⑤二相性反応を正しく理解しよう
アナフィラキシーは成人であればアドレナリン0.5mgを大腿外側に筋注することで多くは対応可能です. 細胞外液投与も忘れずに行いつつ, 次の一手として, アドレナリン0.5mg筋注を再投与, グルカゴンの静注, どうしようもないときのアドレナリンの静注, それぞれ投与量・投与方法を正確に理解しておきましょう. その場で考えるのでは対応が遅れてしまうこともあることから, 事前にシミュレーションをしてチームで対応できるように, また一人でも準備ができるようにしておきましょうね.
二相性反応とは
二相性反応とは, 再度抗原暴露しない状態で48時間以内に症状が再燃することをさします. 平均8〜10時間程度ですが, 最大で72時間という報告もあります.
二相性反応の頻度
以前は20%程度, すなわち5人に1人とも報告されていましたが, 現在は1〜7%程度とされ決して頻度が高いものではありません. また, 死亡率はほぼゼロで, 一相目の反応を越える症状を呈することはないでしょう(1).
二相性反応が起こりやすい患者
二相性反応は誰にでも起こりえますが, 起こりやすい方が存在します. 初療が不適切な場合に起こりやすく, アナフィラキシーの認識が遅れ, アドレナリンの投与が遅れた方などが典型的です(2). 血圧低下など初期症状が顕著に認められた方であっても, 初療が迅速かつ適切に行われれば二相性反応はそれ程気にする必要はないのかもしれません.
アナフィラキシー患者の経過観察時間
アナフィラキシーは重篤な状態であり, 経過観察目的の入院が可能であればそれが妥当と思います. しかし, 患者さんの中には入院を希望しない方もいるでしょう. また, ベッド事情からアナフィラキシー患者を全例入院させるのは難しい施設もあることでしょう.
前述の通り, 発症早期に迅速かつ適切に介入した症例では, 二相性反応のリスクも低く4〜8時間程度の経過観察後帰宅も選択肢になり得るとは思います. 帰宅の判断としては初動の内容以外に, 原因が判明しているか否か, 患者さんの経過を診る人がいるか否かなど色々と考える必要があります.
参考文献
#1. Zeke A, Sudhir A. Management of allergic reactions and anaphylaxis in the emergency department. Emerg Med Pract. 2022 Jul;24(7):1-24. Epub 2022 Jul 1. PMID: 35737570.
#2. Shaker M, Wallace D, Golden DBK, Oppenheimer J, Greenhawt M. Simulation of Health and Economic Benefits of Extended Observation of Resolved Anaphylaxis. JAMA Netw Open. 2019 Oct 2;2(10):e1913951. PMID: 31642933.
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