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音響と防音効果を救った木造ピアノ室

この事例は、地方のある新築の木造ピアノ防音室ですが、部屋は約6帖でグランドピアノ以外に、ソファなどの家具やエレクトーンも置いてあります。予算の都合で、防音材や木製音響板などを計画策定時の約半分しか使用できない事態となり、修正や打合せに時間がかかりました。

木製ボードと複数の防音材を貼る予定だった壁面の半分は石膏ボード施工のみに変更となり、音響が懸念されていました。
このため、まず音楽室としての音響を確保できるように計画を修正することから始めました。
部屋の都合で画像のようにピアノは壁面ギリギリの配置となり、予算内に収まる製品選択から検討しました。

音響と防音効果を高めた表層材

反響と共振を抑えながら、防音効果にもプラスになる建築材・製品を使用するにあたり、「二次共振を抑える」「音を少しでも吸収する」という効果を最優先しました。

防音工事を担当した建築会社が比較的廉価で入手できる「無垢杉の羽目板」と「針葉樹のフローリング」「シナ合板」を仕上げ材に変更し、防音材は最も薄くて音エネルギーを効率よく吸収できる素材の軟質遮音マット(私の受注生産品)に限定しました。
*石膏ボード仕上げの壁面も表層はシナ合板または羽目板に変更

薄い防音構造ながらも「遮音・制振・吸音」の3つの機能を持つ製品を重ねて使用しました。

依頼者からのご報告

新しい家に搬入された時、ピアノを弾いてみると違いがわかりました。前日まで弾いていた部屋より音が柔らかく、響きが深く良く感じました。壁面はシナ合板と杉、床も杉なので木に囲まれているせいか落ち着き、過ごしやすいです。
杉の床は肌ざわりは最高ですが、思った以上に傷つきやすいので、椅子やエレクトーン・ピアノの脚等気になるところは現在はカーペットを敷いています。

完成したピアノ室の音がどのくらい外に聞こえるのか気になるところですが、工務店では音量を計る器材がないとのことでした。アプリを見つけたので室内外の音を計測してみました。
できるだけ同じ条件で10か所計測しました。ピアノの生演奏と比較のため、エレクトーンで録音データを流して計測をしました。ベースとパーカッションの振動が伝わるくらいピアノよりも大きな音で鳴らしました。アプリによってはかなりのばらつきがありましたが、体感はピアノ室内外ではかなり差を感じています。私たちの思った以上に静かに感じます。家族はリビングではピアノの音は聞こえるけれど大きさは全く気にならないそうです。

また、夜に自宅の周りや敷地の境界を歩いてみましたが、音は境界付近でも認識できますがとても小さかったです。一番心配なピアノ室側のご近所様に伺ってみましたが、問題ないそうです。
最近は演奏の開始・終了時間を一時間ずつ伸ばしてピアノを弾いています。
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このように、依頼者からのご報告のとおり、想定以上に音響も防音効果も優秀で、手前味噌ですが費用対効果は抜群の結果となりました。
私の分析では、壁面の遮音性能は概ねD-45からD-50です。場所によってはD-50以上の性能があるようです。これも木製品と防音材の相乗効果だと思います。

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