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近所のパン屋のおじちゃんと甘い恋に落ちかけている話

この街に引越してから2週間くらい経った頃だろうか。マンションから徒歩5、6分のところに、いい雰囲気のパン屋さんを見つけた。

街歩きなんかしなくても、Googleマップに「パン屋」「ベーカリー」などと打ち込めばすぐに所在地と評判が分かってしまうこの時代だが、わたしは生まれてこのかた 一意専心 猪突猛進 骨の髄まで《ごはん派》なので、パンを買いたいと思うことがほとんどない。

通勤路とはちがう道なので毎日観察しているわけではないが、ベビーカーを押すママ友軍団、近所の女子大の学生さん、仲睦まじい老夫婦など、幅広い層に受け入れられている(っぽい)。緑あふれるテラス席も気分が良さそうだ(おそらく)。

ごはん派のわたしとしても、一度のぞいてみるか?と中に入ってみたところ、たしかにおいしそうなパンがずらりと並んでいた。

ほにゃららパン焼き立てでーす!という店員さんの声。トングを持ちながら嬉しそうな顔で迷っているマダムたち。コンビニの惣菜パンやサンドイッチに比べると2倍から3倍はするんじゃないの?という価格帯だが、飛ぶように売れていく。

いにしえのトースト&トースター

パンって人気あるんだなぁ。お酒やタバコ、ギャンブルがやめられない人がいるように、毎日のパン(小麦粉)がやめられないという人もいるんだろうなぁ。

パン中? ブレッド中毒? フラワー中毒? パンチュウが、おぱんちゅうさぎみたいで可愛いねと思いながらにやにやしてたら、店員のおじちゃんと目が合った。

トレイもトングも持たずにやにやしているわたしは、おじちゃんの目にはだいぶ怪しくうつっただろうが、おじちゃんは優しい顔で会釈をしてくれた。わたしも慌てて小さく会釈した。

その瞬間、おじちゃんの胸のネームプレートに釘付け。そこには「ジャム太郎」と書かれていたのである!

声に出して読みたい日本語。みんな大好きジャムおじさんとハム太郎が混ざっている。一見おだやかな老紳士だが、実はものすごいジャム職人、ブーランジェならぬジャムリエなのかもしれない!

以来、私はそのパン屋さんの前を通りがかるたびにジャム太郎さんを探してしまう。店の外からジャム太郎さんが見えると、いた!と嬉しくなってお店に入る。目と目が合えば会釈する。この調子だと、もうすぐ恋が始まる。ジャムのように甘い恋が(←やかましい)

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