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建物構造・用途に応じた防音設計

専門業者には、「コンクリート構造」が得意な企業が多く、最も少ないのは「木造やマンション」の防音設計が得意な業者です。

前者は主にスタジオ防音室や大規模な音楽ホール・ホテル等の施設です。後者は「木造住宅(戸建・共同・二世帯等)、木造音楽室(ピアノ防音室など)」と「分譲マンション」です。※賃貸は建物所有者の許可がないと防音工事が出来ないので、通常はあまりリフォームの防音設計はしません。

ネットの情報を検索すると、やはり木造とマンションの防音事例が少ないです。それは成功した現場が少ないことを示しています。

マンションの防音設計・相談

最も難しいのが天井防音です。理論的な分析や工法を理解している専門業者がほとんど居ないのと、非常に費用と手間のかかる設計仕様・施工要領を必要とするからです。※専門書も市販されていません。

これと同じくらい相談が多いのが、GL工法の戸境壁・柱・梁部分の防音対策です。音を絶縁したり、共振を抑える仕組みを知らない、必要な防音材も知らない業者が大半です。※失敗事例が最も多いです。

二重床の対策は、置き床工法そのものに弱点があるため、重量衝撃音対策はかなりの難易度になり、造り直したほうが早いくらいです。むしろ伝統的な木材軸組工法の方が重量音対策を強化できます。

ちなみに、二重天井と二重床は、ともに比較的低い周波数における「共振体」になってしまうことが共通点です。天井の場合は概ね30Hzから125Hzの周波数帯の生活騒音が、ほぼ足音や子供の走る音に該当します。リフォーム工事でこれを軽減するには、天井スラブと絶縁した二重天井が必要になります。※東日本大震災以降、インサートの増設が許可されなくなったことが主な理由です。

木造の防音設計・相談

最も失敗事例が多いのが「木造住宅の生活防音」「木造軸組在来工法のピアノ防音室」です。

防音設計そのものが間違っていることや資材の施工要領が失敗しているのが大半です。新築の時点で相談をしていただければ問題を解決できることが多いのですが、完成後にリフォームで防音施工をすると、建具や床・天井など造り直しになり無駄が多いだけでなく、制約があり相当難しくなります。

木造音楽室では、防音対策以前の問題として、音響そのものが悪化する現場も有り、木造の特長を台無しにしたり、建物寿命を縮める無理な施工をされていることが少なくないです。※通気層や床下換気をコンクリート・鉄骨で潰すような業者も居ます。

防音職人の相談業務では、セカンドオピニオンとしてコンサルティング契約もお受けしています。

最近増えているのが、建築士からの防音相談ですが、彼らの知識の無さには毎度驚かされています。これは大学における建築教育にも問題があると思います。

木材はコンクリートに比べて遮音性能が劣るわけではありません。その証拠に、同じ厚さで外壁を構築すれば、コンクリート住宅と同等の遮音性能を確保できます。木材は吸音性と遮音性を兼ね備えた建築材であり、最も音楽室に適しています。※弱点はつなぎ目の対策です。

木造は、ALCの鉄骨構造よりも防音対策を強化できます。木材そのものが弱点の少ない素材ですので、防音設計と正しい施工要領があれば、快適な音楽室や住宅を造ることができます。※ただし、木造ツーバイ工法は防音対策には不利になります。

なお、ツイッターやユーチューブなどの事例は、都合の悪い部分を見せない記事が多く、詳細が見えません。鵜呑みにすることはリスクがあります。本体のホームサイトに詳しい事例解説がない限り、要注意です。

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