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会社のカルチャーは態度で示して浸透させる!freeeがコミュニケーションを「効率化しない」理由

人事向けコミュニティ「HRマーケティングラボ」で定期的に開催している勉強会。今回はfreee株式会社(以下、freee)でカルチャー推進部の部長をされている辻本 祐佳(つじもと・ゆか)さんにゲストスピーカーとしてお越しいただきました。

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もともと楽天株式会社で法務の仕事に携わっており、人事の仕事を始めたのはfreeeに移ってからの二年ほどだという辻本さん。freeeでは、カルチャー推進部としてカルチャー再定義プロジェクトに参画し、今も部長として様々な取り組みを仕掛け続けています。

採用や組織作りの要となる企業のカルチャーを、freeeではどのように定義し社員に浸透させているのか。そのために会社として意識していることや取り組んでいることについて伺いました。

カルチャーは社員それぞれの自主的な行動が作るもの

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freeeは2012年の設立からもうすぐ8年で、従業員数は現在506名(2019年6月末時点)。ミッションには「スモールビジネスを、世界の主役に。」を掲げ、SaaSビジネスとして主に会計ソフト、人事労務ソフトを提供しています。

現在のミッションは、これまでの「スモールビジネスに携わるすべての人が創造的な仕事にフォーカスできるよう」というものから、もっと普遍的かつ遠いものにしようと一昨年に再定義したもの。

ミッションは大事なものなんですが、会社によっていろんなやり方があります。そのミッションをどうやって達成していくか、そしてどういう人たちとどんな関係性の中でやっていくかというのが、会社のカルチャーだと考えています。

だけど、カルチャーは「作ろう」と思ってできるわけではありません。カルチャーは、日々みんながどう行動するかによってできていくもの。そうしてできていった先には、ルールとして縛らなくても、たとえ誰も見ていなくても、自然とみんながそういう風に行動するようになるものだと思うんです。

freeeでは、カルチャー作りや組織作りに対して「意思をもって人と時間を投資する必要がある」と考えています。お金というよりは、主に時間の投資ですね。その分、できるところは全部効率化して、効率化できない部分について投資しているんです。

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効率化していることとしては、以下のようなものがあります。

・ドキュメントのクラウド管理
・コミュニケーションはWorkPlaceを使用
・経理、人事労務は自社プロダクトを使用
・稟議もクラウド上でやりとり

このように、情報伝達に関しては効率化できるんですが、組織作りは効率化できない。だから、以下の3つのポイントを念頭に、人にしかできないことに対する投資をしています。

①自立的に動く個々の集まり
②強い一体感
③妥協せずぶつかりあう

一つ目のポイントは、「誰かに言われて動きます」ではダメだということ。誰かに言われずとも見られずとも動くようになるためには、会社のミッションやビジョン、価値基準に強い共感を得ていることが大事です。なので、何を大事にしたいのかを言語化して可視化してみんなに伝えるようにしています。

また、freeeの組織作りに対して、みんなが自分ごとと思えるよう全員で取り組みます。社内で起こっていることも、誰かが伝えてくるのを待つのではなく、いつでも自分から取りにいく。目標も自分たちで作る、という風にしているんです。

一人ひとりに考えてもらう時間を作ることが会社としての意思表明

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freeeは創業期からダイバーシティーを大事にしていたからこそ、カルチャーフィットすると思っていろんな人たちを採用してきました。しかしメンバーが急拡大する中で色んな人が採用に関わるようになり、「その採用はfreeeのカルチャーへのフィットではなく、ただ個人の好き嫌いを見るようになっていないか?」という課題が生まれたんです。

だから、今後「どういう人たちの集まりとして組織を作っていきたいのか」ということを考える必要がある。そこで、価値基準を改めて定義しようというプロジェクトが生まれました。

freeeで一番大事にしていることは「マジ価値」です。これは、「ユーザーにとって本質的に価値があると自信を持って言えること(をする)」という意味の造語。創業時から大事にしている考え方で、この価値観を支えるための色々な考え方が存在しています。

ただ、価値基準を再定義する過程で「誰かが決めてそれを社員に伝える」という方法では、ふだんfreeeが掲げているオープンやフラット、ムーブメントという考え方と矛盾が生じて説得力がないなと思ったので、全社員で話すことにしました。いくら上から「マジ価値」などと言われても、自分で考えないと腹落ちしないですよね。だから、当時の社員360人の仕事をストップしてでも考える時間を作った。つまり、意思をもって時間を投資したんです。

あとは、日々の話を「meeting-notes」として流して全員が見られるようにしたり、OKRも自分たちで決めてちゃんと運用しようということで、全社のOKRを社内のポータルで共有するようにしています。

いずれの施策にしても、「誰かが決めたルールではないこと」を会社としてずっと示し続ける必要があると思っていて。組織の話なども、誰かが決めてくるのではなく「みんなで話すよ」とすることで、「一人一人が自律的に考えることを求めている」という会社の意思を示すことになると考えています。

