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第1回 絵本のおはなし

【森とスープと絵本のおはなし会】
◇おはなし:かずぅ(森のスープ屋の夜)、聞き手:高橋香苗(DOOR)
◇日時:2020/1/9,場所:DOOR

ある雪の日に小さな森と出会いました。暗闇にぽつりと見えたのはあたたかな炎のゆらぎ。その灯りに導かれて晩秋にスープ屋をはじめました。春夏秋冬をいくつか過ごし、やがて一冊の絵本ができました。 扉の向こう側でみた森とスープと絵本が奏でた世界。長い旅のほんの一瞬、深く刻んだのは真っ赤な記憶。  かずぅ


第1回:絵本のおはなし
第2回:スープのおはなし
第3回:森のおはなし


第1回
絵本のおはなし

香苗さん
皆さん揃われてので始めたいと思います。今日はお集まり頂きありがとうございます。皆さん気楽な感じで過ごしてくださいね。今日は、おはなしを3つに分けて進めたいと思います。かずぅのおはなしを私が聞き出すという形で進めていきます。あいだで、かずぅのスープやお茶をお出しして休憩タイムをいれながら、ざっくばらんにいきたいと思います。それでは、しばらくの間お付き合いください。私はDOORというお店のオーナーをしております高橋香苗と言います。昨年、かずぅと藤川さんがうちに来られて絵本を出しましたということで。絵本を出版させた時に、すごくすんなりときたんです。まるでお二人がやっていることは絵本の中のようなことだし、えっという驚きよりもおふたりが日々感じていることを本につづられたんだなあと思いました。本を手にした時、私はまがいなりにも本屋をやっていて今までたくさんの本を手にしてきた中で、クオリティーというか紙質から、おふたりのこだわった感じが分かりました。すると、藤川さんが唐突に私とかずぅのおはなし会をするといいと思うんですと言われました。はじめは、えっと思いましたが、私がかずぅのおはなしを引き出す進行役であれば面白いと思い、お引き受けしました。森のスープ屋の夜という絵本を手に取った方はどれくらいいらっしゃいますか?

半分以上ですね。

皆さん、なぜ絵本が誕生したかまでは知らないと思いますので聞いてみたいと思います。かずぅは、なぜ絵本を作りたいと思ったのでしょうか?

かずぅ
なぜ?ランチをしていた時にメニューを手書きのイラストで描いていたんです。それをお客さんが褒めてくださって。絵描きや絵本作家を目指していたわけではないんです。自分ができることはしたいと思っていて、今回は描くということになりました。。あとは、流れでそうなりました。

香苗さん
描いたものの評判が良くても、出版するって大変じゃないですか?どうしたら本を出せるかって分からないし、それでもそこをクリアして出していくという流れ、そこを聞いてみたいです。

かずぅ
いつもはマスターが上手く説明してくれるんですけど…

香苗さん
かずぅは元々、表現する人じゃないかなぁ。前は、大山のものづくり学校で表現する人と接していたり、表現することを見聞きしながら、アウトプットのきっかけを探していたんじゃないかなぁ。それが自分でスープ屋をしようとした時に、今度は自分がメニューのイラストや文字を描くようになって、それがそのまま絵本になったんじゃない。

かずぅ
いろんな人に本を出してみないかと言われました。いつだったかパソコンはもうやめて自分はアナログしかできないと思って、自信なく文字を書いていた時に、70代の新聞記者の人とデザイナーの人につづけて「この字、いいね」って褒められたんです。そうして自分を認めることができた瞬間から、ひたすら手書きということをしてみたところ、スープ屋ができて、お客さんが来て文字を褒めてくださり、そういうのが自信になって、絵本を出すのもいいかもと思ったんです。だけども、どうやってやるのはわからなくて。ある日、森をお散歩をしてたら言葉が舞い降りてきたんです。それを日めくりカレンダに書き留めて。半年の間。最後に順番に並べて絵本にしたという感じです。考え込んでということではなかったです。

香苗さん
(絵本を手に取って)絵本「森のスープ屋の夜」。初めに「夜」という言葉があったんでしょうか?

かずぅ
4年前の誕生日に森に出会ったんです。木々に囲まれた暮らしをしたいと思い大山で土地を探してました。その日は夜でなく雪がある昼だったんですけど、森に足を踏み入れた時、ランタンの灯りが見え、夜のイメージが舞い降りてきました。

香苗さん
夜なので、黒がベース?

