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防音材単価と取扱説明書

2023年ラストの投稿ですが、今年一番質問された事項に関連した内容について触れます。
新築・リフォームに関わらず、生活防音や木造音楽室の工事に必要な資材として、「防音材」は市販品・受注生産品ともに不可欠な建築製品です。

一般ユーザー(施主または家族)だけでなく、建築士を含めた建築のプロにとっても、多種多様な製品を選定するのは簡単ではないです。
中には同じ製品を倍以上の単価で販売している業者も居り、購入されてから相談されるケースもあり、後の祭りです。

そのような悪質な通販業者が防音業界の信頼性を低下させていると言えます。ユーザーは購入契約をする前に他の業者にも問合せをして情報を確認することが必要です。

防音材の単価

誤解していただきたくないので、先に防音職人の製品単価について概略を説明します。私の防音材の単価は、各社メーカーの取引単価に対して、次年度に収める税金及び事務手数料(製品の保険を含む)を加算して設定しています。※送料は製品ごとにメーカーが提示している料金(消費税を含む)を実費として頂戴します。
防音材の単価は、私の場合は大手代理店契約と同等のため、通販業者や一般の建築会社よりは優遇されていますので、注文量に応じて値引きが可能です。中間手数料がないため、比較的廉価で納品できます。

これに対して、通販業者や防音専門業者は、自社の諸経費や一定の利益を載せて単価を設定していますが、通常は大手代理店経由で取引して納品するため中間経費も上乗せされます。このため、防音職人と同じ製品でも高くなります。各社メーカーは業者の価格設定に対して制限を設けていないため、各業者の設定単価には幅があります。
このことを念頭に、防音材の見積金額を検討された方が良いと思います。

ただし、防音職人の本業は「音響・防音設計及びコンサルティング」を専門とする自営業者のため、単価は比較的抑えており、納品もメーカーの事業所又は提携工場からの直送便のため、送料確認はメーカーからの返事待ちであり、その分見積に時間がかかります。
この点はご了承いただきたいと思います。事務の専従者が居ないため、繁盛期は余裕を持って納期を設定していますので、急な注文には対応できない場合があります。※基本的に契約現場への納品が優先となります。

製品の説明書(施工要領)

防音材にも関わらず、防音工事に関する施工要領が明記されていない製品が多く、市販品だけでなく専門メーカーの受注生産品にも明記されていない場合が多いです。
専門メーカーの製品は、専門家が発注して担当現場で使用するため、詳しい施工要領は防音設計の図書の中に記載されている前提でメーカーが納品するためです。なので、一般の建築業者が注文する場合は要注意です。

一方、市販品はメーカーそのものが防音工事を担当した経験がないため、的確な施工要領・説明書が付いていなく、カタログに簡単な使用例が記載されているだけです。
しかも大手メーカーの説明書は間違っているものがあり、販売する業者は、それをそのままコピーして使用するため、誤った施工要領が拡散するという状況になっています。
施工要領が間違っていれば、防音効果は半減するだけでなく、ほとんど効果を体感できない場合があります。
元々、市販品のメーカーの履歴を見ると一般建材の販売会社であり、防音設計の実績がないことが分かります。専門メーカーが実験を繰り返して製品開発する防音材とは別物です。

その典型例が、遮音シート、鉛の遮音パネルです。実際の現場で透過損失やコインシデンスの精密測定を行わず、簡易的な質量則のみで、性能を予測してカタログに記載しています。
このため、市販品は現場での防音効果とカタログの性能表示が乖離するのです。しかも適切な施工要領が付いていません。

防音材は、基本的に専門家の「防音設計・施工要領・仕様書」とセットで使用されるため、知識と経験のない建築業者が行う防音工事には失敗事例が多いのです。ネット上のホームページには情報として出てきませんので、施主や建築士は知らずに市販品を使って、「防音材・防音工事とは、この程度のものなのか?」と勝手に失望することがあるのです。

以上の内容を踏まえた上で、適切な専門家を探してください。特に木造建物の生活防音や防音室の施工には専門家のサポートが極めて重要です。
簡単ですが、新築やリフォームの防音施工の参考にしていただければ幸いです。

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