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木造2階に構築した小さなピアノ防音室

この木造ピアノ防音室(神奈川県内)は、ピアノ教室と施主であるピアニスト(音楽教室の先生)の練習室として利用することが主な用途です。
防音リフォームとして、隣室物入れ等を含めて一部屋に改造する防音設計によって計画しました。

この部屋の主な問題点は、2階であるため床などの補強に加えて、スペース的に隣室(納戸)を含めて拡張してピアノ室を構築することです。その際、既存間仕切り壁を撤去して、既存構造柱を補強するということが前提でした。
画像のように部屋が狭く、壁面と構造柱の間隔がピアノギリギリの位置にあり、音響・防音仕様は床を含めて、かなりの薄型仕様になることが最大の課題です。※関連記事(補足説明):薄型の木造ピアノ防音室

ピアノ防音室の設計方針

このピアノ室の防音設計の方針として、構造的な補強が音響・防音効果にプラスに作用するように仕様・施工要領を詳細に決める必要がありました。

隣室を含めて拡張するためには既存壁を撤去した分、既存柱と合わせて構造的な補強をするため、天井裏の梁と既存柱を補修し、床の剛性を強化する施工を設計しました。
これが、ピアノ音の共振を抑え、床や壁の防音効果を高めるだけでなく、安定した音響効果を出すように調整しました。
*完成後に響きすぎる場合に備えて、DIYによる音響調整の方法も用意しました。(幸い、完成後に依頼者によってピアノ音響はベストに近い出来であることが確認されました)

壁面は数種類の防音材と木製ボードを重ねて施工する内容で、厚さは仕上げを含めて約32ミリから35ミリ以下に調整しましたが、防音壁は、約D-50からD-55の遮音性能を確保することが出来ました。
*構造的な補強が防音効果などにプラスに作用したと考えられます。

施主(依頼者)の音響・防音効果のご感想

以下、依頼者の原文のまま引用します。

「学生の頃や音楽の仕事場など、色々な防音練習室でピアノを弾いてきましたが、思えば、音色の想像はしながらも、視覚優位に一生懸命「音」を出している感覚でした。
この度作っていただいた防音室では、弾くと同時に対話をしている様な、音色に包まれる感覚に驚き、聴覚優位の「音色」だと感じました。

木のお部屋に包まれながら、改めてピアノは木の楽器だったなぁと、これまでには気づけなかった体感をすることができました。
低音の振動は深く、高音は(ピアノの機種もありますが)クリアながらも柔らかな響きと感じました。
私自身も生徒さんも『豊かな響き』が今後のテーマでしたので、皆で会話しながら、体感しながら、よりピアノを深く学んでいきたいと思います。」

以上が、今回の事例報告の概要ですが、防音設計の担当者として、さらに分析を加えていきたいと思います。難しい現場でしたが、想定以上の効果を体感することが出来て、本当に良かったです。

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