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目が細くてよかった 花粉が入りにくいから

自分の顔写真で、二重まぶたの手術をした時の見え方を10パターンシミュレーション、29800円というコマーシャルを見て、ハルコは「安っ!」と呟いた。今度こそ手術をしてみようかしら。

ハルコは小さい頃から目が細くて一重だった。平安時代ならモテたのかもしれないが、テレビで見るアイドルやタレントはみんなまん丸としたぱっちり目だった。大学時代に整形を決意して病院に行ったが、見積もり金額をみてあきらめた。卒業旅行でイタリアに行ったときにジローラモさんみたいな伊達男にナンパされた。映画みたいな一夜を過ごし「セクシー」「ミステリアス」「アーモンドアイ」などと褒められてから、これも自分の個性か、と思えるようになった。

ジローラモさんみたいな男とはメアドの交換をしていて、卒業旅行から5年くらい経ったある日、突然メールが届いた。「来月、日本に行く。お寿司に連れて行ってくれ」みたいな内容だった。待ち合わせ場所の日暮里駅で一番お気に入りのスーツ姿で待っていると、彼は家族3人で現れた。身長が170cmくらいあるセクシーな妻と、お人形みたいに可愛い娘と一緒に、上野の回転寿司へ行った。寿司は奢ってくれたが、ジロモドキとはそれっきりだ。

目が細いことのメリットなんて何一つないと思っていたが「目がぱっちりした奴は花粉に弱い」という仮説を立ててから、3月が少しだけ楽しみになった。私より3倍目が大きいぱっちり女子たちに向かって、花粉よ花粉よ飛んでいけ!と念じながら、ただでさえ細い目をさらに細めた。

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