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木造ピアノ室の専門家探し

前回記事で、大手の有名企業に勤務するベテラン建築士の言葉を引用しましたが、木造の防音設計はウェブサイトで詳細が公開されておらず、木造ピアノ室の設計・施工が得意な専門業者を探すのは、マンションの天井防音を設計できる専門家と同様に難しくなっています。

それは、現役の防音設計のエンジニアが減っているからです。彼らが言うには、大手業者など宣伝力の強い業者に押されて、受注が激減したため、従来型の業務契約が減ってしまい採算を確保するのが難しくなったという理由があるようです。
私の取引先の防音設計が専門だったベテラン建築士も、労力が無駄になるくらいなら、他の業務を地道にやって行きたいと言います。高齢になって、いまさら宣伝に時間と経費を掛ける必要もないと。
*彼の主力業務は、建物の設計と騒音対策・調査になっています。

取引先の中で、契約業務の内容が殆ど変わっていないのは、私一人になってしまいました。
さて、改めて、木造の防音設計が得意な専門業者のチェックポイントを、いくつかご紹介したいと思います。

防音材及び建築材のコインシデンスの知識

大前提として、防音材と建築材の主なコインシデンスの特性を認識しているかどうかが重要です。
これを知らない専門業者・設計者は、基本的に素人として見なされます。この知識がないと、木造の防音設計が出来ないからです。

また、防音材の質量則だけで防音設計を行う業者も同様にリスクが大きく、木造の防音構造を無駄に分厚くして、費用対効果の低い設計をします。
これはコインシデンスや防音の相乗効果を理解していないからです。
過重量になると木造ピアノ室は、経年変化で歪んでいきますので、分厚い構造体を構築することには限界があります。
それに部屋が狭くなります。

遮音シートの防音効果

最も有名な防音製品が遮音シートですが、大半の製品が防音効果が小さく、施工要領も間違っていますので、計測できないほどプラス効果が小さい。これは、製品の面密度が小さく・制振性能が無いからです。
*音響学会の実験では、面密度が2kg/m2以下の製品では遮音性能が全くアップしないので、計測不能という結果でした。効果が数値に殆ど表れないので、効果を体感することは不可能です。

防音職人の相談事例や取引先の実験では、遮音材は約4kg/m2以上の面密度がないと、木造では防音効果が殆ど得られません。
ちなみに、面密度が2kg/m2以下の遮音シートを二重に重ねても、効果は小さく、面密度4kg/m2以上の防音材を単独で張り付けたほうが遮音効果は上です。※基本的に面密度の小さい製品は重ねても労力の無駄であり、かえって人件費(工費)が嵩むので得策ではないです。

木造建築工法の留意点(特にピアノ室)

このブログでも、何回も述べてきましたが、ピアノ室の場合はツーバイ工法は大きなマイナスです。防音効果も音響も、かなり不利になります。
しかも、将来改造することは、構造的な制約から殆ど無理です。
*基本的に間取り変更は出来ません。

どう考えても、木造ピアノ室なら「木造軸組在来工法」がベストです。ただし、軸組の構造的な補強をしないと、ピアノ防音室の場合は、音響や防音効果が不十分なものになります。

また、外壁・天井裏・床下の断熱材に、発泡材を入れると特定の周波数で共振するうえに、グラスウール・ロックウール等に比べて吸音性が小さいです。断熱材の選択を誤ると、かなり損します。

担当現場の分析を自分の言葉で説明できるか

施主など相談者が、打合せ(電話での問合せを含む)の際に質問したとき、自分の担当現場の防音設計に関する事項を即答できないのは、実績がない、外注業者に丸投げしていると見て間違いないです。

メールで問合せする場合は、今まで述べてきた内容について質問すると良いと思います。十分な回答が、理由もなく返ってこない場合は、専門業者ではないと思います。
ただし、防音設計の詳細に関する質問事項には答えられない場合が少なくないので、質問の仕方を工夫して下さい。

とにかく、担当者が自分の言葉で説明できない場合、ピアノ室の音響や防音効果の相談をしても無駄だと思います。


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