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画にもキャラにもセリフにも込められたロック魂!殻を打ち破れ!『ガールズバンドクライ』【アニメ感想文】

1話を観ながら、
「尖ってんなー」
「ロックだねー」
と、幾度も口に出してました。

今日はそんなロック魂を感じることができるアニメ『ガールズバンドクライ』をご紹介します。

今季(2024年春)放送中のTVオリジナル作品なので、観終わった後に書こうかと思いましたが、リアルタイムで一緒に楽むのもアリだと思い、私がロックを感じた部分や、ココに注目するとより楽しめそうだと考えてるポイントを書いてみたいと思います。

4話まで視聴したのでそこまでのネタバレを含みます。内容を知りたくない方は本編をご覧になった後でまたお越しください。

アニメ「ガールズバンドクライ」公式サイト

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ガールズバンドクライってどんなアニメ

鬱屈した何かを抱えた女の子たちがガールズバンドを結成し武道館を目指す青春群像劇です。

ネットで聴いた音楽に背中を押され、高校を中退し東京に出てきたばかりの主人公・井芹仁菜(ニナ 17歳)が部屋に入れず路頭に迷ってると、偶然路上ライブをしてる河原木桃香(モモカ 20歳)と出逢うところから話が始まります。

ガールズバンドを題材にした作品といえば「ぼっち・ざ・ろっく」が最近話題になりました。バンドあるある+ギャグ作品とたかを括ってたら、あらためてロックのカッコよさに痺れた作品でした。

この作品も似た部分はありますが、こちらは『ロック』という音楽が抱えている内面を色濃く描いたドラマになっています。

ロック魂ってなんだ

その前にそもそもロックってなんだって話ですが、爆音でエレキギターをジャカジャカかき鳴らしてるというのが一般的なイメージでしょうか。

ロックのルーツを辿るとブルースに行き着きます。アフリカ大陸からアメリカに奴隷として連れてこられた黒人さん達が日々の鬱憤を晴らすため、シンプルな演奏にのせ愚痴を唄ったのが始まりと言われます。
ブルースを軽快なリズムにのせダンスミュージック化したのがロックンロール、更に親や社会・常識とされる価値観など、自分よりも巨大ものに対する反発心を力強いビートにのせ唄ったのがロックです。
ロックは更に、ハードロックやパンク、メタルへと細分化されていくわけですが、根底にあるのは、自分より巨大なものに対する反発心

抑圧され鬱屈した心の叫びを、ビートに、声に、叩きつける音楽

というのが私が思うロックです。

「私は巨大なものに対する反発心など持って無いよ」という方も、観ていただくと「私にもあったわ」と気づかされる、もしくは思い出すと思います。
大なり小なり誰もが持ちあわせてる(た)感情を、肯定も否定もせず、面白くドラマとして画いてあります。特に進学や就職・転勤などで、知らない土地で新生活を始めた経験をお持ちの方には刺さると思います。

では、このアニメで描かれているロックをみていきましょう。

ギャグから滑稽へ、そしてロック

中指立ててけ!

路上ライブの場所取りで言い争った相手に対し、去り際、桃香が中指を立てるハンドサインを向けます。アメリカ映画で喧嘩を売る時にみられるアレです。(これをアニメで描くこと自体がすでにロック、アメリカで放映できるのか?)

これを見た仁菜は、それがどういう意味なのか尋ねますが、桃香は「ありがとうって意味」と答えます。(オイ!それでいいのか)

牛丼をごちそうになった仁菜は、店を出るとき店員さんに「とっても美味しかったです ありがとうございました」と深々とお辞儀をし、満面の笑顔で中指を立てます。(だから言わんこっちゃない)

しぇからしか!

