仕事のモヤモヤは仕事でしか解消できない

佐々木と山崎は行きつけの中華料理屋に入ると
瓶ビール２本と餃子、青菜炒め、海老チリ、
チャーハンにニラそばを注文した。

ランチへ向かう道中で
営業の品川から電話がかかってきて
コンペで負けたことを知らされた。

佐々木にとってはかなり重要なコンペで
プレゼンまでの２週間はまさに寝食を
忘れて取り組んだ。最近だとめずらしく
会社に泊まりこみ、カンプやビデオコンテも
たくさん作った。ほとんど家に帰らず
妻からは浮気してるのではと疑われた。
髭ぼうぼうで帰ったら犬に吠えられた。
若手の山崎もよく頑張ってくれた。

佐々木山崎ペアのプレゼンは大いに盛り上がり
最後には拍手まで起きた。
しかし結果は、５チーム中４位だったらしい。

「完敗ですわ。かんぱーい」
「こんな時は飲むしかないっすね」
「俺たちは完璧にオリエン通りに提案したのにさ、１位に選ばれたのはアイドルグループを起用した案らしいわ」
「え？何すかそれ」
「社長の姪っ子かなんかが所属してるグループが歌って踊ってニッコリ。決め台詞は、一生住みたい家、見つけた！だって」
「やばいっすね」
「でもあのグループすごい人気だからさ、おたくが買うんじゃない？」
「さすがに家は買えないんじゃ……」
「だよな？100円とか1000円の商品ならともかく、5000万円の商品でアイドルってよー」
「見たことないっすね」
「今回のキーワードって洗練・信頼・存在感って言われてたじゃん？」
「はい。３Ｓって何度も言われてました」
「完全にオリエンミスだよな。もしくは出来レース。あーあ、馬鹿らしい。やる気メーターゼロ」
「もう今日はキャバクラでも行きますか？！」
「行かない」
「え、」
「次のコンペで勝ったら行く」
「次っていつなんすか？」
「再来週。さっき品川から言われた」
「マジっすか？」
「次のは佐々木さんの作風芸風に合ってますから！ってお願いされた」
「チャンスっすね！」
「キーワードは３Ｋだそうだ。かっこよく、こだわりがあって、クール。まさに俺にぴったりの案件！次こそ勝つ！」
「佐々木さん」
「ん？」
「クールはＣです」
「知ってるよ。でもクライアントがＫって言ったらＫ。そういうもんなの」
「麻痺してますよ佐々木さん！」
「勝てばビールもうまいしキャバクラも楽しいんだから。かっこよく、こだわりがあって、クールな３Ｋプレゼンをするんだよ俺は！」

指でＫ

(そのポーズめっちゃダサいけど次は勝てるといいですね佐々木さん)