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㊷飲んでいる薬は全て伝えよう!

ミュージカル好き救急医の独白 vol.42
- The Monologue of a Musical-Loving Emergency Physician -

はじめに

年齢が増す毎に飲む薬の数は増え, 病院を受診する回数は増えるのが一般的です. 「私は健康だから病院なんぞ行ったことがない!」って方もいるかもしれませんが, まぁお付き合い下さい.
日本は65歳以上を高齢者ではなく准高齢者と呼ぼうなんて言われたこともあるぐらい, 60歳代は若いというイメージはありますよね. それはおいといて, 今回も薬の話. 薬をA病院から2種類, B病院から3種類, Cクリニックからも3種類, さらには眼科や歯医者からも…なんてことは珍しくありません. A病院の先生はB病院でどのような薬が出ているか知らないこともあります. 自身で伝えなければ, これまた大変なことになるかもしれないのです.
今回は飲んでいる薬をきちんと伝えましょうっていう話.

今回のミュージカル

レ・ミゼラブル
今まで何度観たことだろうか. 大好きすぎて歌詞を全て覚えているミュージカルの1つです. 鹿賀丈史さんのジャンバルジャン, 川崎麻世さんのジャベール, 岡幸二郎さんのアンジョルラス, 石川禅さんのマリウス, 島田歌穂さんのエポニーヌ, 再度観たいキャストが沢山. 以前, コンサート形式で行われたレミゼの舞台もありましたね. たしか, その時は鹿賀丈史さんはジャベールでしたねぇ. 懐かしい〜
本当に全て歌詞を覚えているんでしょ. 全てね. ってことで全て伝えて欲しい薬の話.

救急外来あるある

今回もよくあるケースです.
70歳の女性(mさん)が, 動いたときに呼吸が苦しいということを主訴に救急外来を受診しました. 呼吸が苦しい場合には, 心臓や肺の病気以外に, 貧血や精神的な影響を考え対応しますが, その中でのこんなやり取りです.

Dr.S:「(薬手帳を確認して)飲んでいる薬はこれで全てですか?」
Pt.C:「はい.」
Dr.S:「他の病院からもらってはいませんか?」
Pt.C:「もらっていないです.」
Dr.S:「歯医者さんから痛み止めをもらったり, 市販の痛み止めは購入し飲んではいませんか?」
Pt.C:「数日前に歯医者を受診して痛み止めはもらって飲んでいます. 」

薬手帳は必須

病院を受診するときには, 必ず持参してほしいものがあります. 急な体調変化で受診する場合には, たいてい慌てます. いざというときに忘れないように, 保険証と薬手帳を忘れずに普段持ち歩くバッグに入れておきましょう. バッグにはちょっと…という方は, 最新の内服薬のページを写メしておくとよいでしょう. 飲んでいる薬によって, 病院ではいろいろと考えることがあります. 細かなことはまたいずれ取り上げますが, 内服薬を正確に把握することは超大切ですのでよろしくお願いします.


薬手帳に載らない薬も伝えること

医師から薬に関して聞かれた場合には, 必ず飲んでいる薬を全て伝えるようにしましょう. 歯医者からもらった薬, ビタミン剤やカフェインなどのサプリメント, 漢方薬, その他, 違法な薬(飲んでいないと思いますが)なども含めて全部です.
時々, 患者さんから, 他の病院から貰っていることを伝えづらいというコメントも聞きますが, 薬に伴う症状は多岐に渡り, 良かれと思って内服していた薬でめまいや眠気などの症状が出ることは少なくありません. 今回は, 歯科でもらったロキソニン®という痛み止めによる胃潰瘍, それによる貧血症状でした. 痛み止めが胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの消化性潰瘍のリスクであることは前回お話ししましたね. まさかあの薬が, あのサプリメントは大丈夫だろうと思わず, すべて伝えて下さいね. 思わぬ副作用や相互作用がありますから.



♪なんていうことをしたのだ
 俺はむかえてくれたこの手に背き
 泥棒犬になるとは おそろしい闇に響く
 この胸の叫び声 また過ちを犯すつもりか♬

ミュージカル好き救急医から, 知っているとチョコッと役立つ知識を少しずつお届けします. ぜひ!