賃貸物件に蛍光灯が無いって、初めての一人暮らしあるあるだと思います。仁菜もこの例に漏れず、電気スタンドだけのうす暗い部屋で受験勉強をしてます。

蛍光灯をくれるヤツがいると連絡をうけ桃香を訪ねますが、そこには安和すばる(すばる 17歳)が居て、スカウトしたドラマーだと紹介されます。

すばるの態度が受け入れられず、色々当たちらしながら家に向かっていてると、通行人からうるさいと怒鳴られます。
これにキレた仁菜は、中指を立てようとして思いとどまり、小指を突き立てて「しぇからしかぁー」と叫びながら蛍光灯をブンブン振り回して対抗します。(壊れちゃうよー)

案の定、蛍光灯は破損し、肩を落としながら暗い部屋に戻ってきます。

蛍光灯を振り回したところで切ればギャグで終わるところですが、その後の落ち込みようをセリフではなく画できっちり見せることで、ギャグを滑稽さへと昇華させてるのが上手いしエモいです。
仁菜の鬱屈した心情にリアリティを感じます。 

桃香姉さん頼みます

良く言えば、素直で信じやすく感情を隠せない正直者、裏を返せば協調性に乏しく世渡り下手な仁菜。身近に居たら積極的に関わりたくないタイプ。このめんどくさい仁菜に関わろうとしてるのが桃香。彼女がいい仕事します。

「バンドってさ、言いたいことが溜まりに溜まってる奴が、集まってやるものだと思うんだよね」

押し付けるでも言い聞かすでもなく、私はこう思うよと空気のように言ってのける桃香がカッコ良く頼もしい。姉さんと呼ばせて頂きますw

彼女のセリフは物語の芯でもあり、今にも破綻そうなキャラクターたちを導くガイドにもなってます。他にもこんな粋なセリフが散りばめられてます。

「なんかふたりとも、拭えない不幸感というか、不満がにじみ出てる。でも、そういうのが良いかと思って声かけたんだよね。すばるも仁菜も。」

「いいから、そのめんどくさいの、全部ぶつけなよ。」

こうしたセリフを聞くたび、自分にもまだまだめんどくさいとこあるなーって思います。


他の見どころ、メタ視点含む

まだまだあるけど書ききれなので見どころをサクッとまとめました。そういえばそんなこと言ってたなーって後で思い出して頂けると嬉しいです。

音楽がカッコいい

これがカッコ悪かったらただのギャグで終わりですけどw
オープニング、エンディング、挿入歌すべて、超高速BPMに乗せて叩きつけられる叫びが物語の芯をくってます。

細かなリアリティ

主要キャラの年齢が16歳~22歳。桃香は食事の時あたり前にお酒を飲んでます。必ず描く必要はないけれど常識は常識として描くことで、キャラの解像度が格段にあがり人物像に深みが増します。
主要キャラの年齢がバラバラという設定もしかり、演じてる声優さんが新人という点もしかり、さらにアニメに先駆けバンドデビューしてる!のもしかり。

虚構とリアルのバランスを極めたアニメーション

コミカルでリズミカルなアニメーションは、初期のトムとジェリーを彷彿とさせる手書きの味わいがあります。絵だけでも楽しい。
物語のテンポをつくり、画に演技させることにみごとに成功してます。
3DCGでは演技できないという固定観念を改めさせらます。

トゲトゲや岩が砕けるなど現実にはありえない演出もふんだんにあります。アニメーションは全てが作り物、言い方悪いですが『嘘』です。
嘘とわかったうえで感情移入し物語に没入できる、虚構とリアルのバランスが絶妙です。

シリーズ構成・花田十輝

シリーズ構成って、通して何を描き何を描かないか決め、物語の芯を作る仕事という認識ですが、これに準ずる脚本や構成というクレジットがないことを考えると、花田さんがこの物語を作ってると言ってい良いと思います。

響け!ユーフォニアム
ラブライブ
宇宙よりも遠い場所
僕の心のヤバいやつ

これらの実績をみれば、面白くないわけ無い。
絶対に外さない安心感すら覚えます。

キャラデザ 手島nari さん[追加5/24]

本作のキャラデザを担当されたのは、私がお世話になってるボイスロイド小春六花を初めとするTOKYO6 ENTERTAINMENTさんところの3姫達をデザインされた手島nariでした。今更で誠にすみません。
小春六花がVサインしてる一枚の絵から、カッコさも、可愛さも、滑稽さも、哀愁も、陰も感じられ、この子なら何をやっても応えてくれそうと思ったのが購入決め手のひとつになってました。
下手な写真よりも人間味が感じられるのですよ。



音楽やバンドに限らず、絵や小説などをされてる方のクリエイター魂を揺さぶる作品です。
4話済んでしまいましたが、1話1話に山場があるので、今からでも楽しめると思います。溢れるロック魂を一緒に楽しみましょう。

みんなー、小指立ててけ!
enjoy!


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