11.冬休みの終わりと同時に再燃、悪夢再び。
私は出勤ペースを1週間のうち2〜3日に増やし、ぴぃは1人留守番をなんなくこなしていた。
その代わり、ぴぃの朝起きる時間も夜寝る時間も、今まで以上にルーズになった。
もう、それでも良しと思っていた。
ぴぃが私たちのいない時間を、自分なりに生きているという姿だけで、昼夜逆転の恐れより、自分で考えて自分で決めれる子になればいいと思えた。
放課後になればクラスのお友達とオンラインで会える。
失われたはずの時間が、まだ手元にあることが嬉しくてたまらないようだった。
まもなく冬休みに突入する。
冬休みは不登校児が最も心解放される連休。
ずっとお休みじゃんと思われがちだけど、長期休みはみんな休みだから、心の底から休めるのだ。
そして、みんな休みだから、朝からゲームに勤しむ。
ぴぃのオンラインタイムは、早い時は朝の9時から始まっていた。
それまで昼前ぐらいの時間に起きていたぴぃは、みんなとのゲームを楽しむために早起きになっていた。
それそれ、起きようと思えば起きれるんだ。
朝オンラインで集合して、お昼を食べたらまたオンライン集合。
日中は変わらずにいつものお友達が遊びに来る。
そして、夜ご飯を食べてまたオンライン集合する。
年末年始もご時世により、どこにも行けないのもみんな一緒、ただただ楽しい冬休みだった。
楽しかった冬休みはあっという間に終わってしまう。
私も年初めは職場へ行くため、今まで通りランチプレートを用意して、ぴぃが寝てる間に家を出る。
帰宅してみると、1月が誕生日月の私とパパのために、ぴぃが久しぶりに手書きの花の絵を書いて待っていてくれた。
そこには「おめでとう」ではなく、「ありがとう」と書いてあった。
陰影があって、鉛筆でぼかしを入れたりと、ぴぃのこだわりがたくさん詰まった素敵なお花の絵。
ずっとゲーム漬けだったのに、自分の部屋にこもって、1人で、パパと私を思って描いてくれたんだなと思うと、嬉しくてたまらなかった。
もう大丈夫かもと思った私は、平日は毎日出勤した。
冬休みが終わって2週間ほどだろうか、ぴぃの様子が明らかにおかしい。
手洗いの回数が増え、ドアノブや壁、床を見る不安そうな目つきが戻ってきた。
・・・ミッケが再燃してる。
ぴぃにも自覚があったようで、「最近ミッケが悪化してる気がする」と言い出した。
「冬休みに朝からお友達とゲームで遊べたのが楽しすぎて、それが終わっちゃって、不安とプレッシャーしか感じなくなったせいだと思う。」
と、ちゃんとミッケ発動の理由を自分なりに分析していた。
ただ、ミッケは意識すればするほど、抑えきれなくなる。
ただただ恐怖に怯えて、手洗いや着替えを重ねてしまうことでしか、対処できなかった。
気晴らしにといつも来てくれるお友達を誘って、近くの海で遊ぼうと出かけるも、砂浜にあったストローがミッケになり、砂遊びを楽しむことができなくなった。
お友達の家に家族でお呼ばれした時も、お友達がお菓子を食べた手で触っているコントローラーが怖くて触れなくなっているぴぃに気づかず、うっかり触ってしまった私を敵意剥き出しで遠ざけた。
2、3時間の留守番も何かしらでミッケが発動すると電話で呼び戻される。
私はとりあえず、ぴぃに安心を与えるため、再び在宅勤務に切り替える。
分析はできている、でも、ミッケに振り回されるぴぃを見て、何を最優先に考えるべきか混乱した。
しばらく影を潜めていたミッケ。これまでの私は自分が整うことばかりに気を取られ、再燃した時に備えてどう対応すべきかを全く考えていなかったのだ。
冬休みの終わりと同時に、友達は学校へ行き、私は出勤し、ぴぃを急にひとりぼっちにしてしまった。
どんな思いであの絵を描いてくれたんだろう、そう思うと胸が痛かった。
ぴぃの机には、あの時描いた絵を、何度も何度も描いては消してを繰り返した後の消しカスがたくさんあった。
同じように、浮かんでくる不安やプレッシャーを何度も掻き消したんだろう。
そんなぴぃの気持ちに気付いてやれなかった。
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