コミュニケーションを効率化しないことで価値観を浸透させる

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ただ、そもそも社員がお互いに遠い組織だと、「みんなで話そうよ」といった機会を作っても戸惑ってしまうと思うので、freeeではオフラインで集まる機会にこだわっています。

WorkPlace(Facebook社が提供している社内コミュニケーションツール)上では常に社内のニュースが流れているので、遠いチームの人が達成したことに対してもみんなで「おめでとう」と伝えるようにしたり。「人と人」として知り合っている、ということを大事にしているんです。

今の会社規模になっても毎週の全社集会をやっていますし、上場セレモニーのときも東証に行っているメンバーだけじゃなくて、全員で喜びを分かちあえるようにパーティーを開催しました。

だけど、「仲が良くて一体感があります」というだけじゃなくて、お互いに「それって違うよね」ということを指摘し合えることが大事。社長も新入社員もみんなが「マジ価値」に対して平等な立場なので、そこに対して一人ひとりが向き合う必要があるという話もするようにしています。

例えばfreeeではマネージャー(管理職)のことを「ジャーマネ」と呼ぶんですけど、「マジ価値」の前に対してはみんな平等で、上下の関係ではありません、ということを言葉から意識してもらいたいというのが理由です。だからジャーマネは、あくまで役割の一つとしてメンバーの才能を引き出しながら成果を出してほしいと伝えています。

他には、「失敗.js」という失敗したことをあえて共有し、お祭りのようにする取り組みがあります。失敗から得られた学びを共有することによって、みんなで成長することができる。これがfreeeの「あえて共有=あえ共」というカルチャーです。

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「カルチャーを作ろう」と思ってしまうと、どうしても訓示みたいになってしまうんですよね。私たちが価値基準を再定義したときも、こちら側から言ってしまうと押しつけのようになってしまうし、それだと社員に浸透しません。

では、どうしたらいいのか。それは、「会社が何を大事にするか」ということを態度で示すしかないんです。言行一致。freeeでは、人やコミュニケーションに関することは効率化しませんし、一つひとつの施策に対しても「マジ価値」や「ムーブメントにする」といった価値基準を反映させて、矛盾を作らないということが大事だと思っています。

社員を巻き込むコツは、トップダウンを感じさせない伝え方

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Q&Aセッション

以下、参加メンバーとのQ&Aセッションの内容をお届けします。

ー ジャーマネに昇格する際、どうやってカルチャーフィットしているか判断しているんですか?可視化できる仕組みなどあるんでしょうか?

可視化する仕組みはありませんが、ジャーマネになる前には、半年くらいのお試し期間を設ける場合もあります。もちろん、受け持つメンバーの数は少なくして負荷を下げていますが。お試し期間で「違うな」「合わないな」となったら元の職に戻ってもらいます。

お試し期間に入る前には、本人に対し「あなたは上に立つ人というわけではない」「これは昇格や出世ではない」と伝えています。ジャーマネになったところで、報酬が上がるというわけでもないので。

ー いくら「ジャーマネは上の立場じゃない」と言っていても、経営層にいきたいと思ったらキャリアパスとしてジャーマネを通ることになるんですよね?

意思決定に対する立場を完全にフラットにしてしまったら会社としての意思決定が難しくなってしまうので、組織としての階層は存在しますし、例えば経営層の多くはジャーマネとなっています。だけどそれは、その人が「偉い」とか「絶対に正しい」「何も口を出すことができない」といったことではありませんし、それは社員にも浸透させていきたいと思っています。freeersはマジ価値のもとに平等というのは共通する価値観です。

ー まだ会社の価値観が浸透しきっていないときって、共感はしているけど斜に構えてしまう……という社員もいると思います。そういう人たちを巻き込むコツはありますか?

そういう場合は、経営に近い側の人間が働きかけるのではなく、社員の中でも意識・関心の高い層を徐々に巻き込んで動きを作るようにしています。そうすると、自然と社員みんなが価値観を知っているという状態に近づけていけると考えています。

ー オフラインのイベントなどに意識・関心の高い人たちをアンバサダー的に巻き込もうと思っても、仕事が忙しいなどの理由で難しかったりしませんか?

オフラインのイベントでは、アンバサダーとして「あの人がやるんだったら面白そうだな」と思われる人を立てることがポイントになります。そのためには、アンバサダーの熱量を下げないことが大事。だから、こちらから「アサイン」するのではなく、「お誘い」に行くようにしています。その分、一人ひとりに対し時間を割くことにはなりますが、その人の熱量が大切なので。

ー とことん時間をかけてでも、トップダウンを感じさせないようなコミュニケーションを心掛けられているんですね。非常に参考になるお話、ありがとうございました!

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