第0章#05「きょうはサンタさんがいっぱいです」(施設内通貨スマイルに込めた想い)
ローリエ女史(以下、ローリエ)
「スマイリング スピナティー」では、ちょうど、今、みなさんでおやつをつくっています。カップにはプリンが入っているのかな? ホイップクリームやチョコレートで飾りつけしていくみたいですね。このスピナティーという施設には、年齢に関係なく、障がいのある方、認知症の重い症状がある方もいらっしゃいます。できる方には好きなようにやってもらって、難しい方には介護職員がサポートします。みんなの様子を見ているのが好きな方、食べるだけでいいという方も。過ごし方はそれぞれです。
ガスパッチョ隊長
「スピナティー=SPINATY」というのは、これらの言葉の頭文字をとってつくった造語です。
頭の四文字「SPIN」には、「紡ぐ」という意味があります。高齢者の方も、子どもも、障がいのある方も、それぞれに備わっているちからを「個性」と捉え、ごくあたりまえにみんなが笑顔を紡いでいく場所としたいという思いでつくりました(=2018年)。覚えにくいかもしれませんが、慣れてもらうしかないですね(笑)。ここには、認知症ケア専門士、認知症実践者研究修了者などがたくさん在籍しています。トレーニングルームやリラクゼーションルームもあって、より専門的なケアを受けていただけるのが特徴です。
ローリエ
キッズステーション(隣棟)の子どもたちがちょくちょく遊びにくるので、子どもと触れ合う場面も多いです。「スマイリング松平」に比べると、少し、ゆったりと過ごしていただけます。
ローリエ
「スマイリング松平」の方もご案内しますね。今は何してるかな・・・あー・・・ちょうど、お茶の時間ですね。こちらにもサンタさんがいっぱいです。入ってみましょう。さきほどの「スピナティ」に比べると、身体の自由がきく利用者さんが多いです。今日は、みんなでクリスマスのクッキー「スノーボール」を、生地からコネてつくりました。いっしょにいただきましょう。
ローリエ
あー、あれは「施設内通貨スマイル」といって、スマイリングの施設内で稼いだり、使ったりできる「おかね」です。利用者さんたちは、自分たちでこのスマイルをどんどん稼いで、コーヒー代やマッサージ代、カラオケ代として使うことができるんです。
ローリエ
「稼ぎ方」はいろいろありますよ。施設の作業をお手伝いしたから〇〇スマイル、できなかったことができたから〇〇スマイル~など。利用者さんがリハビリや習い事を受けたい時は、受講料をスマイリングの職員に支払います。そして、受講し終わった時には「リハビリがんばった!」という意味を込めて受講料の倍のスマイルを「稼ぐ」こともできるんです。施設内で「施設内通貨スマイル」が流通しているところがポイント!レクリエーションなどの賞金になることもあるので、勝負事などのゲームは盛り上がるんですよ。
隊長
デイサービスにやってきた方が、強制的に何かをやらなきゃいけない状況ではなくて、自主的に何かをしたくなる状況をつくるにはどうすればいいんだろう?と考えた時に、「お金を稼ぐ」という、人間の欲求に訴えてみようと思ったんです(笑)。「自分たちで稼いだお金を、自分たちで使う」こういった経済活動がデイサービス内にもあると、社会とのつながりが続いていくはずなんです。
もともと、この「施設内通貨スマイル」の仕組みは、とあるデイサービスの視察に行った時に出逢いました。そこでは、利用者さんが自由に「施設内通貨」を使って、パンを買ったり、運動をしたり、好きなことをやって過ごしていたんですよね。「こんな風に自由に過ごせる方が絶対いいよね~」と話して、取り入れてみることにしたんです。
ローリエ
当時のスマイリングには、まだ過ごし方の「選択肢」がなかったんですよね。それで、この施設内通貨を取り入れることにして、どんな風に使ってもらったいいかを考えました。朝、利用者さんが施設に到着したら、まず「料理」「裁縫」「運動」の3つのうち、やりたい種目を選択してもらおう。昼からはおやつ作りをしよう。など、少しずつ選択肢を増やしていきました。
隊長
「きっと、お札も本物っぽくないと使ってくれないよ」という意見があったので、導入当時は、自分たちでデザインして印刷までしましたね。施設内にパチンコ台を置いてたこともあって、スマイルを稼いでパチンコに使っていた方もいました。音が大きすぎて、いつのまにか消えましたけど(笑)。
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