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市街地をぐりぐりドリフトする戦車が楽しい、アニメ『ガールズ&パンツァー』

可愛い女の子+異質な物という、すっかりテンプレート化している組み合わせに、友情・努力・勝利という、面白い漫画の3大要素まで乗っけたのが、『ガールズ&パンツァー』、通称『ガルパン』だ。

この作品が、唯一現実と違うのは
戦車道(せんしゃどう)』という競技。
このおかげで、女の子が戦車に乗って戦うという、不穏な響きを払拭し、さらに、スポーツの名勝負を見ているようなワクワクを生み出している。

※ご注意※ ネタバレがあります。
内容を知りたくない方は、
ご覧になってから、またお越し下さい。
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乙女のたしなみ戦車道

『少女と戦車』

文学作品臭漂うタイトルだが、生死がかかっているとか、悲惨な境遇に苦悩してるとか、戦車から連想される陰はまったく無いので安心して見て頂きたい。

戦車道は、華道や茶道のような伝統文化であり、柔道や剣道と同じく、心・技・体を磨く武芸のひとつ。
教養ある女性のたしなみとして、世界中に知られている。高校生チームの全国大会もあるし、プロリーグ設立の話も出てくる。

試合は、対戦チームの戦車を行動不能にして勝敗を競う。
実弾を撃ち合うので、直撃をくらうと戦車は壊れるが、コクピットはカーボンで保護されていて安全だ。安心して見ていられる。

競技場には観客席があり、戦況が中継されている。民家に戦車が突っ込むと、家主が
「うちの店がー、これで新築できる」
と大喜び。隣りのおっちゃんも
「縁起いいな~」と言っている。岸和田のだんじりなみだ。

戦車道はスポーツ
という世界観が徹底的に作り込まれている。
それも、ナレーションは使わず、会話の中に自然な形で盛り込んである。

世界観の作り込みに比べると、ストーリーはシンプルだ。

弱小チームが全国大会優勝を目指し奮闘する、王道のスポ根。主人公の実家が戦車道の家元だとか、学校の存続が懸かっているとか、伏線やサイドストーリーはあるが、深く考え込まなくても良いレベルに、あえて抑えてある感じ。

これほどシンプルだと、戦車戦を見せたいという制作陣の意図が伝わってくる。

もうこれは、自分でつくった架空のストリーの中で、ミニカーをぶつけて遊んでいた男の子の世界。

難しい話は置いといて、
少女と戦車を存分にお楽しみ下さい

という製作陣の声が聞こえてきそうだ。

リアリティーの先にある人間味

競技に使われるのは、第二次世界大戦以前に実在した戦車達。現代のコンピュータ制御されている戦車と違って、運転も、砲塔を回すのも、照準を合わせるのも、アナログ。
特に、弾を装填してるシーンは萌える。人が動かしている感じがたまらない。

地面の凹凸を吸収するキャタピラ、砲撃の反動で後ろに沈む車体、とにかくリアルだ。
傾斜や路面に構わず、丘を、森を、街を、リアルな戦車がぐりぐり走り回る。
戦車ってこんなに速いのかとか、キャタピラでドリフト出来るんだとか、見たことのない大迫力の映像にワクワクする。 

無機質に動く物は、CGと相性が良いといっても、戦車には、キャタピラや砲塔など、機械的な動きが多いうえ、飛んだり跳ねたりして、直線的な動きが少ない。モデリングも動かし方も、労力は車や戦闘機の比ではないと思う。

手書きアニメーションという選択は無かったと思うが、これほど3DCGの表現力を活かした作品も無いと思う。

さらに、戦車戦を面白くしているのが演出。

BGMが、コテコテの鼓笛隊というのがいい。
耳馴染みのある曲も使われていて、戦車戦の雰囲気を盛り上げている。

昇降式の2階建て駐車場の地下に潜んでいて、背後から一撃食らわすも、身動きがとれずジタバタしている戦車がわいい。

弾を受けひっくり返った戦車からピョコッと上がる小さな白旗もかわいく、
「や・ら・れ・た~」
と言ってるように見える。

車に目や口がついてるアニメはあったが、戦車のリアルな動きだけで、人の心情を描き出している。憎いくらい上手い。

勝ちます

ストーリーはシンプルと書いたが、つまらないという意味ではない。王道で面白い。

戦車道は団体戦。勝つためには、戦力と戦略と戦術、そしてチームワークが求められる。
刻々と変わる戦況をみて、作戦を変えたり、咄嗟の判断が勝敗を決することもある。

主人公のチームは、戦車も少なく、メンバーも寄せ集め。だからこそ、知恵で活路を切り開いていく。試合を重ねるごとにメンバーも成長し
チームワークも育まれていく。

ストーリがシンプルなだけに、戦車戦そのものの面白さ、弱いチームが勝ち上がっていく面白さが引きたつ。

クライマックス、最後の大勝負は、チームメイトの努力と絆が作り出した、大将どうしのタイマン。

登場人物も制作者も、優勝という目標に真っ直ぐでいたからこそ、見てるこちらも、手に汗握り見入ってしまう。

一進一退の攻防を繰り返すバレーボールの試合に熱くなったことはないだろうか。バレーボールに限らず競技ならなんでもいい。
2019年、日本で開催されたラグビーワールドカップ、連日、テレビの前で
「いっけーーー!」
と叫び、拳を握りしめていた。

ガルパンには、そんなスポーツの熱気と楽しさが詰まっている。

あとがき

この作品の脚本を担当されたのは、吉田玲子(よしだれいこ)さん。
感動した日常系アニメのエンドロールで、よくお見かけするのでお名前を覚えてしまった。
10代の女の子の繊細な心の内を書かせたら、ピカイチだと思う。

王道ながら、話しとキャラクターに深みを与え、無骨な戦車をも可愛く見せていたのは、吉田さんの功績が大きかったのではないかと感じた。

ガールズ&パンツァー(GIRLS und PANZER)|公式サイト

ガールズ&パンツァー - wikipedia

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