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㉘肺炎患者に血液培養は必要か?

みなさん肺炎の患者さんに対して血液培養は採取しているでしょうか?
診療の場によって, これは結構な差があるのではないでしょうか. 診療所などでは採らない, 救急外来ではなんとなく採ってしまう. そんなことはないでしょうか?!重症度が上がれば血液培養の陽性率, すなわち菌血症の合併率はあがることから, 入院が必要な肺炎症例では採取することが多いと思いますが, 真の目的は???
市中肺炎における血液培養の陽性率は10%程度, 入院を要する肺炎球菌性肺炎でも約20〜25%程度です. しかし, 血液培養陽性例の肺炎球菌性肺炎は侵襲性肺炎球菌感染症(5類感染症)として保健所に届け出が必要です. また治療期間も変わります.
そして, これが最も重要ですが, 救急外来では発症初期に訪れることが多く, また限られた時間でマネジメントする必要がある場合には, 肺炎だと思っていても実は…的な症例が多く存在するはずです. 肺炎だと思ったら腎盂腎炎だった, 胆管炎だった, 心不全だったなどみなさんも経験があるでしょう. 自信をもって, 目の前の患者さんは肺炎であると確定診断でき, 起因菌がグラム染色などから想定できる場合には不要かもしれませんが, そうではなければ血液培養は他疾患との鑑別のために必要なのです.
浸潤影があるから肺炎, 酸素化が悪いから肺炎, 施設入所者だから誤嚥性肺炎, 市中肺炎だろうからセフトリアキソン, とりあえず血液培養提出, そうではなくいちいち考え対応しましょう.

#1. van der Eerden MM, Vlaspolder F, de Graaff CS, et al. Value of intensive diagnostic microbiological investigation in low- and high- risk patients with community-acquired pneumonia. Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2005;24:241-249.
#2. Waterer GW, Wunderink RG. The influence of the severity of community-acquired pneumonia on the usefulness of blood cultures. Respir Med. 2001;95:78-82.
#3. Musher DM, Thorner AR. Community-acquired pneumonia. N Engl J Med. 2014;371:1619-28.


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