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⑤片頭痛と緊張型頭痛の違いを理解する!

頭部外傷患者の頭部CTの適応, そして頚椎の保護の重要性は理解できましたね?
今回は片頭痛に関して. 緊張型頭痛との違いを意識しながら整理しておきましょう.

頭痛診療の心構え:頭痛 7 Rules

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片頭痛の疫学

女性が男性の2-3倍多く, 50歳代まで認めますが以降は減少します. 高齢者で発症するのはないわけではありませんが稀です.
有病率8%程度, 発症のピークは男性15-20歳, 女性は20-24歳です.
救急外来では, 片頭痛らしいと思っても高齢者の場合には「本当に片頭痛か?」と慎重な対応が必要となります.

片頭痛の診断

片頭痛の診断には, ①二次性頭痛の否定, ②繰り返すこと, が必要です. 初発の頭痛の場合には, 片頭痛らしいと思っても二次性頭痛の可能性がないかはきちんと評価する必要がありますのでご注意を. 初発の頭痛ではなく, 同様の頭痛を繰り返している場合には, POUNDingの5項目を意識して評価します.

POUNDing

5項目のうち4項目以上該当する場合には片頭痛らしいです. 特に, 痛みのせいで仕事や家事など日常的な生活に障害を来し(それ程辛く痛い), 嘔気・嘔吐を伴う場合にはらしいですね. 蛍光灯の光や臭いなども嫌がるのもらしいですね.
頭痛を自覚した片頭痛の患者さんはソファーで横になり, 気持ち悪そうにしながら部屋を暗く(もしくは毛布をかぶって)横になっているイメージですね.

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これは片頭痛ではない!

頭の片側が痛いと片頭痛と考えがちですが, 片頭痛の1/3は両側性, 緊張型頭痛の1/3は片側性です. そして, 常に同側が痛いというのは実は片頭痛らしくないのです. 前回は左, 今回は右といった感じで固定されないのが一般的です.
前述の通り初発の場合には, らしくても片頭痛と考え思考停止してはいけません. その他の項目はそれぞれ片頭痛以外に考えるべき疾患はわかりますね?

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片頭痛 vs 緊張型頭痛

両者の違いを意識しておきましょう. 痛みの特徴, 随伴症状に注目です.
しかし, そもそも緊張型頭痛で救急外来を受診することはないと覚えておいた方がよいでしょう. みなさんもときどき頭痛を自覚することがあると思いますが, その多くは緊張型頭痛です. お風呂に入ったり, アセトアミノフェンやNSAIDsを内服して知らないうちによくなった経験ありますよね. 日常生活に通常支障はないのが緊張型頭痛ですから, わざわざ救急外来を受診することはありません. 片頭痛か緊張型頭痛かで迷ったら, まずは片頭痛から考え安易に除外しない方がよいでしょう. 両者は合併することもありますからね.
肩こりがあるから緊張型頭痛なんて考えてはダメですよ. 片頭痛でも認めますから. 入浴で改善するのが緊張型頭痛, 増悪するのが片頭痛というのは覚えておくと役に立つかもしれません.

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参考文献

#1. MacGregor EA. Migraine. Ann Intern Med. 2017 Apr 4;166(7):ITC49-ITC64
#2. Evans RW. Diagnostic testing for migraine and other primary headaches. Neurol Clin 2009; 27:393.
#3. ICHD-3 The International Classification of Headache Disorders 3rd edition. 

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