然サクラマスフィーレ
・アブラガレイフィーレ
・サメガレイフィーレ
(素材のちから第45号より)
日本の魚を使い、日本でつくる、おいしさ優先の生食用フィーレ。
水産物はとにかく〝安い〟が最優先の価値だった
これまで日本で販売されてきた業務用の水産加工品は、海外加工して輸入されたものを中心に、調理現場の手間が省けるように加工度を上げ、さらに安さを優先したものがつくられてきた。簡便性と価格競争力を重要視するあまり、品質は二の次になってはいなかっただろうか。とにかく〝安い〟が最優先の価値だった。
世界のサプライチェーンが切れ、今までのように低コストなものが安定して手に入らなくなった今、あらためてこうしたことに疑問を持つ人もいるだろう。国内加工では安価に手に入る輸入原料を使い、日本で獲れた水産品は海外に輸出する。こうして低コストを追い続けた結果、日本国内の市場価格は低すぎて海外の国々に水産物を買い負けるようになった。高く買う国に物が動くのは当然のことだ。さらに為替が追い打ちをかけている。
3つの〝最適〟を持つフィーレとは
「ナチュラルシー お刺身フィーレシリーズ」は、日本の魚を使い、日本でつくる、おいしさ優先の生食用フィーレだ。原料は各産地で目利きをして〝最適〟なものを手に入れるが、これには産地の人たちとの深い連携が必要だ。次にイワシやサンマ、アジなど魚体の小さなものとマスやカレイのような比較的魚体の大きなものでは工程を変え、原料がライン上で停滞し鮮度が落ちないよう、それぞれの魚種に合う〝最適〟な加工を行う。まさにスピード勝負だ。滅菌海水や海水氷の適切な使用、塩締めや凍結方法のチョイスなど、さらに工夫することによって品質を上げようと努力している。
こうしてつくられた商品は、温度の上下がないよう厳格に一定の温度で管理された冷凍倉庫で〝最適〟保管される。この保管レベルは私たちが認識している以上に商品に大きく影響する。
「ナチュラルシー お刺身フィーレシリーズ」は全7種。鮮度の落ちやすいアジやサンマを食べてみる。なめろうにしたアジも刺身にしたサンマにも臭みはまったくない。たたいたアジはとろりとしていて、合わせたカツオだしのジュレとなめらかに溶けるようだ。
サンマも身の歯ごたえがよく、すっきりと甘い脂が楽しめる。まさに3つの〝最適〟が品質にあらわれているといえよう。
それでは「ナチュラルシー お刺身フィーレシリーズ」の全7種をご紹介したい。
金華いわしフィーレ
身のやわらかい、デリケートなおいしさを楽しむ
鮮度の落ちやすいイワシを〝原料〟〝加工〟〝保管〟の3つの〝最適〟で、活きのいいイワシの品質を保っている。身のやわらかさと脂のノリが絶妙で、口の中でとろけていくようなおいしさを楽しむことができる。
金華あじフィーレ
口に入れた瞬間の脂の旨さは金華あじの真骨頂だ
金華山沖は餌となるプランクトンが多いため、脂ノリがよい良質なアジが漁獲される。その脂ノリのよさから、刺身にすると抜群においしい。刺身以外にもフライ、塩焼きなど、さまざまなメニューで楽しめる。
金華さばフィーレ
大型のサバならではの脂の旨みを味わう
石巻市の東側、金華山沖で漁獲される魚体500g以上の金華さばは、全国にその名が知られたブランドさばだ。大きな身にのった圧倒的な脂は、後味がすっきりとしていて臭みがなく旨みだけが口に残る。
さんまフィーレ
とろりと甘い脂は鮮度の証
北海道東沖で良質の動物性プランクトンを食べて脂を蓄え丸々と太ったサンマは、10月中旬頃から本州へと南下をはじめる。この脂肪分が多いサンマを宮城県沖で漁獲する。鮮度のよさを刺身で味わって欲しい。
天然サクラマスフィーレ
天然ならではの脂の旨みと香りを存分に味わう
〝幻の魚〟と呼ばれるラウンドサイズ2.5kgおよび3kgアップの〝脂ののった天然サクラマス〟をフィーレに。天然ならではの臭みのないすっきりとした香りと、濃厚な旨みのある脂を刺身で楽しみたい。
アブラガレイフィーレ
アブラガレイの刺身は希少なメニューだ
脂たっぷりでとろけるほど甘くコクのあるアブラガレイは、漢字では「油鰈」と書かれるほど身肉に脂肪分が多い。鮮度がいいものはなかなか手に入らず、身はやわらかく口溶け感ある脂がおいしい。
サメガレイフィーレ
歯ごたえよく噛めば噛むほど脂が広がるおいしさ
クセのない味わいの白身で、身には弾力がありコリコリしている。刺身で食べると上質の脂がたっぷりとのっていて、とろっとした旨みが楽しめる。甘みのある脂はすっきりとして、食べすぎてもくどくない。
「お刺身フィーレシリーズ」は生食メニューで存分に力を発揮
それでは「ナチュラルシー お刺身フィーレシリーズ」を料理してみよう。まず、「天然サクラマスフィーレ」で生食メニューとしてポピュラーな〝カルパッチョ〟をつくってみた。
「天然サクラマスフィーレ」を薄く切り皿に並べ、マリネしておいた玉ねぎをたっぷりと盛ってオリーブオイルを回しかける。塩、胡椒をふり、ディルとピンクペッパーを添え、アクセントにレモンを絞った。ごまかしのきかない素材勝負のメニューだが、香り、旨み、身の口あたりと天然の魅力が炸裂している。
何といってもサーモン独特の臭いがまったくなく、身はねっとりとして旨みが濃厚だ。上にのせた玉ねぎのマリネとサーモンを絡めて食べるとさらにおいしく、レモンの酸味が味をキリッと引き締めている。とても品質の高いフィーレだ。
次に「アブラガレイフィーレ」を〝サルピコン〟 にしてみた。「アブラガレイフィーレ」を食べやすい2cmの角切りにし、トマト、キュウリ、紫玉ねぎも細かく刻んで、白ワインビネガー、オリーブオイル、塩、胡椒でつくるドレッシングで和えた。
アブラガレイの身には弾力感があり、角切りにした身はコリコリしている。噛むたびに身から甘みが流れ出し、細かく刻んだ野菜との食感のリズムが心地いい。アブラガレイの魅力を楽しむメニューになった。
最後に「金華さばフィーレ」の皮面を炙ってサラダにしてみた。ドレッシングはごま油と白ワインビネガー、塩。パクチーをたっぷりと添えて山椒のホールを潰してふった。
もちろんサバの臭みはなく、旨みのある脂が口の中に広がり身が甘い。ごま油の香りと炙った皮の香ばしさ、そして山椒のしびれが脂をさらにおいしくしている。金華さばの脂のおいしさを再確認した。
どのメニューも切って盛り付けるシンプルなものだが、こうしたメニューでは素材の品質がものをいう。今回は生食メニューを試作してみたが、加熱メニューでもその力を発揮するだろう。
これからの外食店は、調理スタッフが足りない中でクオリティーの高いメニューを出さなければならない。そのためには「ナチュラルシー お刺身フィーレシリーズ」のような、品質を落とさずに簡便性を上げた商品が必要だ。
今まで、おまじないをかけられたように安さを追求してきた外食店も、一旦立ち止まって考える時がきたような気がする。
(2022年6月30日発行「素材のちから」第45号掲載記事)
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