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未来から今を変える。



UNDOというワード。

UNDOとは、「元へ戻す」という意味です。
やり直し、元に戻す、取り消しなどのコマンド名で呼ばれる場合もあります。 UNDO機能を実行すると、直前に実行した複写や削除などの編集作業の結果がキャンセルされ、編集前の状態に戻ります。

この時、データは「過去の状態」に戻るので、時間軸においても可逆しているとも言えます。
もう少しこの状況を掘り下げてみると、データの状態は過去に戻っているけど、それを触っている私の状態は戻ってはいません。そう、非可逆です。
可逆したのは「データ」だけなんですね。データと私の時間軸は捻れた状態になっています。
この状態がおもしろくて「可逆・非可逆」について色々と調べていたら、
多摩美術大学情報デザイン学科メディア芸術コース教授/大学院エクスペリメンタル・ワークショップ(EWS)主任教授である久保田先生の講演動画に辿り着きました。これがめちゃくちゃ面白かったです。


参考書籍-2084年報告書-

この本の前書きではこんなことが書かれています。


なぜ温暖化を阻止できなかったのか。
アメリカの地質学者が描く悪夢の2084年。

時は2084年。すでに世界は深刻な気候温暖化で危機に直面している。
21世紀初めの10年、20年間には深刻な影響が明らかだったのに、政治家や化石燃料推進派は科学的根拠を否定し続け、科学者の警告を握りつぶした。
2050年以降世界各地で未曽有の事態が進行し、2084年には人類は生存の危機に瀕している──
主人公の歴史記録の研究者(2012年生)が、なぜ温暖化を阻止できなかったのかという疑問を念頭に、世界各地の記者や学者の歴史証言を取材して執筆する形で綴られるディストピアSF小説。


そして文章の中ではこんなことが言われています。
----今日生きている私たちがぜひ尋ねたいのは、今世紀前半、まだ時間があるときに、なぜ当時の人々は地球温暖化を、少なくとも、遅らせる行動に出なかったのか?-----

この本は、「2084年報告書」のタイトルのとおり、
2084年の視点から現在に問いかけられています。2084年の地球はこんなに大変な状態になってしまった。私たち人類はなぜこの状況を防ぐことができなかったのか、2024年であれば、まだあんなことも、こんなこともできたはずじゃないか!と。

この本のおもしろい構造

この本のおもしろさは、未来から現在にアクセスしている構造です。
「自己破壊的予言」という、現在を変化させるための手法を活用して、未来を変えようとしているところです。
例として、インフルエンザが流行する時期になると「感染者数予測」としてグラフなどを用いながら「このままだと感染者数は爆発的に増えてしまう」というようなニュースが流れることがあります。するとニュースを見た人の意識に「手を洗おう」「うがいしよう」といった抑止力が働きます。結果として、感染者数は予測数より軽減する。という事象です。
危機的な未来を見せることで、現在の認知や思考にアクセスし行動変容を促し、結果として未来を変えることができるのです。

可逆により未来から今を変えることができる。

今回の一連の話を私がおもしろいと感じたのは、
企業ブランディングの場面でも「可逆による未来から現在へのアクセス」が活用できると思ったからです。
社員に対しててエンゲージメントを高めたりモチベーションを上げるなど目標にした際に、「今を変容させて未来を変える」という時間の流れに囚われてしまい、どうしても現在に対してアプローチしてしまいがちです。
ここで、まずは「未来の姿」を共創的にイメージし、「そうならないために今、何ができるのか」「実現するためには何をするのか」といったアプローチができたらどうでしょうか。気づきや動機づけのパワーは違ってくるのではないでしょうか。
「過去は変えられない」という考え方は至極まっとうですが、「今をより良いものにしていこう」という目的で考えると、本当にそうなのか?と考えを巡らせることに価値があるんだと思います。

可逆を手法のひとつとして持っておく。

多様性の現代では、価値観は様々です。万能なフレームワークはないし、あったとするときっと効果的ではないでしょう。
状態や相手、求める結果などによって使い分ける手法を持っているか。これは「問いを立てる力」とイコールだと思いました。
そして、人の認知や行動にアクセスしようとする場合は「物語」が必要不可欠です。人は頭の中でイメージ<創造>できるから行動に移すのです。


今回の思考の旅も楽しかったです。面白い考え方に触れ、その構造を理解しながら自身の価値観と照らし合わせていく作業はなんとも豊かさに満ちていますね。

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