かずぅ
森に入った瞬間にモノクロが浮かんで。亡くなった母は油絵を描くのが夢で、画材にお金がかかるからと水墨画を描いていたんです。私は母の夢をかなえようと油絵を描いていたんですけど、結局はモノクロを描くようになりました。

香苗さん
ものごとを決めて行く時あれもこれもやりたいってなるじゃないですか。かずぅはこれだなってことだけをやっている。今回は「夜」がキーワード。この本は四季折々の言葉があって、日めくりカレンダーに書かれた言葉をチョイスして並べてある。

かずぅ
そこにイラストを添えたという感じです。言葉にイラストを付けました。難しい言葉は書いてないです。

香苗さん
シンプルで分かりやすい言葉の奥に、その時々の出来事、感じたことが全部入っているってことなんでしょう。(絵本を見ながら)ここの部分のぼかしは?

かずぅ
森の土で描きました。あと黒文字の炭鉛筆、筆ペンも使いました。森のエナジーが入っています。

香苗さん
自然、大地を素材にしたい。そのエナジーははずせない。

かずぅ
あとは作り手のエナジー、空気感ばかりを感じています。

香苗さん
エナジーを感じ取るってごまかせないし、整えたりできないし隠しようがない。それはすごいですね。

かずぅ
前は自分をごまかせなくてつらいこともあって、ごまかせないことが受け入れられなかったけども、最近はしょうがないよねって受け入れるようになり、楽になりました。

香苗さん
前からかずぅは敏感?

かずぅ
前は、覆い被していてむき出しではなくて、大切にしたいものはピアノ線くらい細くあって、それが分からず、ずっと自分の中であたためていました。ある時それが切れそうになったときに、大山で一人暮らしを始めました。そうしたらカーテンの向こうから自分に光が差して来て、「ここを歩けばばいいよ」って言われてるような気がしたんです。そして森に来たら、太陽から降り注ぐ光が「ヒカリノカワ」になり、その中にいるようにいるような気がしました。今はここしか歩けなくなりました。

香苗さん
簡単に言うと居場所というか、羽を休めれる場所。敏感で繊細な人は、社会で生きづらいところもありますし。森で見つけたことや暮らしが本で形になっていますね。

かずぅ
森に出会ってなかったら・・・

香苗さん
そこでマスターと出会って、

かずぅ
森のスープ屋をするために一緒になったとしか思えない(笑)

香苗さん
森を見つけて、それが自分の居場所になって、細い光が頭上から降り注ぐ太い光になった。本の中の言葉は、100%前向きというか、世間で言う「大丈夫だよ」ではなくて、本の中にありますね。エナジーなのかな。言葉はいかようにもなるし、方便にもなるし。それだけに言葉を発する人に真実があるかが大事だと思います。改めて本を出してくれてありがとう。

かずぅ
「大丈夫だよ、それでいいよ」というフレーズはなくなった父が言っていました。一切怒らなくてこれしか言わない。母と進路のことでけんかして家出したときも「いいよ」しか言わない。一度だけ怒られたのは、母に汚い言葉を言ったときだけ。離婚する時はすぐにかけつけてくれて「俺にできることはに何かあるか?」「ない」と私が言ったらすぐに帰った。そんな父の言葉は覚えていなかった。森をお散歩して、よく木々に相談するんです。そしたら父と同じ言葉しか言ってくれないことに気づいたんです。「大丈夫だよ、それでいいよ。」わたしにとって木々は父のよう、冬には葉を落として変化していく。母は何も言わない土。木は父、大地は母です。

香苗さん
いいおはなしですね。言葉はそのときよりも、なんかあったときにすっと出てくる。

かずぅ
 父はお酒におぼれて、どうしようもないときがありました。、そんな時、知り合いの氣功の先生が「父が良くなった姿を想像して氣を送ってごらん」と言ってアドバイスを下さってたんです。でもなかなか想像できなくて。こころがあったかくておだやかなイメージはできたので、毎日森から氣を送っていました。するとある時、父から電話がかかってきて、「寝たきりでも、こころがおだやかだったら、それでいいって思ったんだ」と言ってくれたんです。その時父と繋がっていたんだと確信しました。自信にもなりました。私にとって大事なのはこころがあったかいことなんだと思いました。それがピアノ線のはなしにリンクするんですけど、今まではどうして涙してまでこの道をいくのか分からない時がありました。「こころがあったかいこと。」絵本の中のフレーズになりました。

香苗さん
こころがあって、言葉になっている。こころのはなしは次の話につながっていきます。かずぅのこころに届く言葉のはなし、皆さんとシェア、分かち合えてよかったです。

つづく


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