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すばらしき世界:レビュー

「いい加減に」生きる

私たちは普通に暮らしている。ように思えて、実は「いい加減に」生きているのかもしれない。

私には生きていくことで許せないことがいくつかある。例えば、中途半端に物事を片付ける人。やるならやる、やらないならやらないにしてくれ。って思うのである。

だからと言って声を荒らげたり、そのことを必要に迫ったりしない。心のどこかで「我慢」をしながら生きているんだと思う。一つずつ引っかかっていたらキリがないからだ。

だから私は極端に言えば「いい加減に」生きている。

『すばらしき世界』の主人公三上は、そういうことが無視できない。作中で不良に囲まれていた会社員を助けようと暴力沙汰を平気で起こすシーンがあった。彼にとってその行為は「正しい」のである。「逃げる」「見て見ぬふりをする」という選択肢はないのだ。

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彼は務所上がりだけど彼なりの信念を持って「真面目に」生きている。ように私には見えた。

でもこの社会で生きていくには、少し「いい加減に」生きた方が生きやすい。悲しいけれどもそれが現実だ。

作中の最後の方にはこの社会に彼も順従していく。

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社会に溶け込んでいる三上なのだが、私は違和感を感じた。私自身、作中を通して三上の生き様をみて普段は見逃していることでも目につくようになっていたのだ。

生きることは難しい。

何が正しくて正しくないか、よくわからないこの世の中を、多分私はこれからも「いい加減に」生きていく。


作品情報

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『すばらしき世界』 脚本・監督:西川美和 主演:役所広司

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